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崩壊・特捜検察:隠ぺい事件起訴/中 判事「裁判員に影響も」

大阪地裁に大坪弘道前大阪地検特捜部長の保釈を請求後、会見する田宮甫弁護士(右)と福田健次弁護士=大阪市北区で2010年10月22日午後1時4分、幾島健太郎撮影
大阪地裁に大坪弘道前大阪地検特捜部長の保釈を請求後、会見する田宮甫弁護士(右)と福田健次弁護士=大阪市北区で2010年10月22日午後1時4分、幾島健太郎撮影

 ◇列島覆う「不信」

 西日本のある地方検察庁(地検)。検事の取り調べを終えた後、手錠をかけられて部屋を出る交通事故の容疑者が言った。「証拠に手を加えてないでしょうね」。若い検事は何も答えられなかったという。

 大阪地検特捜部による証拠品改ざん・隠ぺい事件は、震源地の大阪地検から全国に「検察不信」という波紋を広げている。

   □  □

 「大阪地検の事件などで、供述調書の信用性が問題となっているのはみなさんご存じと思います」。今月7日、福島地裁郡山支部で行われた傷害致死事件の裁判員裁判。無罪を主張する被告の弁護人は、証拠品を改ざんした大阪地検特捜部の元主任検事が捜査した「郵便不正事件」を引き合いに出し、裁判員に訴えた。弁護人の主張に、検察側は「事件と関連がない」と異議を唱えたが、竹下雄裁判長は異議を退けた。

 札幌高裁で公判中の殺人事件で、被告の弁護人を務める笹森学弁護士(札幌弁護士会)は、「立証に沿わない証拠をなくしてしまおうという検察の体質は、特捜部だけではない」と指摘する。今年6月、同高裁の法廷に、被害者の司法解剖を担当した医師が弁護側証人として出廷し、「鑑定書の内容の一部を削除してほしいと検事から頼まれた」と証言した。医師の鑑定書は、被害者を刺した行為と死亡との因果関係を否定する被告の主張に沿う内容で、検察側に都合が悪かった。医師は検事の要求を拒否し、削除しなかったという。

 現役の刑事裁判官も影響を感じている。ある裁判官は「一部の被告は罪を認めつつも、刑事司法への不信感を口にするようになった。そう言われると返す言葉がない」と話す。「今回の件で裁判官は、急激に判断が変わることはないと思うが、裁判員裁判には影響が大きいのでは」とみている。

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 67年、茨城県利根町布川(ふかわ)で大工の男性(当時62歳)が殺害された「布川事件」。強盗殺人罪で桜井昌司さん(63)と杉山卓男さん(64)の無期懲役が確定したが、昨年12月、事件から42年ぶりに再審開始が確定した。特捜検事の証拠改ざん事件を、杉山さん(96年仮釈放)は「証拠改ざんに驚きはない。自分たちが体験した。こういうことを検事もやるんだと、一般の人に知れ渡ったのはいいことだった」と話す。

 4歳女児を殺害したとして、00年に無期懲役が確定した菅家利和さん(64)が冤罪(えんざい)と判明した「足利事件」では、昨年6月10日、最高検の伊藤鉄男次長検事が記者会見し「真犯人と思われない人を起訴し、服役させて大変申し訳ない」と謝罪した。その1カ月後、大阪地検特捜部で主任検事による証拠品改ざんが行われた。「検察のお偉方が謝ったのに全然反省してないんだね」と杉山さんはあきれた。

 検察幹部らの懲戒処分、引責辞任にまで発展した今回の事件。これで検察は本当に変われるのか--。

毎日新聞 2010年10月23日 大阪朝刊

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