社説
2010年11月24日

北の挑発行為/日米韓の連携強化で臨め

 北朝鮮が韓国西方沖の延坪島に数十発の砲弾を撃ち込んだ。南北間で砲撃戦に発展し、韓国軍兵士2人が死亡したほか民間人を含む20人が重軽傷を負った。これに先立ち、北朝鮮は米科学者にウラン濃縮施設を見せるなど東アジア地域の危機感を高めている。日本は米韓両国との連携強化で、北朝鮮の挑発行為に臨まなければならない。

米国との直接交渉が狙い

 砲撃は韓国動乱の休戦協定、ウラン濃縮施設建設は国連安保理決議や6カ国共同声明への明白な違反だ。国際合意を踏みにじり、周辺諸国を危険にさらす北朝鮮の蛮行は許し難い。

 北朝鮮の一連の行動は米国との直接交渉を実現し、制裁解除や支援を引き出すのが狙いと見られる。北朝鮮では今年も天候不順による不作で深刻な食料不足に直面している。しかし、北朝鮮が「瀬戸際外交」で国際社会を何度も欺いてきたことを忘れてはならない。

 今回の砲撃現場付近の海域で北朝鮮は3月、韓国哨戒艦撃沈事件を引き起こし兵士46人の生命を奪った。しかし、この事件を受けて採択された国連安保理議長声明は、中露両国の抵抗で北朝鮮の名指し非難を避けた。両国の甘い姿勢が北朝鮮を増長させていることは間違いない。国連安保理の対北制裁も実施状況は不十分だと言われる。国連は実態を調査し、制裁に実効性を持たせなければならない。

 民主党政権は中露の尖閣諸島や北方領土に対する不当な領有権主張と強硬姿勢に加え、北朝鮮の核問題、砲撃行為などでさらに難題を抱えた形だ。北朝鮮による日本人拉致問題に対してもほとんど無策の状態が続いている。

 政府は朝鮮学校に高校授業料無償化を適用する方針だ。しかし、これは北朝鮮に姿勢軟化の誤ったメッセージを送る懸念がある。拉致問題担当相を兼務していた柳田稔法相が辞任し、自衛隊を「暴力装置」と呼んだ仙谷由人官房長官の兼務になったことも、足元を見透かされる要因になりかねない。

 日本は北朝鮮に対して毅然とした姿勢を示すべきだ。米国が北朝鮮との直接対話に応じる可能性は今のところ低いが、日米韓3国は緊密な連携を図らなければならない。今回の挑発行為は金正日総書記の3男、金正恩氏の後継体制を強化する意味合いもあろう。今後、北朝鮮が3度目の核実験を行う可能性も否定できない。日米韓は情報交換を密にして監視を強める必要がある。

 日本は米韓両国との連携強化のため、外交の立て直しが求められる。日米関係では米軍普天間飛行場の移設問題が解決されない限り、同盟深化は望むべくもない。菅直人首相は沖縄県名護市辺野古に移設する日米合意履行に指導力を発揮すべきだ。来月開催予定の日韓首脳会談でも関係強化に向けた取り組みを重ねなければならない。

東アジアの平和に尽力を

 中露両国の高圧的な姿勢に加え、今回の北朝鮮の挑発行為で日本を取り巻く安全保障環境は一層緊張を高めている。菅首相は日米韓連携を基軸に、東アジアの平和と安定のために力を尽くすべきだ。


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