政権担う真剣度が疑われる
法務行政上の政治判断の責任を取ったわけではない。自らの口から出た不見識な発言の責任を取っただけだ。あまりにもお粗末と言うしかない。
国会答弁を軽視するような発言をした柳田稔法相が辞任した。2010年度補正予算案の採決を前に、野党が多数を占める参院で問責決議案が可決される情勢になっていた。混乱回避のための更迭という事態だ。菅改造内閣では初めての閣僚辞任であり、内閣支持率が急落している政権には大きな打撃となった。
■課題山積の法務行政■
菅直人首相が臨時国会の「最大の課題」と位置付けた補正予算案。その国会審議の最も重要な時期に起きた柳田法相の「失言」は、政権を担う閣僚として緊張感を欠いていたと言うしかない。
ただ柳田氏だけでなく、ほかの閣僚も発言を陳謝、撤回する場面が相次いでいる。政権交代から約1年2カ月。参院選敗北で政権の基盤は盤石ではなくなった。緊張感を持って政権運営に取り組む真(しん)摯(し)な姿勢が問われている。
「熟議の国会にしていくよう努めます」。10月1日、臨時国会冒頭での所信表明演説で菅首相はこう強調した。衆参ねじれ国会で、法案を成立させる道は険しくなった。首相は法案ごとに野党の協力を求める「部分連合」を模索する姿勢を示していた。
その中での法相発言は見識を疑うものだった。
「熟議の国会」にこんな認識で臨んでいたとは、あきれるばかりだ。大阪地検特捜部の証拠改ざん隠ぺい事件など課題が山積している法務行政である。与野党が真剣な議論を重ね、検察捜査の在り方を改善していく。それが国会の役割だろう。
■熟議の心構え程遠く■
柳田氏の発言はそうした熟議の心構えとは程遠いものだった。
柳田氏は「20年間、法務関係は一回も触れたことがない」とも発言している。「素人」であることを告白したようなものだ。
ただ不用意な発言は柳田氏にとどまらない。仙谷由人官房長官は自衛隊を「暴力装置」と発言し、撤回した。国会答弁での相次ぐ閣僚の「謝罪」や「発言撤回」に政権担当の真剣度を疑う。
自民党は、沖縄・尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件の対応と海上保安庁保安官による映像流出事件の対応をめぐり、仙谷氏と馬淵澄夫国土交通相の問責決議案を提出する構えを示している。
参院での問責決議には法的拘束力がないとはいえ、可決されれば法案審議はストップし、政権運営に与える影響は大きい。内閣の要である仙谷官房長官の問責決議案が可決される事態になれば、菅政権には深刻なダメージになる。
ただし、予算案の中身の議論を置き去りにし、責任追及の駆け引きに終始する国会が国民の負託に応えられているのか。その点も与野党には自問してもらいたい。
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