2010年12月14日0時3分
この国はいつの頃から官民挙げて規制好きの民族になってしまったのだろうか。
欧米で内部告発者を守るための法制や、コンプライアンス、内部統制システムの構築を義務付けるSOX法(企業改革法)などが導入される都度、所轄官庁は矢継ぎ早に法令を定め、企業は詳細なマニュアル作りに奔走してきた。いずれも形は欧米に追随しているが、行政や経営者の利害と目線を優先しているため、欧米とは似て非なる制度が積みあがっている。
経営者にとって必要なことは企業の高尚な理念や倫理観を組織に徹底することである。従業員が企業の価値観や目的を共有していれば、細かな規定は重要性を持たない。社長自身が理解していない規定を順守させようとすることに無理がある。
マニュアルで社員を統制するのは、実は経営者の怠慢でしかない。この手法は、信頼よりは不信を育み、一体感(われらの会社)よりは対立(やつらの会社)を生む。
社員が社会人として倫理と清廉潔白さを備え、企業理念を体現することを欧米ではインテグリティーという。この夏ヒューレット・パッカードで、業績急回復の立役者であったCEOが、セクシュアル・ハラスメント(性的嫌がらせ)の調査をきっかけに辞任した。米国の優良企業にとっては、経営者のインテグリティーは言い訳無用なのである。
企業に限らずどの組織にもインテグリティーは重要である。今の政府を見ると行政の中でインテグリティーの中核をなすべき法務大臣が、あまりにも軽すぎる発言で辞任に追いやられた。今に始まったことではないが、政府のインテグリティーへの意識の低さには驚かされる。(六菖)
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「経済気象台」は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。