<話題>高まる解散・総選挙の可能性、再び政策不況の到来か?
2010/11/30 12:07
ここ1−2週間、民主党関係者との取材のなかで、日増しに聞こえてくるようになったのが、「解散・総選挙」という言葉。それだけ、菅内閣が解散・総選挙に打って出る可能性が高まっているのだろう。解散・総選挙ということになれば、政権交代の可能性は非常に高く、政治の混迷により再び政策不況に陥る可能性が危惧される。
共同通信が11月23・24日に実施した直近の世論調査によると、内閣支持率は23.6%に低下、政権維持の危険水域とされる30%を大幅に下回った。一方で不支持率は61.9%まで上昇、菅内閣の危険度が鮮明に浮き彫りになった。
この背景には、尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件に関する政府の対応、「2つの文句だけ覚えておけば務まる」と発言し辞任に追い込まれた柳田法相あるいは「自衛隊は暴力装置」と発言し、問責決議にかけられた仙谷官房長官など、一連の問題があった。しかし、この時点で筆者には、「解散・総選挙」風はそれほど強いものとは感じなかった。
だが、筆者は注目していた2つの出来事により、「解散・総選挙」風が強まったと感じている。その1つは、小沢一郎民主党元代表が東京第5検察審査会の起訴議決の効力停止などを求めた特別抗告に対して、25日に最高裁判所が棄却をしたことだった。これにより、小沢元代表は東京地裁にも議決取り消しを求める行政訴訟を起こしているが、これも却下される可能性が強まり、事実上、小沢元代表は刑事被告人として政治の表舞台から姿を消すことになる。民主党最大派閥の領袖に法の軛(くびき)がかかったことは、党内の力学に大きな変化を引き起こしている。
もう1つが11月28日に投開票が行われた沖縄県知事選だ。この県知事選は不思議な構図で、自民党と公明党が現職の仲井眞知事を支援し、民主党沖縄県連や小沢元代表グループが伊波前宜野湾市長を支援していた。両候補者とも米軍普天間基地の「県外移設」を選挙公約に掲げていたが、しかし、菅総理や民主党執行部の本音は、「県内移設に反対」を明言しなかった仲井眞知事の再選が、県内(名護市辺野古沖)への普天間基地移設を実現し、日米関係を改善する“頼みの綱”となっていたことだ。
しかし、仲井眞知事は再選を果たしたあとの記者会見で、普天間基地移設問題について、「県内移設はあきらめた方がよい」と発言、菅総理の期待は見事に裏切られ、普天間基地移設問題=日米関係の改善は遠退いた。
筆者は、この2つの出来事が、「解散・総選挙」風を強めたように感じている。暢気(のんき)な鳩山前総理にもこの風は感じられたのか、28日には、「このままいくと来年、選挙かもしれないという状況になりつつある」と発言している。
民主党党内からは、「新党設立」の声が聞こえてくる。また、一方で政権基盤を強めるため、「自民党との大連立」を模索する声も聞かれる。しかし、自民党関係者は、「このまま黙っていれば、次の選挙では確実に政権が戻ってくる。何も今、民主党と組む必要はない」と冷めた声が聞かれる。
「解散・総選挙」となれば政権交代が起こる可能性は大きい。子ども手当など民主党政権が実施したあるいは、これから実施する予定の政策のほとんどは取りやめになるだろう。そして、再び予算や政策の組み替えが行われることになろう。そこには、政治の混迷、政策の停滞などによる政策不況が待ち構えている。市場のテーマに再び政治が浮上してくる可能性は高い。(鈴木 透)
提供:モーニングスター社