【コラム】延坪島を放棄せよというのか(下)
北朝鮮側のこうした主張が、最近いきなり出てきたものではないということは分かっている。しかし、最近の出来事や、これをめぐる親北派の発言・提案などは、北朝鮮の要求が単なる主張にとどまらず、米国や韓国、そのほかの国々のメディアを通じ、世論の形成を図ろうという意図が込められていることを意味する。とりわけ、北朝鮮のこうした主張が、言葉だけで終わるのではなく、砲弾や戦争の脅威を伴っているため、韓半島での軍事的な衝突に巻き込まれたくない周辺諸国の不安感、また「ごまかしの平和」に安住しようとする韓国政府のムードに便乗しているという点に注目する必要がある。
われわれが警戒しなければならないのは、次の2点だ。1点目は、延坪島など危険と隣り合わせの地域や、武力衝突の「雷管」同然の地域を自ら放棄しようとする、韓国内部の敗北主義だ。「金で平和を買おう」という主張や、「延坪島がなぜ戦争を甘受しなければならないのか」といった主張は言語道断だ。今や延坪島は、単なる離島ではなく、「西海5島の一つ」でもなく、「韓国の最後の領土」だ。問題があり、危険だからといって、放棄するようでは、領土とはいえない。ハリソン氏は寄稿文で、延坪島を「人がまばらで、相対的に魅力的な島でもない」と描写し、韓国が「ただワタリガニ漁だけのために守っている」と表現したが、これには侮辱感すら感じる。
2点目は、金正日(キム・ジョンイル)政権が、思い通りにNLLの見直しや西海5島の横取りを実現できず、世論の形成もできない場合、さらなる軍事的な冒険に出かねないという点だ。それは西海周辺なのか、あるいは別の地域なのかは分からないが、金正日体制が現在直面している事情を考えれば、また中国の援助が続く限り、何らかの言い掛かりをつけて再び武力挑発を行う可能性は排除できない。その上、北朝鮮は韓国と米国の「限界」に気付けば、何か問題を起こしても、これ以上失うものはない、という考えを捨て去ることはできないだろう。
金大中(キム・デジュン)顧問