社説
2010年11月29日

児童ポルノ規制/子供保護の観点で厳しく

 規制が甘いとして、国際的な批判を浴びるわが国の児童ポルノに関し、異常な性癖を持つ大人から子供を守るための動きが地方自治体から起きている。

東京都が条例改正案提出

 東京都は30日開会の12月定例議会に、悪質な性描写を含む漫画・アニメの販売を規制する青少年健全育成条例改正案を提出する。大阪府は、単純所持を含めた児童ポルノの規制に乗り出した。

 現行の児童買春・ポルノ禁止法は自己目的の所持(単純所持)を容認し、漫画も規制対象にしないなど、子供の保護の観点からは極めて甘い内容となっている。自治体の条例は、罰則面などで実効性に疑問もあるが、児童ポルノに厳しく対処するというメッセージを社会に発信する効果が期待できる。

 東京都の現行条例が規制するのは、性器を露骨に描いた作品だけで、その他、子供を性の対象とする漫画は野放し状態だ。わいせつ漫画・アニメを規制するための条例改正案は今年春にも都議会に提出されたが、規制条文が曖昧で表現の自由を侵害するとして、民主党などが反対、否決された経緯がある。

 このため議会に再提出される修正案は、原案で概念が曖昧と批判された「非実在青少年」(18歳未満として描いた漫画など)の文言を削除した上で、規制対象を「刑罰法規に触れる性行または類似行為を不当に賛美または誇張するもの」に改めた。

 都の条例改正の動きに対しては、左翼的な団体が過剰に反応。「戦前の為政者も、まず漫画など子供文化を規制し、たちまち一般の言論・表現の自由を踏みにじっていった」(日本ペンクラブ)などと、筋違いの批判を行っている。子供を性的に描いた漫画の氾濫は、子供文化ではなく、異常な性癖を持つ大人とそれを放置する社会の問題である。

 また、都の改正案は、わいせつな性描写のある漫画を子供に販売するのを制限するもので、「言論・表現の自由」を持ち出すのは的外れである。都は自信を持って改正案の成立に努めてほしい。

 一方、大阪府は来春に青少年健全育成条例を改正する予定。「子供の性的虐待の記録」という概念を設け、該当する写真・映像の製造、販売、単純所持をしないよう、府民に求める。

 今年上半期に全国の警察が摘発した児童ポルノ事件は599件(前年同期比63・2%増)、被害児童は295人(99・3%増)で、いずれも統計を取り始めた2000年以降で最多だった。しかも、警察庁幹部は「摘発件数は氷山の一角にすぎない」と指摘する。漫画や単純所持を禁止しない法律の欠陥が小児性愛者を増やしたり、刺激したりして、さらに児童ポルノ事件を増加させる要因になっているのは間違いない。

国会で法改正すべきだ

 先進国の多くは児童ポルノの単純所持を禁じている。わいせつ漫画も児童ポルノとして規制する国も少なくない。単純所持や漫画の禁止は本来、国会が法改正して全国一律に行うべきものだ。地方の努力を傍観せず、国会がその責任を果たし、法の欠陥を修正するよう望みたい。


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