コンピューターシミュレーションの結果を基に、捕集材1本の長さは60メートル、係留間隔は8メートルとした。捕集材が海水と接する面積が増えたことと、海水の温度がむつ市沖合よりも高いことにより、ウランの捕集量は約3倍に向上した。
プランクトンなどの海洋生物は海水の温度が低ければ低いほど豊富だ。そのため、沖縄の海よりも青森の海の方がプランクトンなどの微生物が捕集材に付着しやすく、それが邪魔になって捕集機能の低下につながっていたのである。
「捕集能力を最も発揮できるのは、海水の温度が27〜30度のところだ。今後、沖縄の海に捕集材の設置場所を確保していきたい」と瀬古氏は意気込む。
瀬古氏の試算によれば、捕集材1本の長さを60メートルとして、1回の係留期間を60日、年5回係留、捕集材1キログラム当たりのウラン回収量を2グラムと想定した場合、深さ100メートルの海底に少なくとも173万本係留することによって年間1200トンのウランが捕集できるという。
耐久性向上が今後の課題
今後の課題は、ウランのみを集められる材料の研究開発と、捕集材の耐久性の向上だ。
捕集材は繰り返し使えば使うほど1回当たりのコストを低減することができる。しかし、ウラン回収の際に使う溶剤や海水に含まれる各種成分、海洋生物の付着などによって、どうしても捕集能力が低下してしまう。これまでの海洋試験での再利用は2回が限度だった。この場合、ウランを1キログラム捕集するのに21万円のコストがかかってしまっている。
仮に、捕集材1キログラム当たりのウラン回収量が4グラムまで増え、再利用回数を8回にできれば、1キログラムを捕集するコストは3万2000円まで下がる。18回にできれば、2万5000円に軽減できると瀬古氏は見ている。