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東北教職員不祥事 際立つ悪質さ 学校現場の信用失墜
児童ポルノの画像製造、女子高生への恐喝…。東北各県で続発する教職員の不祥事は、悪質さも際立っている。逮捕された職員に別の容疑が浮上し、再逮捕、追送検されるケースも多発。モラルの問題では片付けられず、学校現場の信用を失墜させる事態を招いている。
各県教委が懲戒免職処分とした主な事例は表の通り。(1)未成年者との性的行為(2)飲酒運転(3)学校関連会計の着服―といった行為が多い。中には2000万円近い横領(青森)や、携帯電話のメールを勧誘手段とした児童買春(秋田)といった例もある。 宮城県内では今秋、教員の逮捕、再逮捕が相次いだ。知人女性の男児の顔などを殴ってけがをさせたとして、10月に傷害容疑で逮捕された特別支援学校の教諭(49)は11月、男児の姉の裸を撮影し、児童ポルノ画像を製造した疑いで再逮捕された。 小学校教諭(41)は11月、帰宅途中の女子高生に「下着を売ってくれ」と要求し、断られるとカッターナイフを突き付け「顔を傷つけるぞ」と脅した恐喝未遂容疑で逮捕され、他にも同様の事件を起こしていたとして12月に同容疑で再逮捕されている。 岩手県の高校教諭(45)は北上市の高校に生徒を誘拐する予告文書を送り付け、7月に威力業務妨害の疑いで逮捕された。その後、久慈市の高校にも脅迫文書を送ったとして脅迫容疑で追送検され、11月に有罪判決を受けた。 指導する立場にある管理職の不正も発覚した。宮城県では、学校徴収金を着服した特別支援学校の事務室長(57)、酒気帯び運転容疑で逮捕された小学校の校長(56)が免職となった。 飲酒絡みの不祥事も後を絶たない。山形県の中学校教諭は課外活動中に生徒と酒を飲み、停職1年となった。別の中学校教諭は部活動の引率中に飲酒した上、生徒に体罰を加えたとして減給処分を受けた。
◎菅野仁宮教大教授に聞く/ストレス・孤立感背景に
教職員の懲戒処分が相次ぐ事態に関して、宮城教育大の菅野仁教授(社会学)に不祥事が起こる背景や対策の在り方を聞いた。
―学校現場の現状をどうみますか。 「一般社会の犯罪発生率に比べると、処分される教員の割合は取り立てて多いわけではないが、教員は依然として周囲から『聖職』と見られ、期待感は大きい。子どもを預けている保護者、地域の目も厳しい」 「教員と子どもの距離感は変わってきた。携帯電話、メールなどコミュニケーションツールの発達で、上下関係のような区分や威信が薄れている。子どもの変化で40〜50代のベテランも従来のやり方が通用せず、プライドや自信を失いかけている」
―不祥事が続発する背景は。 「教員のストレスが増大している。学校や教員を地域で支える環境が失われ、忙しさから、職員室で悩みを共有したり、相談したりする雰囲気もない。周囲の目があるため、コンビニエンスストアで立ち読みができないほど、24時間、学校外でも心は休まらない。孤立感にさいなまれている」 「ストレスをため込むと、心の病になりがち。飲酒は発散する手段の一つだが、それがアルコール絡みの不祥事に連関している。蓄積したストレスが外に向けられた場合も不祥事の要因となり得る」
―各県教委は研修やマニュアル作成などの対策を打ち出しています。 「当事者意識が薄い人を集めた研修では、効果に疑問が残る。例えば、処分に該当しなくても問題行動と判断できる場合は『イエローカード』を出し、その対象者に研修を受けさせるようにしてはどうか」 「マニュアルもコンプライアンス(法令順守)の徹底を呼び掛けるなど、抽象的な中身では駄目。子どもとの距離の取り方など具体的な項目を盛り込まなければいけない。一部で問題となっている生徒とのメール交換は一律に禁止するのではなく、ルールや歯止めを設けるなどした方がいい」
―再発防止に有効な取り組みは。 「子どもに対するスクールカウンセリングの導入が進んでいる。カウンセリングの対象に教員も加えるべきだ。専門医と連携する体制を整えておくことも求められる」 「処分と再発防止は性質が異なる。不祥事が起きたら処分とは別に、背景を分析、検証し、同種事例を積み上げて再発防止に役立てる仕組みが必要だ。情報の共有化も大事で、当事者意識を高めることにつながる」
2010年12月12日日曜日
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