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南北砲撃戦:菅政権、危機管理は 「備え万全」を強調 情報収集、分析追われ

 北朝鮮による砲撃で、一衣帯水の隣国・韓国に多数の死傷者が出たことは、菅政権が「危機管理能力を問われる」(政府関係者)事態となった。米軍普天間飛行場移設問題や中国漁船衝突事件、ロシア大統領による北方領土訪問に続き、またも外交上の課題を背負った。自国の安全保障を脅かされかねない問題だけに、関係閣僚は情報収集や分析に追われた。【犬飼直幸、坂口裕彦、樋岡徹也】

 政府は23日午後3時20分、首相官邸の危機管理センターに情報連絡室を設置した。防衛省は海上自衛隊のイージス艦やP3C哨戒機による警戒監視活動の強化を確認した。菅直人首相は、午後8時55分から北沢俊美防衛相らを集めて開いた関係閣僚会議で(1)北朝鮮の動向に関する情報収集(2)米韓両国との緊密な連携(3)国民の安全確保--を指示した。豪州を訪問していた前原誠司外相は日豪外相会談など一連の日程を終え、帰路についた。

 これに先立ち、午後7時すぎには権哲賢(クォンチョルヒョン)駐日韓国大使が官邸を訪れ、仙谷由人官房長官と情報交換を進めた。仙谷氏が「韓国政府の立場を支持する。北朝鮮の挑発行為を強く非難する」と伝えると、大使は感謝の意を示した。

 菅首相は公邸で秘書官を通じて砲撃戦発生の連絡を受けたという。その後、官邸に仙谷氏や伊藤哲朗危機管理監らを呼び、不測の事態に備えるよう指示した。首相は一報を受けた後、公邸でテレビをみながら「大変な状況だ」と語ったという。

 民主党政権は、昨年9月の政権交代以後、普天間問題で米国との信頼関係が揺らぎ、中国漁船の衝突事件では対中外交で「弱腰」との批判を受けた。メドベージェフ露大統領の北方領土訪問もあり、日本外交は守勢に回ってきた経緯がある。再度の外交面での試練に、首相は記者団に「どういうことが起きても対応できるよう備える。国民に備えは万全と言える態勢をつくりたい」と強調し、政府を信頼するよう訴えた。

 仙谷氏は記者会見で、「今回の事件は偶発的なものではないと見ている」と述べる一方、駐日韓国大使からの情報として「現時点では(情勢が)発展拡大するニュアンスの話はなかった」と明かし、「国民生活に直ちに影響を及ぼす事態ではない」と語った。安住淳副防衛相も同様の認識を示した。

 政府関係者は「金正日総書記の三男正恩氏が事実上後継者として公表され、強硬姿勢を示すことを外交カードの一つにするとともに、国内への引き締めを図ったのでは」とみる。北朝鮮による新設のウラン濃縮施設の公開を「攻撃の兆候」だったとも指摘した。自衛隊幹部も「砲撃対象が島であること、(砲撃が)やんでいるところをみると、本気で北朝鮮が侵攻しようと思っているとは考えにくい」と言う。

 しかし、政府筋は「いつもの挑発行為だが、今回は度が過ぎている」。防衛省内には、北朝鮮が再び同様の動きに出るおそれがあるとの見方もあり、幹部は「米軍などから情報を取りながら、弾道ミサイルなど北朝鮮の動向を注視する必要がある」と語った。

 外務省幹部によると、今後、事態が悪化した場合、在韓米軍が対応▽さらに惨状が拡大すれば在日米軍の対応--などが考えられるという。同幹部は「韓国はまず国際世論を味方につける方法を取るだろう。国連安全保障理事会に提起することも考えられる」と見通す。

毎日新聞 2010年11月24日 東京朝刊

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