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露軍機の演習妨害「きしむ日米同盟ゆさぶる」
日米共同統合演習に対するロシア機の妨害は「訓練空域のど真ん中に割り込むかつてない大胆な挑発」(防衛省幹部)だ。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)移設問題できしむ日米同盟が機能しているか瀬踏みする行動で、尖閣諸島沖の漁船衝突事件後に中国がみせた「高圧的な姿勢」と同じ構図だ。(半沢尚久)
6日午前、ロシアのIL38哨戒機2機の飛行を探知すると、航空自衛隊の戦闘機は緊急発進(スクランブル)し警戒に入った。ここまでは通常で、今回の演習のメーンイベントと位置づけられた日米イージス艦の「同時対処」訓練が取りやめになることもなかった。
だが「艦対空」の演習は中止に追い込まれた。ロシアの航空機が訓練空域に割って入ったためだ。そのまま演習を実施すると、ミサイル防衛(MD)や「艦対空」演習で使うレーダーの周波数帯、照射方法や探索パターンを探知されかねない。周波数帯を知られれば妨害電波でレーダーが無力化される恐れがある。
演習開始時に合わせ、2機が演習空域の中心で交差するという飛行航路は、周到に計画された妨害飛行であることをうかがわせる。
ロシアは昨年4月に北朝鮮が弾道ミサイルを発射した際も、情報収集機を日本海に展開させた。発射30分前に飛来し、ミサイルの1段目ブースター(推進エンジン)の落下危険区域の上空を通過した。自衛隊と米軍のMDシステム運用の偵察だった。
ただ、今回の妨害飛行は通常の偵察とはいえない。「北方領土問題での揺さぶりの一環だ」(政府高官)との見方が多い。メドベージェフ大統領は2012年の大統領選を見据え、強い指導者を演出するため北方領土訪問など強硬措置を取っている。妨害もその延長線上にあり、前原誠司外相の北方領土視察に対する報復との色合いも強い。
深刻なのは、ロシアの挑発に対して、日本の装備が対抗しきれなくなる恐れがあることだ。ロシアは中国と同様、最新鋭の第5世代戦闘機を開発中で15年に配備する予定だ。一方防衛省は次期主力戦闘機(FX)として第5世代のF35ライトニング2導入を目指すが15年の調達は定かでない。加えて菅直人首相は社民党の求めに応じて、武器輸出三原則の見直しを先送りしており、次・次期主力戦闘機(FXX)に充てるべき国際共同開発にも参加できそうもない。今回の妨害が突き付けた課題は多い。