2010年10月16日 10時31分 更新:10月16日 12時0分
来年3月12日の九州新幹線全線開通に伴い、新大阪-鹿児島中央を直結する予定の最速列車「みずほ」(仮称)のネーミングに関し、異論が相次いでいる。かつて東京と熊本などを結んだ寝台特急(ブルートレイン)と同名となることから、鹿児島県知事は「事前に相談があったら否定していた」と不快感を示し、鉄道ファンからも「最速列車の『格』にふさわしくない」との声が上がる。そうした声に配慮してか、JR側も「強い反対があった場合はよく相談しないといけない」と含みを持たせる。年内には正式決定する最速列車の名称の行方は--。
山陽新幹線と相互直通するのは、N700系をベースにした新型車両。名称は08年秋にJR西日本と九州が公募し、09年2月に最も応募数が多かった「さくら」に決定。その後JRは、同じ車両を使いながら、「さくら」よりも停車駅を減らして所要時間を短くする最速列車として「みずほ」を検討していることを明かした。
「みずほ」の名称について、鹿児島県の伊藤祐一郎知事は9月の会見で、「熊本止まりだった寝台列車と同じ名前は違和感がある。公募までして決めたのだから『さくら』でいい」などと発言。「地元自治体にJR側から相談がなかった」と不快感も示した。
鉄道ファンからも異論の声が。「さくら」は1929年、日本で初めて愛称が付いた特急「櫻(さくら)」に使用されたほか、戦後は東京-長崎間を結び、05年3月に廃止になった寝台特急にも使われた。一方、「みずほ」は東京から熊本や長崎などに向かった寝台特急で、「さくら」より後の61年に運行し94年に廃止された、いわば脇役的な列車。鉄道評論家の川島令三さん(60)は「列車の格は歴史の古さや役割などで決まる」と言い、「『さくら』の方が歴史が古く、『みずほ』より格上。それなのに、さくらより速い列車がみずほというのは違和感がある。多くの鉄道ファンも同じように感じているはず」と話す。
若いころ、寝台特急みずほを運転した経験があるというJR西の佐々木隆之社長は「賛否両論出るのはよくある話。強い反対があった場合はよく相談しないといけないが、これまで原則『みずほ』で来ているので……」。JR九州の唐池恒二社長は「まだ調整中で、決定していない」と話している。【牧野宏美、綿貫洋】