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◆日本は武器を輸出できないの?
なるほドリ 最近、国会などで武器輸出三原則という言葉を聞くけど、日本は武器を輸出できるの?
記者 基本的にはできません。日本は「平和国家」を理念に掲げており「武器商人にならない」と決めたのです。三原則とは、67年に佐藤栄作首相が(1)共産圏(2)国連決議で武器輸出を禁じている国(3)国際紛争当事国またはおそれのある国--へは武器輸出を認めないと決めた政府の原則で、76年には事実上、すべての国への武器輸出を禁じました。
Q でも、日本が米国に武器を輸出した話を聞いたことがあるけれど?
A 米国との間には例外があります。83年に武器技術供与を、04年にミサイル防衛(MD)システムの共同開発・生産を例外としました。これまで19件の武器・武器技術が対米供与されました。
Q 次々に米国への輸出が認められたのはなぜ?
A 同盟国・米国からの強い要請があったためです。日本の高い技術力は米国にとって魅力でした。国内の防衛産業からも「日本を守るためのMDで日本企業の作った部品などを使えないのはおかしい」という声もあがりました。83年は中曽根内閣、04年は小泉内閣という日米同盟強化を掲げる政権だったことも大きな要因でしょう。
Q 例外は他にもある?
A 04年の官房長官談話に「その他の案件は個別に検討し結論を出す」ことが盛り込まれ、06年、インドネシアに巡視艇3隻が供与されました。
Q なぜ今、三原則を見直す議論が出ているのかな。
A 「防衛計画の大綱」(防衛大綱)が今月改定される予定だからです。戦闘機などは共同開発・生産が世界の大勢ですが、日本は三原則があるため参入できません。国内の防衛産業の「顧客」は事実上、自衛隊しかいないため縮小傾向にあり、北沢俊美防衛相は見直しを検討すべきだと主張しています。
Q 実際に大きく変わるのかな。
A 政府内にも民主党内にもかなり温度差があり、まだ分かりません。党の調査会は「人道目的」などに限って例外を認めるなどの案をまとめましたが、反対意見も同時に出されました。菅直人首相はもともと、見直しに慎重とされています。今回の大綱見直しは、民主党政権初の防衛政策の大枠となるので、十分な議論を重ねて結論を出してほしいですね。(政治部)
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毎日新聞 2010年12月5日 東京朝刊