安心して出産できる環境づくりに取り組むため、県は今年度から14年度末までの周産期医療体制整備計画の最終案をまとめた。県内のNICU(新生児集中治療室)病床数は、今年度の約1・3倍に当たる222床に引き上げるため計49床増やす。計画は来年1月に正式に策定される予定で、周産期患者の受け入れ態勢の強化を目指す。【木村健二】
県内の出生状況を年齢別に分析すると、08年には35~49歳の出生割合が25・1%を占め、出生4人当たり1人が35歳以上で出産された。2500グラム未満で生まれた低出生体重児も増加傾向にあり、ハイリスク出産の増加が見込まれる。さらに妊産婦死亡率や周産期死亡率、新生児死亡率といった指数は全国の中位~下位レベルで、改善が求められる。
今年度の県内のNICU病床数は173床で、出生1万人当たりの病床数が22床と、国の整備方針が示した25~30床の目標を満たしていない。計画では、計49床の増設により、出生1万人当たりの病床数を08年の出生数ベースで28床に達するようにする。
1000グラム未満の超低出生体重児については、「総合周産期母子医療センター」に指定され、設備やスタッフが最も整う病院で受け入れるのが望ましいが、08年度は55・7%しか受け入れていなかった。計画は14年度に80%の受け入れを目標とし、将来的に100%の受け入れをうたう。
県内で救急患者の受け入れ先が見つからない場合、県外の医療機関へ搬送しており、09年度は44件だった。だが、県域を越えた患者の搬送と受け入れについて統一的なルールが確立されておらず、県は今年度から東京都、千葉、埼玉両県とルールづくりの検討を始めた。急性期を過ぎた患者は県内の地域病院へ転院を促し、患者と家族の負担を減らす。このほか、産科医らの手当支給に補助を拡充するなどして、周産期関係の医師、助産師、看護師の確保に努める。
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【妊産婦死亡率】
神奈川県 4.9 33位
全国平均 3.5
(出産10万人当たり)
【周産期死亡率】
神奈川県 4.5 32位
全国平均 4.3
(出生1000人当たり)
【新生児死亡率】
神奈川県 1.5 36位
全国平均 1.2
(出生1000人当たり)
※指数は08年のもので、低数値ほど上位となる
毎日新聞 2010年12月15日 地方版
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