社説
2010年11月28日

仙谷・馬淵氏問責/首相の適格性にも疑問符

 菅直人首相は問責決議を可決された閣僚を続投させて今後の国会運営を乗り切れる見通しがあるのだろうか。日本を取り巻く厳しい安全保障環境への対処や来年度予算編成などを念頭に置けば、続投させ政権へのダメージ回避を最優先に考える首相の適格性にも疑問符が付く。

身内から内閣改造論

 仙谷由人官房長官と馬淵澄夫国土交通相の問責決議が参院本会議で可決された。海上保安庁の情報管理体制の不備などが問われた馬淵氏の責任も重いものがあるが、菅内閣を実質的に取り仕切る仙谷氏の責任はさらに重大である。

 尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件をめぐる一連の政府対応ではビデオの非公開方針により有効な外交カードを失ってしまった。自衛隊が「暴力装置」であるとの発言では、わが国の国防を担いかつ国際貢献や災害救助に汗をかく自衛隊を侮辱した。

 この言葉は社会主義革命を目指す革命家らの日常用語だ。仙谷氏は謝罪し撤回こそしたが、政権の中枢に居座りながら現在も「構造改革派」の立場から国家の解体をひそかに進行させているのではないかとの疑念を改めて浮かび上がらせている。野党側はこのほか国会での「傲岸不遜な発言、失策の数々」などを挙げて問責決議を可決した。

 同決議には法的拘束力はない。だが、1998年に額賀福志郎防衛庁長官(当時)が可決されて辞任に追い込まれたほどの重たい意味を持つ。更迭を考えていないと述べた菅首相は、決議を無視して2人を続投させる意向なのだろう。しかし、それは一時的なダメージ回避にすぎまい。続投の先に何が待ち構えているのか。それを国民目線で見通すことができなければ首相失格である。

 野党としては「問責」閣僚を相手に質疑を続けることはできまい。自民党は国会審議を全面的に拒否する構えだ。身内の民主党からも声が出ているように、ここは小規模でも内閣改造をして再スタートすべきだろう。

 菅内閣の支持率は20%台に急落し、柳田稔前法相の辞任が追い打ちを掛けている。北朝鮮による韓国・延坪島砲撃事件の際には、官邸を70分間空にし、57年ぶりに起きた地上攻撃にもかかわらず安全保障会議を開かず危機管理の乏しさを露呈させた。きょうから始まる米韓合同軍事演習で韓半島情勢はさらに緊迫化しよう。だが、予測不能の事態に備えわが国土防衛は万全なのか。有事には与野党一致した即応が求められるのだ。

 補正予算もようやく成立した。政府はデフレ脱却に向けた第3ステップとしての来年度予算編成の大詰め作業に入り、来月24日ごろには閣議決定したい考えだ。だが、年明けの通常国会で予算関連法案を成立させるためには、編成段階で野党との事前調整をすることが望ましいが、それができるのか。

会期延長して郵政を

 国民新党との間で公約した郵政改革法案も残っている。政治の要諦は「信」だが、菅首相は先の国会でこれを破った。今回再び反古にするようなことがあれば、不信は増幅しよう。会期を延長してでも国会を動かし「有言実行」すべきである。


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