新宮正志室蘭市長が今期限りでの勇退を表明した。支持者を含め幅広い市民からは、行財政改革に対する真摯(しんし)な取り組みなどの功績をたたえる声や、4期16年にわたる長期政権の間にくすぶり続けた問題を指摘する声なども上がった。
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市民への目配りが利いた市長に対して、室蘭市連合町会協議会の太田稔会長は「人口減やフェリー撤退、不況、さらに予算も減るなど厳しい中、定住自立圏構想に積極的に取り組むなど、16年間よく頑張った」と評価。
「行政を推進する上で町会との連携は欠かせないが、新宮市長は誠実でまじめ、老人クラブの会合や敬老会などにも気さくに顔を出してくれた。行政手腕も抜群で、ご苦労さまと言いたい。健康に留意して、次の人生を歩んでほしい」とねぎらった。
地域疲弊からの脱却を目指した市民運動を展開する室蘭ルネッサンスの平武彦理事長(前輪西商店街振興組合理事長)は「行財政改革で財政基盤を確立した。商業行政は評価が分かれるが、市民会館移転などで輪西は大きく変わることができた」と述べた。一方で「行政出身者なだけに前例主義的など慎重な施策展開が目立ちダイナミズムに欠ける面もあった」と振り返った。
室蘭市議会の我妻静夫議長は「16年間にわたり行財政改革を柱として手腕を発揮され、室蘭活性化に向けて尽力されたことに感謝し敬意を払う。くしくも一期目の後援会事務局長として初当選に立ち会い、今度は議会議長として勇退を見送ることになり感慨を覚えるとともに一つの時代の変わり目を感じる。市長と一緒に、鳩山総理大臣の就任直前に祝意を述べに上京したのが思い出される」と話す。
「フェリー撤退や胆振支庁移転の際には近隣のマチに協力を仰ぐため一緒に方々を回った」という室蘭市女性団体連絡協議会の時田昭子会長は「室蘭再建のため共に歩んできた者として代表が去るというのはとても残念。女性団体を支援し、雇用や環境に関する多くの意見を行政に取り入れていただいたことに感謝している。市民との話し合いの場を頻繁に設け、耳を傾ける姿勢を持った人だった。定住自立圏の施策、白鳥新道第2期区間事業など残した課題をきっちりと次につないでほしい」と、次期市長への確実なバトンタッチを願う。
市内のある商業者は「商業の活性化に尽力された。丸井今井跡地問題の早期解決、輪西はぷらっと・てついちの成功など。ただ中心市街地の選定は不満だった。本来の目的に照らせば中央町が指定されるべきだった」とし、市内各地域の特色が出るようなバランスを求めた。
また、室蘭が西胆振の中心都市になりきれない要因の一つとみる。「ただ市政運営は職員給与カットに始まり、厳しい財政事情の中、よくやったと思う」と話した。
室蘭港への米艦入港時に毎回、反対行動を展開している「憲法を守る室蘭地域ネット」の増岡敏三代表は「入港は外務省の要請だから断れないと言ってきた。中央の言いなりであり、市民を守る立場に立ってこなかった」と批判。「室蘭港からの自衛隊イラク派遣にも態度を明確にせず、朝鮮人遺骨返還の際も積極的に動かなかった。憲法の精神である平和主義、地方自治をまったく理解できない人」とばっさり切り捨てた。
(本社社会部)
◆―― 16年間の手腕高く評価
4期16年間の新宮市政について、経済界、労働界からはそれぞれ評価の声が挙がった。
▽村上仁・さーくる21むろらん市民の会会長
財政健全化を一番の課題として取り組み、一定の評価が出た。新宮市長は国政に対して要望事項があっても窓口が難しかった時代の中で、室蘭の歴史と誇りを持って、先人の智恵が後押しして課題を克服してきた。私としては感謝したい。
▽井野斎・連合室蘭会長
室蘭をものづくりのマチと位置づけ、経済動向で室蘭も苦しい中、政策転換を含め取り組み、今がある。市民の英知の結合で16年前、経済界、労働界一体で擁立したことは、長い室蘭の歴史の中で初めてで、大きく評価されるべき。
▽室蘭商工会議所・栗林和徳会頭
PCB(ポリ塩化ビフェニール)廃棄物処理事業誘致で、地域経済に大きな効果をもたらした。長年の懸案だった胆振支庁移転には、リーダーシップを発揮され、広域センタービルを建設。地域力を結集した『オール室蘭』体制で事業を進めた。退任表明は誠に残念。残された任期も本市の活性化に尽力をお願いしたい。
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