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防衛大綱:改定、陸自定員削減も 対中国、海・空を重視

 政府が今月改定する「防衛計画の大綱」(防衛大綱)で示す陸上自衛隊の定員について、前回大綱(04年)の15万5000人から削減せざるを得ないとの声が政府内で強まっている。厳しい財政事情の中、東シナ海で活発化する中国海軍への対処を考慮すれば、海上自衛隊と航空自衛隊に力を割かざるを得ないためだ。財務省は実数に近い14万8000人以下に減らすよう求めているが、陸自は強く反発している。

 「陸自にとっては、非常に大きなインパクトだろう」。先月29日、民主党外交・安全保障調査会の中川正春会長は、防衛大綱に向けた提言に盛り込んだ「旧式装備の戦車や火砲の大幅な削減」の一文をこう解説した。装備を減らせば、陸自は必然的に人員を減らさざるを得ないからだ。

 大綱で書かれる定員は、おおむね10年後の達成をめどにしている。3月の陸自定員(即応予備自衛官含む)は約16万人。財務省は実員の約14万1000人をベースに、即応予備自衛官を加えても14万8000人以下に抑える方針だ。給与水準の低い「準自衛官」の創設も視野に入れる。

 防衛戦略の基本方針が転換を求められていることも削減論につながっている。旧ソ連軍の侵攻を念頭にした「基盤的防衛力構想」が、全国にまんべんなく陸自を配備する根拠になってきた。しかし、菅直人首相の諮問機関「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」(安防懇)は8月、同構想を「もはや有効でない」と切り捨て、党外交・安保調査会の提言も同調した。

 これに対し、陸自は国際貢献活動の増大や南西諸島への配備強化を理由に増員を要求。大綱見直しのたびに定員が削られてきた経緯もあり、「部隊のやりくりで何とかできる限界を超えている」(陸自幹部)と反発する。

 「頼みの綱」は、駐屯地などがある地方自治体の陳情。2日には、部隊がいなくなれば地元経済への影響が大きい北海道の全市町村で作る協議会が、体制維持を政府に申し入れた。防衛省は既存の基地は当面維持する方針だが、同省幹部は「どう考慮しても陸自定員は減らすしかない」と語る。【坂口裕彦、樋岡徹也】

毎日新聞 2010年12月3日 東京朝刊

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