NATOの"新"戦略概念:旧ユーゴスラビアは舞台稽古の場だった
Zivadin Jovanovic
Global Research, November 17, 2010
Belgrade Forum for a World of Equals
2010-11-16
NATOリスボン・サミットを前に、11年前の(旧ユーゴスラビア社会主義連邦共和国の)セルビアが、リスボン会議において公式に承認される予定の、いわゆるNATO戦略・新概念の、実験台で、最初の犠牲者だったことを想起する必要がある。
NATO加盟諸国の指導者達は、何よりまず、自らの領土を超えて、事実上、世界中で、軍事行動を企てることを"自ら、再認する"ことが予想される。
特定の地域、特定の国家において、経済、エネルギー、貿易、航路等、NATOの権益が脅かされているのだと、彼等が主張さえすれば良い。NATOは国連安全保障理事会の承認を求めることはしない。NATOは勝手に行動するのだ。NATOは、自ら国連、全欧安保協力機構(OSCE)や他の全ての国際機関よりも上位のものとして振る舞うのだ。負担と課題を欧州連合とで分け合うことが新たなNATOの戦略概念の柱石だ。
この概念は、1999年に(旧ユーゴスラビア社会主義連邦共和国の)セルビアで公然とテストされた。“NATOは、遠征作戦を行うという要求に対し、今や十年以上の経験を有している”と、最近リスボン・サミットで採用される予定の21世紀NATO戦略の背景を説明して、ミシェル・フルールノアは語った。“十年を超える経験”の中には、1995年のボスニアやヘルツェゴビナにおける内戦へのNATO介入、2001年のアフガニスタン占領や、2003年のイラク占領も含まれよう。
こうした米-NATO“遠征作戦”の結果は一体何だっただろう? 何という人命損失、不安定化、治安悪化、財政的、経済的後退、そして永続する貧困、犯罪増加という点で、何という損失だろう?
幸にも?米-NATO“遠征作戦”の犠牲となったバルカン半島諸国、アフガニスタン、イラクや他の地域は、今日、かつてより安定化し、経済的に進んだだろうか?
他の地域や他の例はさておき、セルビアに対する72日間の継続的軍事侵略の間、NATOは、何千人もの死者をもたらし、約10.000人が負傷したが、その三分の二は一般市民だったことを思い起こそう。経済は完全に破壊され、劣化ウラン兵器の使用によって、環境は汚染された。数十万人の人々が退去させられた。今日ですら、ベオグラードの中心部の建物には、廃墟のままのものがあり、コソボやメトヒヤから避難した200,000人以上のセルビア人は家に戻れずにいる。
NATO諸国は、セルビアからの、コソボとメトヒヤの一方的で違法な離脱(2008年)を支持した。ある意味、彼等は、1999年の攻撃後、自らが作り出した違法な国家構造の承認へと進んだのだ。
1990年代、多くのNATO諸国はテロリストのKLAを資金援助し、訓練し、武器を与えていた。その見返りに、NATOが侵略した際、KLAはその地上部隊となった。現在NATOは元KLAのテロリスト分子で構成される違法なコソボとメトヒヤの違法な軍隊に武器を与え、訓練し、資金を与えている。アメリカ、イギリス、ドイツとトルコがこのプロセスを率いている。
コソボとメトヒヤが、多くの国々によって、"NATOスタン"、つまりNATOの属国、あるいは麻薬国家と見なされているのも不思議ではない。
この関連で、コソボの“ボンドスティール”米軍基地は、ヨーロッパ最大の米軍基地。約9.000人のNATO兵士が、現在も依然としてコソボを占領しており、この地方は、様々な国際的な犯罪組織と組んで、アフガニスタンから中、北欧に至る、ヘロイン輸送ルートを守る麻薬マフィアにとっての避難場所であり続けている。
NATO侵略や、コソボとメトヒヤの一方的な分離の影響として、この地域は不安定化し、社会・経済的緊張が高まっている。
2010年10月末、セルビア、マケドニア旧ユーゴスラビア共和国(マケドニア)、ギリシャと、モンテネグロのアルバニア人の“代表”が、“自然なアルバニア”を樹立するという協同プロジェクトを正式に立ち上げるべく、ティラナに集まった。何らかの理由で、彼等は"大アルバニア”という言い方はしなかった。すべてのアルバニア人を、一つの国に!というのが標語だった。この集会の前、首相本人を含むアルバニアのお偉方達が、すべてのアルバニア人の統一を訴えたことを想起すべきだ。元欧州安全保障協力機構のコソボ検証団(KVM)のトップで、アメリカ大使のウイリアム・ウォーカーが、2010年11月始めに、コソボのアルバニア人には、アルバニアと合体する権利があるという声明を出した。結局のところ、バルカン半島内の国境を引き直そうという、あからさまな主張が存在しているのだ。
1999年のNATOによるセルビア攻撃や、NATOの戦略全般が、分離主義の台頭、軍事介入の正当化、国連の役割の弱体化、国際法の無視をもたらした。
NATOは、バルカン半島諸国におけるいかなる問題も解決してはおらず、解決できたはずもない。そうではなく、NATOは、バルカン半島諸国を、延々と不安定さが続く地域にしてしまった。アフガニスタン、パキスタン、イラクについても同じことが言える。一体これが、21世紀に、ヨーロッパや世界が、NATOに期待する役割なのだろうか?
Zivadin Jovanovicによる、Global Research記事
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記事原文のurl:www.globalresearch.ca/index.php?context=va&aid=21963
ノーベル賞授賞式に、どの国が欠席するかということが話題になっている。こうした犯罪的な侵略戦争を世界的に推進しているヨーロッパの国がくださる「平和賞」、本当に素晴らしいものなどとは、決して思わない。植民地・属国、あるいは宗主国の、彼等の侵略戦争にとっては好都合な主要人物、という「お墨付き」だと理解している。
日本の勲章とて同じこと。まあ「絶対に何も貰えない貧乏人のひがみ」と言えば、その通り。
ビデオ流出を受け、国会討論で、「日比谷焼き討ち」が話題にされた。この西欧、アメリカの侵略同盟であるNATOの、準?メンバーとして、暴力実力装置が、実戦参加するのも遠いことではあるまい。
そのうち、どこかで戦争をした功績で、外相がノーベル平和賞をもらっても驚かない。
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