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柳田法相辞任 政権のねじを巻き直せ '10/11/23

 あきれた発言のつけは大きかった。柳田稔法相がきのう、国会軽視につながる発言をした責任を取って辞任した。就任から2カ月、事実上の更迭である。

 今月半ば、広島市内での法相就任祝賀会で国会答弁に触れ「個別の事案は答えを差し控える」「法と証拠に基づいて適切にやっている」という二つの言葉を覚えておけばいいと述べた。

 中国漁船衝突事件や検察改革などを抱えながら、国会論議をちゃかすばかりか、説明責任を放棄した発言だ。軽率のそしりを免れず辞任は当然といえよう。広島県選出の参院議員だけに情けない。

 柳田氏は問責決議案が提出される前に菅直人首相から「補正予算案を通さないといけない。理解してほしい」と言われ、一転して辞める決断をしたという。

 首相が自発的辞任という形で幕引きを図ったのは、自らの任命責任から逃れるためだと言われても仕方あるまい。はっきり更迭した方がどれほど国民には分かりやすいことだろう。

 柳田氏のほかにも閣僚の失言が相次いでいる。仙谷由人官房長官は先週、自衛隊を「暴力装置」と言って撤回。蓮舫行政刷新担当相は国会内でのファッション誌の撮影問題で発言を修正し謝罪した。

 追加経済対策を盛り込んだ補正予算案を審議中の重要な時期にもかかわらず、野党につけいる口実を与える政権の「たが」の緩みは目を覆うばかりだ。

 政治主導とは言いながら閣僚の軽はずみな言動で、閣内のきしみも目立っている。それでなくても首相の指導力が見えず、政権の方向性が定まらない。

 相次ぐ失言の火の粉を振り払うことだけで手いっぱい、というところではないか。ますます首相の求心力が失われていく悪循環に陥っている。

 自民党が描いてきたのは柳田氏に続き、漁船衝突映像流出事件などの対応をめぐって仙谷氏や馬淵澄夫国土交通相も問責する―という戦略。首相が柳田氏に辞任を促した背景には、問責決議が可決されれば野党を勢いづかせ、仙谷氏らにも累が及ぶことへの懸念があったことは間違いあるまい。

 経済対策や社会保障改革、外交など菅政権が取り組むべき課題は山積している。首相は「熟議の国会にしたい」と誓ったはずだ。「辞める」「辞めない」の次元の低い国会論議に国民はあきれ果てている。一刻も早く本来の論戦に戻してもらいたい。

 衆院では与党、参院では野党がそれぞれ多数を占める「ねじれ」国会。野党側も国民生活に責任を負っていることを忘れてはなるまい。暮らしへの影響が大きい補正予算案の中身をきちんと審議し、早期成立を図る必要がある。

 報道各社の世論調査では、9月の改造時に跳ね上がった菅内閣の支持率は今や20%台にまで落ち込んでいる。起死回生の策があるとすれば、与野党の熟議を軌道に乗せるしかなかろう。柳田氏の辞任を機にねじを巻き直すべきだ。




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