【社説】韓半島事態に便乗、日本は自衛隊の役割拡大に動くのか
  北東アジア情勢が緊迫している。中国の浮上と米国のけん制という大きな枠の中で、北朝鮮の変数が新たな動因として作用する様相だ。中国が北朝鮮側に立ち、朝中対韓米日の新冷戦的な対立構図が可視化している。特に日本の素早い対応が目につく。延坪島(ヨンピョンド)攻撃など北朝鮮の相次ぐ挑発による韓半島情勢悪化に便乗し、自衛隊の役割強化の動きが加速している感じだ。

  日本は来年から2015年まで適用される「新防衛計画大綱」を近く発表する予定という。動的防衛力概念の導入が核心という点で注目される。その間、日本は「専守防衛」という自衛隊の目的に合わせて、周辺地域に不安定要因にならない最小限の防衛力だけを備える基盤的防衛力概念を維持してきた。しかし2011年からは動的防衛力の概念を導入し、自衛隊を地域的に柔軟かつ幅広く運用するということだ。何よりも、韓半島事態を念頭に置いて自衛隊の活動範囲を拡大するという意味と解釈される。

  こうした脈絡で菅直人首相の「韓半島有事の際の自衛隊出動」発言は、失言として済ませることではなさそうだ。菅首相は先週、拉致被害者家族に会った席で、「(韓半島有事の際、日本人被害者らを)救出するために、自衛隊が相手国(韓国)の内部を通って行動できるルール作りができていない」とし「万一の場合に備えていくつかの議論を進めている」と述べた。この発言の波紋が広がると、「自衛隊の輸送機などを(韓国が)受け入れられるのか、そういうことについて考えなければならないという趣旨だった」と釈明した。仙谷由人官房長官は「検討もしたことがない」と否認した。韓国政府の関係者は「突発的で根拠のない発言」という反応だ。

  自衛隊の海外武力行使を禁止した憲法9条にもかかわらず、自衛隊の役割拡大が必要だというのが日本主流政界の認識だ。新防衛概要はこうした認識の所産であり、菅首相の発言にはこうした認識が含まれていると見なさなければならない。韓半島有事をうんぬんしながら不安をあおるのも問題だが、日本軍に対する韓国人の感情を度外視した浅はかな発言だという指摘は免れない。

  米国は北朝鮮の挑発を利用して、対中けん制のための韓米日結束を強化しようとする動きを見せている。3カ国間の合同軍事訓練までも提案した。日本はこれを自衛隊の役割を強化する機会として利用している。その口実を提供したのは言うまでもなく北朝鮮と北朝鮮をかばう中国だ。北東アジアに冷戦的な対立構図が固着することは、誰にとってもプラスにならない。米中間に挟まれた韓国の立場は特に難しくなる。北東アジアの平和と安定を本当に願うなら、中国は北朝鮮がこれ以上挑発できないよう防ぐ必要がある。米国と日本もこの状況を自国に有利な方向に利用して、緊張をさらに高めさせるべきではない。


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