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【産経抄】11月19日
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「政治家が成功するかどうかは…『資金力』ではなくて『言語力』にかかっているのかもしれない」。言語学者の東照二さんは、『歴代首相の言語力を診断する』(研究社)で説いている。とすれば、柳田稔法相は成功どころか、政治家失格だ。
▼「法相はいいですよ。(答弁は)2つだけ覚えておけばいい。『個別事案についてはお答えを差し控えます』。これでだいぶ切り抜けてきた。あとは『法と証拠に基づいて適切にやっている』」。テレビカメラの前で、自らの国会軽視を堂々と宣言した。
▼「誤解を生む発言」とかばった仙谷由人官房長官からもきのう、驚くべき発言が飛び出した。自衛隊は「暴力装置」だという。言語力はともかく「言い逃れ力」には長(た)けた人物だけに、もっと根が深いものを感じる。
▼それは、きのうの小紙が伝えた、航空自衛隊入間基地で今年7月に起きた、トラブルにもつながる。「おれをだれだと思っているのか」「二度と来るな」「もう一度、言ってみろ」。民主党の松崎哲久議員と隊員の間でかわされた、寒々としたやりとりだ。
▼「改めて法律を調べたら自衛隊に対する最高指揮監督権を有していた」。菅直人首相による、自衛隊の統合・陸海空4幕僚長との初会合での発言に、周囲は唖然(あぜん)としたものだ。民主党政権首脳の間に共通する、国防意識の希薄さと自衛隊への蔑視(べっし)が、表に現れたとみるべきではないか。
▼東さんは著書の冒頭で、ヒトラーの言葉を引く。「政治の世界で歴史的ななだれを起こしたのは、書かれたことばの力ではない。それは語られることばの魔力だけだ」。魔力がありすぎても困るが、政治家の荒(すさ)んだ言葉もまた、国を危うくする。