もしもNATOがアフガニスタンで敗北したらどうなるだろう?
Eric S. Margolis
2010年11月17日
www.ericmargolis.com
61年の歴史をもつ協定、世界で最も強力な軍事同盟NATOが、戦った唯一の戦争に敗北しかねないというのは驚くべきことに思える。兵士、重爆撃機、戦車、攻撃型ヘリコプター、多数の傭兵や、電子機器が、軽武装のアフガニスタン農民や山地部族民の連中に打ち負かされつつあるのだ。
今週末のリスボンにおいて、NATOの加盟国28ヶ国は、アメリカ合州国、カナダとヨーロッパにおける世論が、この戦争に反対し続ける中、アフガニスタン戦争を巡り、深刻化する不一致に直面する。
バラク・オバマ大統領は彼がアメリカ外交政策の全責任者ではないことを、またもや痛々しく示してしまった。来年7月一部の米兵をアフガニスタンから撤退させ始めるという彼の約束は鉄面皮にも、嘲笑的な程に、アメリカの将軍達によって否定され、議会によみがえった共和党によって強烈に反対された。まず誰も大統領の撤退期日を信じていない。
オバマはベンヤミン・ネタニヤフ首相にひれ伏したばかりだ。アメリカの先進的なF-35ステルス戦闘機、国連投票の約束、イスラエルが使用するためのアメリカの兵器備蓄額を10億ドルに増やすといった、ワシントンからの何十億ドルものワイロと引き換えに、短期で形ばかりの入植地建設凍結をするよう、彼はイスラエルの指導者に懇願したのだ。アメリカ大統領がここまでひどくこびへつらうのは稀なことだ。
イスラエルは、オバマの賄賂を受け取る可能性が高いが、それも更に多くのワイロと、イスラエルに干渉するなという警告として、一体誰が本当にアメリカの中東政策を運営しているのかを示すべく、オバマが更にこびへつらうせずには済むまい。イスラエルによるヨルダン川西岸の植民地化に異議を唱えた最後のアメリカ大統領、ジョージ・H・W・ブッシュは、大統領を一期務めた後、1992年に失脚させられた。
オバマはアフガニスタン戦争から抜け出したがっているように見える。月に75億ドルかかる戦争に更に30,000人の兵士を派兵するという、彼の最後の賭けは、今のところ待ち望まれる決定的勝利をもたらし損ねている。だが、ペンタゴン、軍需業界と共和党を含む強力な戦争支持派集団が、戦争を段階的に縮小しようという、オバマの弱体化した企みを阻止している。
アフガニスタン戦争を支持した、アメリカ、カナダとヨーロッパの政治家達は、この戦争が、人命と資金の膨大な浪費であることを認めるのを恐れている。彼らの政治的経歴は、不安定な状態にある。
ワシントンの最も従順な同盟国という、イギリスのトニー・ブレアの役割を継ごうとしているカナダ首相は、900人のカナダ兵士は、彼が決めた撤退期限の後も、"訓練"という名目で、アフガニスタンに駐留し続けると発表した。
これはもちろん、アフガニスタン傀儡政権を権力につけておくため、永久駐屯地として居座り続けることの新たな婉曲表現だ。"訓練"というのは、イラク駐留アメリカ軍と同様、実際には、いにしえのイギリス支配用の現地人兵士を、白人将校指揮下に置くことを意味している。
アフガニスタン戦争の継続に反対したり、この戦争を正当化する多くの嘘を暴露したりした、カナダ人ジャーナリストは、皮肉にも、アフガニスタンでは、"民主主義"のために戦っているのだと主張するハーパー政府の圧力のもと、所属する新聞社から追放された。
アメリカが、更なる戦争と借金に突き進む中、ヨーロッパの同盟諸国は、アル・カイダ基地を壊滅するための限定的"政治的行動"であったはずのこの戦争にうんざりしている。
それどころか、ヨーロッパは、アフガニスタンのパシュトゥーン族に対する全面戦争に入り、19世紀の植民地"宣撫"という不吉な記憶がよみがえった
フランスの新国防相アラン・ジュペは、あからさまに、アフガニスタン戦争はNATOにとっての"罠"だと発言し、出口戦略を要求している。彼は実に正しい。
対照的に、イギリス軍参謀総長サー・デヴィッド・リチャーズ大将は、"NATOは、今や30から40年の役割を計画する必要がある。"と警告した 要するに永久占領だ。少なくとも帝国主義陣営にとっては、それが結論だろう。中央アジアの資源が本当の理由だ。
アメリカが就かせたアフガニスタン大統領ハミド・カルザイは、重大な民間人死傷者を生み出し続けている軍事作戦と夜襲を縮小するよう、アメリカに要求している。ワシントンは、カルザイは精神的に不安定なのだと反撃している。彼は、ワシントンがふさわしいパシュトゥーン族の後釜を見つけ次第、打倒されるべく運命づけられている。
アフガニスタン侵略に対するアメリカの根拠は、アル・カイダを壊滅させることだった。しかし、CIA長官レオン・パネッタは、アフガニスタンに残っているアル・カイダ隊員は、せいぜい50人程度にすぎないことを最近認めている。残りのわずか数百人は何年も前にパキスタンに逃亡している。
すると、110,000人の米軍兵士と40,000人のNATO兵士は、アフガニスタンで一体何をしているのだろう? 国造りでないことは確かだ。大半の報道が、アメリカ侵略以前より、アフガニスタンの悲惨な貧困は悪化していることを示している。
リスボンにおいて、陳腐な言葉やら模造の楽観主義が満ちる中、巨大な米軍ブルドーザー、破壊チームや砲兵隊が、パシュトゥーン族の本拠地カンダハル周辺にあるアフガニスタン人住宅地の広大な一帯を跡形もなくすのに多忙を極めている。2006年、手に負えないイラクの都市ファルージャを壊滅させるため、米海兵隊が同様な冷酷な作戦を遂行した。
アメリカは、アフガニスタンとイラクで、占領したヨルダン川西岸に対してイスラエルが用いているのと同じ、懲罰戦術を用いている。懲罰の為の標的暗殺、暗殺部隊と、射撃できる範囲を拡げるための建物や地域全体の破壊だ。実際、アメリカ軍は、そうした作戦において、イスラエル人顧問に指導されていることが多い。
カンダハルの大部分の破壊は、アメリカの挫折感と戦争に敗北しつつあるという意識が高まっている印だ。アメリカの現地総督デービッド・ペトレイアス大将が語った狙いである現地人の心を、これによって掌握することなど、まずできまい。
彼以外のペンタゴン連中と同様、ペトレイアスは、強力なアメリカ軍は、アフガニスタンの部族民に敗北してはならないと固く決めている。敗北の屈辱は到底耐えがたいのだ。アフガニスタンにおける敗北は、世界の軍事支出の50%を消費する巨大怪獣リバイアサン、膨張したアメリカ軍の大幅削減という要求を招きかねない。
ワシントンのいわゆる国家安全保障権力集団(イギリスでは、彼らは"帝国主義者"と呼ばれている)アフガニスタンで失敗すれば、NATO同盟そのものを弱体化させかねないと恐れているのだ。
断続的で、骨を折りながらとは言え、ヨーロッパは世界の列強としてゆっくりと再浮上しつつある。北アジアで、同じ役割を果たしてきた日米安全保障条約と同様、NATOは、1940年代末以来、アメリカが西欧を地政学的に支配する為の主要な手段であり続けてきた。
アメリカと、気乗りのしない同盟諸国とが、アフガニスタン戦争で敗北すれば、同盟の意義に対する疑問を呼び、ヨーロッパが、アメリカの支配から独立した統合軍を構築するのを加速する可能性が高い。そうなれば西欧に対するアメリカ支配が終わってしまおう。
それが、アフガニスタン問題が、ワシントンの右翼をひどく狼狽させる理由だ。1989年のアフガニスタンにおけるソ連軍の敗北でソ連帝国の崩壊が始まった。アメリカ統治を、同じ運命が待ち受けているのだろうか?
記事原文のurl:www.ericmargolis.com/political_commentaries/what-if-nato-is-defeated-in-afghanistan.aspx
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とうとう、この国の軍隊、医官、看護官をISAFに派遣する。現地傀儡軍・医療関連隊員育成のための教育訓練が目的だという。既に武官は駐在しているから「参戦」強化だろう。
マスコミやら野党側という触れこみの共同体・自民党、もっぱら法相の辞任やら、暴力装置発言ばかり書く。日本の暴力装置「参戦」強化については全く語らない。
国会論戦での元アナウンサー議員の辞任問題追求も、ひたすらむなしい茶番にしか思えない。アフガン参戦強化問題を追求してくれれば、あるいは一票、投じないでもないが。
「アフガン 自衛隊派遣」で調べたところ、2010年11月18日(木)しんぶん赤旗記事があった。一部を引用させて頂こう。
「どんな法的根拠で派遣するのか」と質問しました。
ISAFがタリバン掃討を行っている軍事部隊であり、ISAFの文書に、派遣された医官の行う活動が「戦場での初期治療」と明記されていることをあげ、「戦闘行為と密接に結びついたものだ。憲法に違反する」と批判しました。
多くのNATO加盟国がうんざりする中、北アジアで、同じ役割を果たしてきた日米安全保障条約に束縛され、一周遅れで参戦の度合いを高める、不思議に忠実な属国日本。かくして多くのブロガーの皆様が期待される豪腕政治家氏のISAF派兵の意思は着実に貫徹されつつある。
中村哲医師たちのような完全丸腰の民間支援以外すべきでないだろうに。
貧しい家計の一助、スーパー・チラシが読みたいばかりに講読している新聞、今日の夕刊題字下に、こういう文章があって、びっくり。
しょせん我々はこの程度の大臣しか持てない国民なのか。こちらが自虐の淵に落ちそうだ。
「大本営広報部のあなた方にだけには、そんなことを言われたくない」と思うものだ。
しょせん我々はこの程度のマスコミしか持てない国民だ。こちらはとうに永遠の自虐の淵に落ちている。
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