中小型パネルの生産能力拡大の動きが活発化,日本メーカーにも設備投資の可能性
スマートフォンやタブレット端末,車載機器の需要拡大によって,中小型パネルの生産能力拡大の動きが活発化している。例えば韓国Samsung Mobile Display Co., Ltd.は,有機ELパネルの第5.5世代ライン(ガラス基板寸法は1300mm×1500mm)による量産を2011年に開始し,2012年には月産7万枚(ガラス基板換算)のフル生産能力にする計画だ。台湾の大型液晶パネル各社は,旧世代の大型液晶パネル生産ラインを中小型用に転換することで,その生産能力を拡大している。
2008年秋のリーマン・ショック後は事業の縮小・統合に注力していた日本メーカーも,スマートフォンやタブレット端末の需要が旺盛なことから,ここへ来て生産能力拡大に踏み切る可能性が出てきた。2010年12月14日に一部報道があった東芝モバイルディスプレイの設備投資については,親会社の東芝が同日「報道されているような内容について決定した事実はありません」とするコメントを出している(東芝のコメント)。しかし,スマートフォンやタブレット端末の需要が旺盛な上に,セット・メーカーがパネル調達の安定化を図るためにパネル調達先を増やそうとしていることから,こうしたニーズに応えて今後日本のパネル・メーカーが生産能力拡大に動く可能性がある。
このように生産能力を拡大したパネル・メーカーは,各社の得意技術で差異化を図り,受注を競うことになる。2010年は米Apple社のスマートフォン「iPhone4」の発売により,低温多結晶Si TFT技術による高精細化とIPS技術による広視野角化の競争が激化した。2011年以降はこれに加えて,有機EL,電子ペーパー,3D,タッチ機能内蔵といった切り口での差異化競争が本格化する可能性が高い。例えば,韓国Samsung Mobile Display社は先述のように有機ELパネルで他社を圧倒する規模の量産体制を構築しつつある。台湾のパネル・メーカーは,米E Ink Corp.や米SiPix Imaging社といった電子ペーパー・メーカーとの提携によって,電子書籍端末向けで戦略的な事業展開を進めている。日本メーカーにとっては,3Dやタッチ機能内蔵といった得意技術によっていかに差異化を図れるかが,中小型パネル事業の成否の分かれ目となりそうだ。