柳田稔法相の「国会軽視」発言に対し、自民党など野党は17日、「閣僚の資格にかかわる問題」と一斉に批判を強めた。10年度補正予算案の参院審議への影響を懸念した菅直人首相は同日、柳田氏に厳重注意し火消しに努めたが、自民党は中国漁船衝突のビデオ映像流出事件とは「次元が違う」(幹部)として、柳田氏の問責決議案可決を最優先させる構えだ。失点続きの政権運営に新たな火種が加わり、菅政権は終盤国会で防戦一方になっている。【中田卓二、横田愛】
「問責決議案を出す方向になるだろう」。自民党の脇雅史参院国対委員長は17日、民主党の羽田雄一郎参院国対委員長と会談し、柳田氏も問責の対象にすると通告した。
自民党は柳田氏を辞任に追い込もうと攻勢に出ている。石破茂政調会長は17日の記者会見で「一日も早く職を辞してもらうのが国家のためだ」と柳田氏に自発的な辞任を求めた。
柳田氏の失言は閣僚の資質にかかわる問題だけに、野党は簡単に引き下がれない。みんなの党の渡辺喜美代表は記者団に「問責決議案も立派な一つの方法だ」と明言。自民党が問責決議案を提出すれば他の野党も同調し、参院で可決される見通しだ。
首相は17日夜、首相官邸で記者団に「(柳田氏は)これから(国会で)誠意をもって真摯(しんし)に答える」と語った。だが、参院民主党では、映像流出事件に続く失点に不満が噴出した。羽田氏は会見で「内閣全体としてしっかり気を引き締めてやってほしい」と苦言を呈した。
菅内閣はほころびが次々表面化する。柳田氏が追及されたこの日の参院予算委員会で、北沢俊美防衛相も失態を演じた。
自民党の衛藤晟一氏は3日の航空自衛隊入間基地(埼玉県)の航空祭で自衛隊協力団体代表が民主党政権を批判したのをきっかけに、防衛省が事務次官名で自衛隊関連施設の行事に政治的な発言をする恐れがある人を参加させないよう通達を出した問題を取り上げ、「言論統制だ」と批判した。
これに対し、北沢氏は「もし自民党内閣だったら同じことをなさるだろう」と反論。委員会は紛糾し、結局「議論するうえで大きく混乱させるとしたら撤回したい」と陳謝するはめになった。
ある野党党首は「菅政権は完全にたがが緩んでいる。(11年度予算案の審議が大詰めを迎える)来年3月まで持つのか」と冷ややかに語った。
毎日新聞 2010年11月18日 2時30分