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特集ワイド:こどもニュース終了 大人の疑問も解いてくれた(1/2ページ)

 ◇いまさら聞けない、あんな、こんな…

 NHKの「週刊こどもニュース」が19日の放送を最後に終了する。世の出来事をかみ砕きながら解説を続けて16年半。人気番組が残したものとは--。【根本太一】

 「テレビを見ていて、私が抱いた疑問と、番組の子役が聞くことが同じレベルだったんです。びっくりですよ」と話すのは、番組のファンだったという落語家の立川志の輔師匠である。「そこまで尋ねるかって質問を子どもがするんですが、ふと気付いたら、あれ? 私どもも答えられない。ショックでしたねえ」

 「こどもニュース」は総合テレビで日曜午前8時5~35分(関西は同8時半~9時)の放送。1週間に起こった事象の背景などをクイズや模型を使って伝えている。子どもたちが抱く疑問に家庭で主に父親が答える形式で、5日には東北新幹線全線開通を受けて、新幹線の素晴らしさなどを取り上げた。

初代おとうさん、池上彰さん
初代おとうさん、池上彰さん

 94年4月のスタート。当時NHK主幹だった池上彰さんが、初代「おとうさん」の役だった。当初は日曜午前8時半から放送されたが、人気が出たため99年に同午前10時台のファミリータイムに「格上げ」。2000年春~10年春は土曜の午後6時10分からに。

 昨年春から3代目「おとうさん」を務める岩本裕さんは、医療や原子力事故などを担当する科学文化部の解説委員だった。「一から修業のやり直しです。科学の知識は少しはあっても政治や国際情勢には疎かったですからね」

 例えば、ふだんは何気なく口にする政党の「幹事長」。カネを握っているから偉いと説明しても子どもは「?」。幹事とは花見の時に金を集める人と言えば「え、花見でお金を取るの?」。まるで伝わらない。

 --国にはお金がないので税金だけでは賄えません。だから国民から借金をします。「国債」というんです--。おとうさんがそう話した途端に子どもたちが問いただす。「お金が足りなければお札を印刷すればいいじゃない」。さて、どう説明するか。

 「番組に出演して、大人だって実は分かっていないということに気付かされたんです」。そう語るのは、初代「おかあさん」でタレントの柴田理恵さんだ。「分かった『つもり』でね、何が分からないかも分かっていなかったんです」

 記念すべき第1回で扱ったのは、行き詰まった非自民の連立政権。解説は当然、内閣官房長官にも及ぶが、その役職について「いつも人の前で話(記者会見)をしている人」が、それまでの柴田さんの認識だった。「じゃ何なのって打ち合わせの時に聞いたら、スタッフが『首相の女房役』と言うのよ。私、官房長官はエプロンしてるのって思わず突っ込んじゃいました」

 おかしいが、我が身を振り返ると、笑えない。「大人がね、大人の言葉で適当に説明して、分かったって聞くと子どもは『ハイ』と答えるの。そういうもんだと無理に自分を納得させるんです」

 岩本さんの観察によると、分かったとは答えてみたが、心の底では納得していない時の子どもは「目がうつろ」だ。「だから自分が納得するまで専門家に聞いたり調べたり」。せめぎ合いが続くという。

 そうして作られてきた「こどもニュース」。志の輔師匠も「知りたい時にスッと頭に入るように教えてくれるんです」。そもそも海上保安庁と海上自衛隊の役割は? 警察庁と警視庁、検察庁の違いは--。「今さらね、恥ずかしくて人に聞けないことですよ」

 池上さんの魅力も大きかった。05年3月にNHKを退職してフリージャーナリストに転じたが、スタッフや当時の子役たちと今も仲が良いという。「なんて言えば分かってもらえるんだろうかといつも悩んでいたけど、本番では親子感がにじみ出ていて父親役にぴったりでした」と柴田さん。「物腰柔らかく、口調も優しく偉ぶらず。私はすっかり頼り切っていましたね」

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毎日新聞 2010年12月7日 東京夕刊

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