【社説】菅首相の自衛隊派遣発言は不適切

 日本の菅直人首相は10日、北朝鮮による日本人拉致被害者家族会と面会した席で、「(韓半島〈朝鮮半島〉有事の際、日本人拉致被害者を)救出するために自衛隊が直接出動し、相手国(韓国)の領空を通過するなどして行動できるルールはまだ決まっていない」「万一の事態に備え、今後も議論を進めていきたい」などと発言した。菅首相は自らの発言が問題になると、「自衛隊の輸送機などが(韓国に)受け入れられるかについて考えるべき(という趣旨だった)」と説明した。

 日本のマスコミは菅首相の発言について、「海外における自衛隊の武力行使を禁じる憲法9条だけでなく、自衛隊法にも違反しており、また実現の可能性も低い」と批判した。韓国政府関係者も、「韓日間で事前の話し合いもない状況で、突然出てきた発言だ」とコメントしている。

 菅首相の発言は、明らかに韓半島の現実に対する性急な判断に端を発している。しかしその発言を単なる失言として終わらせることもできない。最近、韓国と日本を訪問した米国のマーレン統合参謀議長は、「韓国と日本は過去の問題を乗り越え、韓米日3カ国の合同軍事訓練を行うことができるよう、努力しなければならない」と発言した。さらに今年に入ってからは、韓米合同軍事演習に自衛隊の関係者が、また日米合同軍事演習にも韓国軍の関係者がそれぞれオブザーバーとして参加している。これは過去には一度も見られなかったことだ。

 米国は韓米日合同軍事訓練の主な目的として、対北朝鮮政策における協力の必要性を前面に掲げているが、これには間違いなく「中国に対するけん制」という大きな意味合いも含まれている。また北朝鮮の急変や武力攻撃が起こった場合、韓米同盟の次元で韓半島に派遣される米軍の主力部隊である第7艦隊は、日本の横須賀基地に駐屯している。米国は有事の際、軍事面での効率を高めるには、韓国と日本の軍事協力のレベルを大幅に引き上げる必要があると考えており、今後も重ねてこのような立場を表明する可能性は高い。

 しかし韓国としては、日本による植民地支配といった歴史問題はもちろん、日本が独島(竹島)の領有権をもいまだに主張していることもあるため、自衛隊が韓半島周辺で活動することを受け入れるわけにはいかない。中国は韓米日3カ国による軍事協力の強化を、自分たちを包囲する敵対的な動きと見なしている。そのため韓国としても、これは今より数倍も慎重に考えなければならないデリケートな問題だ。そのため菅首相の発言は非常に配慮に欠け、誤解を呼び起こしかねない不適切なものだった。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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