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北朝鮮・拉致問題:菅首相の自衛隊派遣発言 内外に波紋 政府、火消しに躍起

 菅直人首相が朝鮮半島有事の際に自衛隊による邦人救出に言及したことが内外に波紋を広げ、政府は火消しに追われている。北朝鮮の軍事的挑発で緊張感が高まっているとはいえ、韓国側では過去の植民地支配に対する国民感情に配慮しない「不適切な発言」(朝鮮日報)に反発も出ている。

 仙谷由人官房長官は13日の記者会見で「韓国との関係で日本の自衛隊が何らかのことができるのかどうかは、いまだ全く検討されていないし、当然のことながら協議はない」と明確に否定した。

 発端は首相が10日の拉致被害者家族との懇談会で、北朝鮮にいる拉致被害者を自衛隊が救出できるよう韓国側と協議を始めたと受け取れる発言をしたこと。11日には在韓邦人の救出を念頭に置いていると修正したが、韓国側と協議する考えを改めて示した。

 自衛隊法には緊急時の在外邦人輸送の規定があるが、安全確保と相手国の同意が前提となる。戦闘地域への派遣はそもそも想定されていない。

 仙谷氏は「頭の体操もやっておかないとならないが、歴史的な経緯があるから簡単な話ではない」と述べ、首相の発言は「頭の体操」にとどまるとの認識を示した。安住淳副防衛相も12日の民放番組で「こちらの意思だけでは、なかなかうまくいかない」と戸惑いを隠さなかった。

 北朝鮮の砲撃事件を受け、米国から安全保障面の日韓協力を期待されてはいるが、歴史的経緯と憲法上の制約から日韓ともに慎重なのが現状。政府内では「事務方の説明を混同して発言してしまったのではないか」(防衛省幹部)と、軽率さを指摘する声も出ている。【坂口裕彦、野口武則】

毎日新聞 2010年12月14日 東京朝刊

 
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