来年3月の本体工事着工が危ぶまれている上野原市の新市立病院建設を巡り、地元の上野原医師会(渡部一雄会長)が、医師でもある江口英雄市長から要請されている面談の日程調整の交渉を打ち切るという。しかし、医師会が理由に挙げる江口市長の言動に不信感が募るのなら、面談して主張するのが筋ではないだろうか。生命を守る医師として、より良い病院にしたい理念は同じなのだから。
医師会は1日に江口市長に提出した文書で「市長の公的な発言などに多くの矛盾が認められ、口頭でのやりとりは問題がある」などとして不信感をあらわにし、「市長による侮辱行為について、我々の名誉を回復するため、記者会見での謝罪を求める」と主張した。文面から確執がありありと伝わるが、両者は医師であり、新病院のあり方に不満があるなら、専門家同士が議論するのが良いだろう。
そもそも面談が必要なのは、前段の造成工事が地権者の上野原土地改良区の反対で着工できず、同意条件として市長と医師会の「和解」を挙げたため。改良区理事長は奈良明彦前市長で、引退した09年市長選で、江口市長を後継者としなかった。
関係者は早急に話し合いのテーブルにつくべきだ。市民不在の迷走劇に「喝」を入れたいのは私だけだろうか。【富士吉田通信部・福沢光一】
毎日新聞 2010年12月14日 地方版