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12/2日付

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民主党外交安保調査会 大綱見直しへ提言 
「動的抑止力」など重視

 民主党外交・安全保障調査会(中川正春会長)は11月29日、来年度予算案編成前に見直しが予定されている「防衛計画の大綱」に向けて、党の基本姿勢や6項目の提言案をまとめた。提言案は鳩山前首相が設置した「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」(新安防懇)報告を踏まえ、これまでの「基盤的防衛力構想」と決別、「動的抑止力」を充実させて島嶼防衛に即応する機動的防衛力の整備や装備品のコスト削減、国際共同開発の潮流に配慮した武器輸出3原則の新基準の整備、国際平和協力活動への参加を促進するためのPKO5原則の見直しと一般法の制定に向けた議論、首相官邸の危機機能を強化する「国家安全保障室」の創設などを提言している。同提言が政府・与党の調整を経て新大綱にどのように反映されるか注目される。

統幕・海空自は機能を強化

 同調査会は大綱見直しにあたり@憲法の平和主義に基づき、国連の下で国際協調を推進A自衛隊は文民統制に立脚し、専守防衛に徹するB日米同盟を防衛政策の機軸とし、その実効性を高めるとともに、アジア地域の新たな安全保障体制を模索Cテロや海賊、地域紛争などに国連を活用して取り組む。自衛隊の海外派遣は武力行使と一体化しないものとするD核兵器の削減・廃絶を強く提唱、北東アジア地域の非核化を目指すE日本独自のインテリジェンス機能、危機管理体制の整備を進める――の基本姿勢と併せ、6項目を提言。
 冒頭で最近の東アジア情勢、朝鮮半島情勢の不安定性は「わが国の安全保障上極めて深刻な脅威」との情勢認識を示し、日米同盟をさらに強化、深化させ日米韓の確固たる協力体制の構築を求めると同時に、「過度な対米依存に陥らぬようわが国独自の取り組みが一層求められる」と強調している。
 提言の第1は「動的抑止力向上と南西方面への対処」。尖閣沖漁船衝突事案以前から東シナ海での中国海軍の動きが活発化している一方、南西方面のわが国の防衛力は手薄な状況が続いていると指摘。冷戦型の静的抑止力による「基盤的防衛力構想」と決別し、「動的抑止力」を充実させるため、@統幕の体制強化A旧式装備の戦車や火砲の大幅削減B南西方面の島嶼防衛に即応する機動的防衛力(陸自展開のためのインフラ整備と海空輸送力)の強化C海空自衛隊の抑止力と警戒監視能力の強化D日米統合作戦能力向上のための計画や訓練の拡充E米軍基地の日米共同使用の拡大――を挙げている。
 第2は「人的基盤」で、隊員の高齢化と人件費の高騰が防衛予算を圧迫し、部隊の精強性を損ないかねない状況を指摘。10年単位のロードマップを作成し、@自衛隊全体の若返りA幹部・曹・士のバランス適正化B後方職種の拡大と若年退職者を含む再就職環境の整備C陸海空自と統幕の予算配分や人員構成の見直しを提言。
 第3は「装備品の戦略的整備と武器輸出3原則の明確化」。国際協力活動に必要な重機などの海外移転が困難なことや装備品の国際共同開発が世界の潮流であり、それらの流れに取り残されることなどを指摘。
 その上で、平和国家の理念に基づく「武器輸出3原則」の原点に立ち返り、国際平和活動への協力の促進と装備品調達コストの低減といった視点から、3原則で禁止されている領域以外の武器・汎用品輸出に関して、@平和構築や人道目的に限定した完成品の海外移転A国際共同開発・生産の対象国は抑制的にし、国際的な武器輸出管理レジームを有力な目安とするB共同開発・生産、海外移転先国との間で秘密保持・第三国移転などに関し、紛争の助長や情報漏えいにつながらないよう基準を整備――の3基準を提案している。
 第4は「国際平和協力活動への取り組み」で、参加促進のため、PKO参加5原則の見直しや自衛隊の武器使用、駆けつけ警護のあり方の見直し、自衛隊派遣の国会の事前承認の原則などの検討を含め、国際協力法の見直し、一般法の制定を提言している。
 第5は「安全保障・危機管理における官邸機能の強化とインテリジェンス体制の充実」で、官邸首脳の意思決定を補佐する組織として国会議員を中心とする20人程度の専属スタッフで編成する「国家安全保障室(仮称)」の創設や人材の育成を含む情報収集能力強化などを求めている。
 最後の第6は「核軍縮・不拡散に関する取組」で、核軍縮に向けた国際社会の取り組みにおいて、唯一の被爆国としての主導的な役割を強調。併せて核の脅威には米国の抑止力に依存すると明記している。