2010年12月4日
臨時国会閉幕/政権担当能力に疑問符ついた
第176臨時国会は64日間の会期を終え、きのう閉幕した。総額5兆円の補正予算は成立したが、提出された37法案のうち成立したのは3割強で、多くが「お蔵入り」となった。連立を組む国民新党との約束だった郵政改革法案も継続審議に終わった。会期を延長してまで成立を期す気力が菅内閣になかったようだ。民主党の政権担当能力に疑問符がつく臨時国会だった。
仙谷長官の失言際立つ
政権を本格稼働させる「有言実行内閣」の出発点。菅直人首相は所信表明で臨時国会をそう位置づけた。だが、「有言」は失言に取って代わり、「答弁は二つ覚えておけばよい」の柳田稔前法相の国会軽視発言では菅改造内閣初の閣僚辞任に追い込まれた。
際立っていたのは仙谷由人官房長官の失言や乱暴な姿勢だ。尖閣諸島沖での中国漁船領海侵犯事件では「政治主導」を棚上げにして那覇地検に責任を押し付け、ビデオ映像の一般公開を阻み続けて海上保安官の映像流失事件まで招いた。自衛隊「暴力装置」発言にいたっては政治家としての資質を問われ、馬淵澄夫国土交通相とともに参議院で閣僚不適格の問責決議を採択された。
深刻だったのは、政府の第一義の使命である国民の生命と財産を守ることに疑念を抱かせたことだ。北朝鮮の延坪島砲撃では砲撃を把握した後、官邸は70分にわたって政治家不在の空っぽ状態になり、岡崎トミ子国家公安委員長にいたっては警察庁に登庁すらしなかった。
砲撃事件はまかり間違えば周辺事態に移行する可能性もあった。それにもかかわらず、安全保障会議を開かず、危機管理の欠如ぶりを見せつけた。
外交・安保政策は国の舵取りの基本のキだが、菅内閣の足腰が定まっていない。尖閣問題だけでなく、メドベージェフ露大統領の北方領土・国後島訪問では横浜市でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議をおもんぱかって駐露大使を5日間呼び戻しただけで、領土問題で毅然とした姿勢を打ち出さなかった。
そもそも菅内閣は臨時国会の冒頭でつまずいた。10月初めに東京第5検察審査会が民主党の小沢一郎元代表の資金管理団体をめぐる事件で起訴議決を行い、野党は小沢氏の国会招致を求めた。国会の政治倫理綱領は疑惑が持たれた場合、疑惑の解明と責任を明らかにするとしている。それに民主党は「クリーンな政治」を掲げて政権についたはずだ。それでも菅首相は積極的に動かず、岡田克也幹事長任せに終始した。
こうしたいずれの場面でも菅首相が指導力を発揮した形跡がない。それが法案成立率の低さや菅内閣の支持率急落につながったとすれば、自業自得というほかない。来年初めには通常国会が待ち構えている。野党は問責決議の仙谷官房長官と馬淵国土交通相が出席する国会審議は拒否するとしている。
指導力で態勢立て直せ
菅首相が指導力を発揮し態勢を立て直さない限り、もはや通常国会は立ちゆかない。いずれにしても菅内閣の政権担当能力に疑問符がついたといえる。