【コラム】延坪島を放棄せよというのか(上)

 北朝鮮がなぜ、延坪島を砲撃したのかについて推測する寄稿文が、今月12日付の米紙ニューヨーク・タイムズのオピニオン欄に掲載された。セリグ・ハリソンという、親北朝鮮派の元ジャーナリストが書いた寄稿文には、西海(黄海)の北方限界線(NLL)を引き直そう、という提案が含まれている。

 ハリソン氏の提案は、「NLLを少し南側に引き直す」というものだが、これは明らかに、西海5島(西海沖のNLL近くにある五つの島)を北朝鮮に譲渡しようという趣旨だ。同氏は、NLLを引き直す権限は米大統領にあり、韓国と協議して、韓国に拒否権を与えるようなことはあってはならない、と主張した。そして、NLLを南側に引き直したら、現在のような危機的な状況が解消されるだけでなく、米国・北朝鮮・中国の3カ国が(韓国戦争〈朝鮮戦争〉の休戦協定に代わる)平和協定を締結するための交渉も実現する、と述べた。

 ハリソン氏は結論として、「黄海の緊張状態を取り除き、非武装地帯の平和を維持することは、米国の韓半島(朝鮮半島)政策の大きな目標だ。つまり、韓半島の非核化や、北朝鮮との外交関係の正常化を実現すると共に、米国が第2次韓国戦争に巻き込まれる危険性を減らす上で不可欠だ」と主張した。同氏は1972年以降、これまでに10回以上訪朝し、米軍の韓半島からの撤退など、北朝鮮の主張を代弁したり、ワシントンで北朝鮮の「窓口」の役割を果たしたりしてきた。そんな人物が、延坪島砲撃事件など、南北間の衝突が続いているさなかに、このような提案をニューヨーク・タイムズに寄稿した。これは単なる北朝鮮ウォッチャーのコメントとは考えられない。

 一方、ハリソン氏の提案に歩調を合わせるかのように、韓国の一部の左派メディアでも、西海のNLLを「線」ではなく「面」と考え、その周辺地域を一種の「平和地帯」に変えよう、という見解を発表した。これは、盧武鉉(ノ・ムヒョン)前政権下の「10・4南北首脳宣言」で示された「西海平和協力地帯」構想と似たようなものだ。同構想では、延坪島に海底トンネルを掘る計画が示されていないが、これも有事の際には延坪島を放棄するのではないか、という懸念を裏付けるものだ。左派メディアは「西海平和協力地帯」の設定こそ、軍事的な衝突を防ぐための線だというNLLの本来の意味を生かす道だ、という大学教授の主張も掲載している。

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朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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