■2010世耕弘成
去る12月3日に臨時国会が閉会した。 補正予算が成立したものの、 法案の成立率は3割台で、 成果の少ない国会であった。 また民主党政権の尖閣問題など外交問題での失態や、 大臣の暴言、 失言が相次ぎ、 野党としてはそういった部分に質疑時間を取られる結果となってしまった。
私は予算委員会のNHK中継の補正予算審議で2回、 約3時間質問に立った。 1回目は補正予算審議初日の11月18日。 2回目は最終日の26日であった。 1回目の質問では、 政策分野の議論も準備していたが、 自民党幹事長代理という役目上、 柳田法務大臣の失言問題と防衛省の通達問題が主な質問になった。 結果、 柳田大臣の法相としての適性欠如が明らかになり、 辞任に追い込む結果となった。 また防衛省通達問題の質疑中に仙谷官房長官から 「自衛隊は暴力装置」 との発言が飛び出し、 同長官の問責決議可決へと繋がっていった。
2回目は防衛省通達問題を中心に質問した。 この問題は言論の自由を侵しかねない、 民主主義の根幹にかかわる問題だ。
防衛省は11月3日の入間基地で開催された航空ショウに来賓として出席した自衛隊協力団体の長が政権批判をしたことを問題視し、 事務次官名で 「基地内の行事では来賓に政治的発言をしないよう要請し、 聞き入れない場合は出席させないこと」、 「基地外の行事に招待される場合には、 行事に政治的内容が含まれていないことを確認し、 確認できない場合は出席しないこと」 という趣旨の通達を全自衛隊基地に流したのである。
私の質問に対して北澤防衛大臣が答弁でよりどころとしたのは、 政治的中立を規定する自衛隊法61条と関係政令であるが、 来賓の挨拶で自衛隊の政治的中立が損なわれるとは思えない。 また国家公務員法もまったく同じ文言で政治的中立を求めており、 大臣の主張通りならば国家公務員全体に対して同様の通達を出す必要がある。
また北澤大臣は 「施設内で自衛隊員が聞こえる状態で最高指揮官への批判が行われたことが問題」 とした。 ならば菅首相を厳しく批判している自民党や私のホームページが自衛隊のパソコンで見られることも問題視しなくてはならなくなる。
このようにこの通達はまったく論理的に破綻しており、 北澤大臣もその内容を十分に理解していないことも判明した。
自衛隊員は文民統制のもと、 問題のある通達であっても忠実に対応する。 基地に来る来賓や一般の施設で講演する人などに、 発言内容を事前確認することになり、 自衛隊員による事前検閲が行われることになる。
また自衛隊と地域社会の信頼関係も崩壊する。 和歌山でも東南海南海沖地震に備えて、 いざという時に災害救助に派遣される自衛隊とは日頃から情報交換と信頼関係を構築しておくことは極めて重要である。 しかし現場にこのような通達が流され、 日頃自衛隊に協力してくれている人の発言を検閲するとなると、 信頼関係は一気に崩れることになる。
私の度重なる通達撤回要求を防衛大臣は拒否し続けている。 この問題は民主主義の根幹にかかわる問題であるので、 引き続き追及を続けていきたい。
(2010世耕弘成)
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