【社説】韓国軍は適任者を抜てきせよ
不動産投資にまつわる疑惑が取り沙汰されていた黄義敦(ファン・ウィドン)陸軍参謀総長(57)が、「国防長官を支えて軍改革の先頭に立たなければならない重要な時期に、わたしが陸軍を指揮するのは適切ではない」と言い残し、14日付で辞任した。この結果、将校の定期人事の幅も大きくならざるを得なくなった。
政府は今回の黄氏辞任を重く受け止め、次の将校人事を、軍の内部刷新に向けたきっかけとしなければならない。この問題で金寛鎮(キム・グァンジン)国防長官は、「“専門性”“野戦中心”“外部からの口利きに耳を傾けない”という、人事における三つの原則を定めた」と明言した。今回の人事では、これらの原則が本当に守られるのか、検証を受けることになるだろう。
「軍が軍らしくない」という批判を受ける根本的な理由の一つは、最終的には人事だ。北朝鮮と対峙(たいじ)する状況で、部下をしっかりと統率し、戦って勝つことのできる軍人、戦術や戦略に優れた軍人、そして兵器や情報に精通した軍人。このような軍人がその優れた能力を発揮できる地位に就かなければならないのだが、現実はそうなっていない。人事の際、出身地はどこか、陸海空のどこの士官学校を出たか、あるいは予備役将校訓練課程(ROTC)出身かどうかなどを細かくチェックすることが、すでに日常化しているのだ。そのため、「重要な地位は特定の学校や特定地域の出身者が独占している」という批判は、今もなくなっていない。政権が交替すれば、前政権で重要な地位に就いていた人物のリストを作成し、能力とは関係なく、要職から排除する慣例も定着している。
韓半島(朝鮮半島)は海に囲まれていて険しい山岳地帯が多い。このような地形で戦闘に勝つには、世界のどこの国よりも陸海空軍の緊密な合同作戦が非常に重要になる。ところが国防部や合同参謀本部はどういうわけか、陸軍出身者ばかりだ。これが海軍や空軍に疎外感を抱かせ、3軍の統合性に亀裂をもたらしているのだ。陸軍に比べ差別されているという意識故に、海軍や空軍では閉鎖性が強まり、内部では幹部の出身地や地位によって派閥が形成され、本来王族の血統や地位を意味する「真骨」や「聖骨」といった言葉まで公然と使われている。これは決してあってはならないことだ。
軍の人事権は軍が持っているため、これまで大統領は軍に対し、公正な人事を何度も求めてきた。ところが実際は、大統領府の人事担当秘書官室が介入している。例えば10人の人事を行う場合、軍に20人の候補をリストアップするよう求め、それを基に人事案が取りまとめられるというケースも少なくなかった。軍の内情について疎い人物が人事に介入すれば、士気は一気に低下してしまうはずだ。
今求められることは、軍の人事権を軍に返し、軍人らしい軍人を適材適所の原則に従って公正に配置することだ。人事権を与えた上で、その判断の正否に関しては、後から厳しく責任を追及すればよい。また、優秀な人材を呼び込む方法を見出すことも、今の軍に課せられた重要な課題だ。今回の将校人事を軍改革の第一歩とすべき理由も、結局はここにある。