青森市で22日に開かれた県農業委員大会で、来賓として出席した県関係の国会議員が環太平洋パートナーシップ協定(TPP)を巡り論戦を交わした。民主、自民両党の7議員が他党議員の発言を批判しながら意見を主張する展開に「選挙活動か」とあきれて席を立つ参加者も多くみられた。【矢澤秀範】
大会は県農業会議と市町村農業委員会の主催。永年勤続の委員や功績を残した委員らを表彰するなどの内容で、県内の農業委員らが大勢集まった。
大会に先立つ運営委では、「TPPへの参加と日本農業・農村の存立とは両立しうる余地がない」としてTPP交渉参加に反対する特別決議が採択された。来賓の民主4人、自民3人の国会議員は、県の基幹産業の農業を担う農業委員らの前で、参加への慎重姿勢や断固反対などの意見を述べた。
自民の江渡聡徳衆院議員は、政府の対応が打ち出される前に関係国との協議開始方針が示された点などを批判。「急にTPPを進めるという対応はあまりにも唐突。とっぴな『トッピッピー』だ」と話した。
民主の横山北斗衆院議員は、日本を先進国とした工業発展の犠牲者が農業や漁業者だとし、戸別所得補償などの政策がこれまでになかったことが食料自給率の低下を招いたと主張。TPP参加は戸別所得補償制度の意味がなくなるとし、「党方針に逆らってでも反対する」と述べた。
続いて農林水産政務官の田名部匡代衆院議員(民主)は、慎重な議論を進めて参加の可否を決めると含みを残したが「国内体制をまずしっかりさせる。その一つが戸別所得補償。今回の米価下落も制度がなかったらどうなっていたか」と民主党政策の有効性を強調した。
これらの発言に対し、自民の木村太郎衆院議員は「(民主の支持団体の)自動車や電機労組でも同じ話をしていただきたい」と横山議員を批判。田名部議員の発言には「米価が一気に下がったのは、『どうせ国から金がくる』という意欲の低下を証明している」と返した。TPPについては「農水省と経産省、内閣府の試算が1兆円単位でバラバラ。政府は国会、国民に対して責任持った試算を示すべきだ」と話した。
民主の津島恭一衆院議員は「木村先生の戸別所得補償制度で米価が下がったという趣旨の発言は違う。考えなくてはいけないのは、自給率や米の消費が下がっていること、米が余っているという現状をどう改善するかだ」と巻き返した。TPPについては「党がすべて賛成推進しているという印象はおやめいただきたい」と議論の必要性を訴えた。民主の中野渡詔子衆院議員は「慎重に議論すべきだ」、自民の山崎力参院議員は反対の立場を訴えた。
延々と続く来賓の「あいさつ」に、会場からは「まだ続くのか」とのヤジも。八戸市の農業委員(71)は「TPP参加で1次産業が危ない可能性はあるが、あいさつならちょっと触れるだけでいい」とため息をついていた。
毎日新聞 2010年11月23日 地方版