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社説:漫画規制都条例 依然残るあいまいさ

 漫画やアニメなどの性表現をめぐり、東京都が条例の改正案を提出している。6月の定例都議会で否決された改正案を修正して出し直した。

 修正前の改正案では、18歳未満として描かれた漫画やアニメなどに登場するキャラクターを「非実在青少年」の造語で定義した。そして、その非実在青少年による過度な性的行為を描いた漫画やアニメを子供に売ったり、見せたりしないよう関係業界に区分陳列するなどの自主規制を求めるという内容だった。

 この中には、児童ポルノについて、「何人もみだりに所持しない責務を有する」との規定もあった。

 しかし、6月の定例会では「表現の自由を侵すおそれがある」として否決された。そこで、都は「あいまいと批判された条文をより明確化した」として、改正案を修正のうえ再提出した。

 問題となる描写の「まん延抑止」を都民に努力義務として課した規定が削除され、児童ポルノを所持しない責務については、「根絶への自主的取り組みに努める」と変更した。また、インターネットで違法・有害な行為をした子供の保護者に対して「都は必要な調査ができる」との条文も改め、「情報提供や支援を行う」との表現にとどめた。

 規制の対象は「刑罰法規に触れる性交や婚姻を禁止される近親者間の性交を不当に賛美・誇張して描写したもの」となっており、都側は「違法な性行為を不当に賛美や誇張したアニメや漫画だけが対象。表現の自由は侵さない」と説明している。

 しかし、漫画家や作家などは、「行政による恣意(しい)的な解釈が可能なあいまいな規定は変わらない。逆に、非実在青少年の表現がなくなったことにより、18歳以上のキャラクターによる表現も対象となり、規制の範囲が拡大している」として、強く反対している。

 過度な性描写を含む漫画を子供に見せていいのかという問題はもちろんある。出版業界などが自主規制を行っているが、十分なのかという疑問もあるだろう。

 ただし、過度な性的表現は現在の条例でも規制対象になっており、新たな規定を設けなくても規制できるはずだ。わいせつ物については刑法による取り締まり規定もある。

 無論、過度な性描写が子供の目に触れないようにするため、自主規制の努力を怠るようなことがあってはならない。

 しかし、規制強化によって漫画家などの表現が全般的に抑制がちになり、日本の漫画やアニメの人気が落ちるようなことになっては困る。条例改正については、その点も考えて対応してもらいたい。

毎日新聞 2010年12月10日 東京朝刊

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