2010年12月7日
社民に協力要請/数合わせで安全保障損なうな
菅直人首相は社民党の福島瑞穂党首と会談し、政権運営への協力を求めた。与党と社民党が連携すれば、衆院で3分の2以上の勢力を確保し法案を再可決できる。しかし、社民党は非現実的な護憲平和主義を掲げている。数合わせで安全保障政策を損なうようなことがあってはならない。
野党で唯一問責に反対
先の臨時国会では、仙谷由人官房長官と馬淵澄夫国土交通相の問責決議が参院で可決されるなど野党の対決姿勢が強まった。来年1月召集の通常国会では2011年度予算案と関連法案の成立が焦点となるが、仙谷、馬淵両氏が続投すれば自民・公明両党は審議拒否の構えを見せている。
社民党は野党で唯一、問責決議に反対した。このため、菅首相は社民党の協力で通常国会を乗り切りたい考えだ。しかし社民党は民主、国民新両党と連立政権を組んでいた昨年12月、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の同県名護市辺野古への移設を認めず連立離脱を示唆し、鳩山由紀夫首相(当時)が連立維持を優先したため普天間問題が混迷する事態を招いた。鳩山首相は今年5月、日米合意を前提にした政府方針への閣議署名を拒否した福島消費者・少子化担当相(同)を罷免したが、これが引き金となって鳩山首相は退陣した。
普天間問題の混乱は日米同盟深化を妨げるものだ。同盟脆弱化が、尖閣諸島や北方領土をめぐって中露両国の強硬姿勢を招く一因となっている。
福島氏は今回の会談で、普天間移設の日米合意再検討を要請した。政府・民主党が見直しを検討している武器輸出三原則の堅持も求めている。菅首相は社民党の非現実的な方針に振り回されてはならない。もし社民党と妥協すれば、安全保障政策の後退は免れないだろう。
それでなくても首相は普天間問題解決に後ろ向きになっている。沖縄県知事選で再選された仲井真弘多知事との会談後、首相は「期限を切ってという形では考えていない」と述べた。しかし、先月の日米首脳会談では来春に日米安全保障に関する共同声明発表でオバマ大統領と合意したはずだ。米国との関係強化を図るため、首相は問題解決に指導力を発揮しなければならない。
菅内閣の政権担当能力には、特に外交・安全保障面で大きな疑問符が付いている。中露両国に対しては弱腰の姿勢を繰り返し、北朝鮮の延坪島砲撃では危機管理能力の欠如を露呈した。仙谷官房長官の「暴力装置」発言も国民の不信を呼んでいる。
臨時国会の所信表明演説で首相が述べた「熟議」を通常国会で実現するには、内閣改造が避けられないはずだ。特に自衛隊を侮辱した仙谷氏が官房長官の重責にふさわしいとは思えない。すぐに交代すべきだ。
普天間問題解決に全力を
菅首相は政権への信頼を早急に取り戻す必要がある。そのためにも、社民党との安易な連携に走るべきではない。日本の安全保障環境は悪化している。国会の数合わせよりも、普天間問題解決に向け沖縄県民の説得に全力を挙げるべきだ。