'10秋田この1年 取材ノートから
知名度利し議席奪還 民主政権に厳しい評価
昨年9月に政権交代を果たした民主党に対し、国民が初めて「審判」を下した夏の参院選。本県選挙区の有権者が選択したのは、政権の実績を訴えた民主党現職の鈴木陽悦氏ではなく、元プロ野球選手の高い知名度を武器とした自民党新人の石井浩郎氏だった。政権与党の現職が、10万票以上の大差で新人に敗れた。
米軍普天間飛行場移設をめぐる迷走、小沢一郎元代表らの政治とカネ問題…。昨夏の衆院選とは打って変わり、民主党には逆風の選挙だった。「失望させて申し訳ない。もう一度チャンスをください」。党県連幹部らは遊説先で「おわび」まで口にした。
鈴木氏に対しては「1期目の活動が見えない」との声が根強くあり、社民党県連との共闘が崩れたことも集票に影響。菅直人首相の唐突な「消費税増税発言」もマイナスに働いた。閣僚らが次々に応援に入ったが、有権者は民主党に厳しい目を向けた。
自民党は、石井氏に9年ぶりの参院選勝利を託した。知名度に加え「実直な人柄」をアピールし、無党派層を取り込む戦略が奏功。街頭では握手や記念撮影を求められ、人だかりができた。「(本県で)こんなに人気が高い自民党候補は初めて」との声が陣営内部から漏れるほどだった。
自民県議27人が来春の県議選を見据え、「民主党を勢いづければ自分の選挙にも影響する」と必死に集票したことも圧勝の一因だ。
共産党新人の藤田和久氏は菅首相が言及した消費税増税方針への反対を貫いたが、2大政党対決の中で埋没した。
7月の投開票から約5カ月。議席を得た石井氏は「日本をどこへ導くか分からない民主政権のブレーキ役を担えた」と振り返る。敗れた鈴木氏は「有権者に理解を得られなかった。政治活動は今後も続けたい」と話す。
比例代表には、本県から元知事でみんなの党の寺田典城、たちあがれ日本の村岡敏英、共産党の佐藤長右衛門の新人3氏が立候補。公示直前に出馬表明した寺田氏が、「第三極」として全国的に支持を集めた党の躍進に支えられ、国政進出を果たした。
改選前の本県関係国会議員の政党別勢力は「民主6、自民1」。これが石井、寺田両氏の当選により「民主5、自民2、みんな1」となった。
県内政界の焦点は、来春の県議選へと移っている。参院選で組織力の弱さを露呈した民主党県連。県議会の現有議席は1議席だけだが、組織基盤の強化を視野に入れ、全14選挙区に候補者を擁立する方針で選定を進めている。
一方、参院選圧勝の勢いをつなげたい自民党県連は現有27議席の維持、拡大を目指す。参院選の勝利は候補者の知名度の高さが大きかっただけに「自民党に支持が戻ったとは言い切れない」との不安もある。みんなの党として候補者擁立の方針を示している寺田元知事の動向も注視している。
- 第22回参院選
- 6月24日公示、7月11日投開票。本県選挙区の得票は石井氏32万8771票、鈴木氏22万6217票、藤田氏3万6320票で、投票率は65・05%。比例代表では寺田氏が全国で個人票4万5846票を集めた。全国的にも民主党が苦戦し、与党は参院で過半数割れとなり、衆参で多数派が異なる「ねじれ」の原因となった。
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