2010年12月14日8時0分
服役中の受刑者の選挙権を認めない公職選挙法11条の規定は憲法に反するとして、元受刑者の男性(66)=大阪市=が17日にも、国を相手に11条が違憲であることの確認などを求める訴訟を大阪地裁に起こす。男性の代理人の大川一夫弁護士(元大阪弁護士会副会長)によると、受刑者の選挙参加を求めて11条の違憲性を問う訴訟は初めてという。
公選法をめぐっては、在外邦人の選挙権をめぐる訴訟で2005年9月の最高裁判決が「選挙の公正を害する行為をした者らの選挙権について一定の制限をすることは別として、国民の選挙権を制限するのは原則として許されない」との判断を示している。
大川弁護士によると、男性は西成区内で労働者の支援活動などに従事していた09年10月、道交法違反罪で懲役2カ月の実刑が確定。執行猶予が取り消された別の事件の懲役と合わせ、今年3月〜11月に滋賀刑務所(大津市)で服役した。男性は7月の参院選の際、刑務所内から西成区選挙管理委員会に手紙で投票の意向を伝えたが、11条の規定を理由に「受刑者の投票は認められない」とする回答が届いたという。
これに対し男性側は「憲法44条は人種・信条・性別・社会的身分などによって国政選挙の選挙人資格を差別してはならないと定めており、公選法11条はこの規定に反する」と指摘。国は05年の最高裁判決後も違憲状態を放置したなどとして、(1)11条の違憲確認(2)参院選に投票できなかったことで受けた精神的苦痛に対する慰謝料100万円の支払い――を求めるとしている。
法務省の担当者は朝日新聞の取材に「コメントする立場にない」と話している。(阪本輝昭)