「日本キラピカ大作戦」

日本キラピカ大作戦

2010年12月14日(火)

ホントに海水からウランが取れた

「わかめ型捕集材」でブレークスルー、レアメタルも対象に

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 コンピューターシミュレーションの結果を基に、捕集材1本の長さは60メートル、係留間隔は8メートルとした。捕集材が海水と接する面積が増えたことと、海水の温度がむつ市沖合よりも高いことにより、ウランの捕集量は約3倍に向上した。

瀬古氏らが開発した捕集材(右)。海に沈めたモール状捕集材(左下)にはウランのほかバナジウムや鉄、ニッケル、コバルトなどがついている。左上はむつ市沖合で実験した布状の捕集材
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 プランクトンなどの海洋生物は海水の温度が低ければ低いほど豊富だ。そのため、沖縄の海よりも青森の海の方がプランクトンなどの微生物が捕集材に付着しやすく、それが邪魔になって捕集機能の低下につながっていたのである。

 「捕集能力を最も発揮できるのは、海水の温度が27〜30度のところだ。今後、沖縄の海に捕集材の設置場所を確保していきたい」と瀬古氏は意気込む。

 瀬古氏の試算によれば、捕集材1本の長さを60メートルとして、1回の係留期間を60日、年5回係留、捕集材1キログラム当たりのウラン回収量を2グラムと想定した場合、深さ100メートルの海底に少なくとも173万本係留することによって年間1200トンのウランが捕集できるという。

耐久性向上が今後の課題

 今後の課題は、ウランのみを集められる材料の研究開発と、捕集材の耐久性の向上だ。

 捕集材は繰り返し使えば使うほど1回当たりのコストを低減することができる。しかし、ウラン回収の際に使う溶剤や海水に含まれる各種成分、海洋生物の付着などによって、どうしても捕集能力が低下してしまう。これまでの海洋試験での再利用は2回が限度だった。この場合、ウランを1キログラム捕集するのに21万円のコストがかかってしまっている。

 仮に、捕集材1キログラム当たりのウラン回収量が4グラムまで増え、再利用回数を8回にできれば、1キログラムを捕集するコストは3万2000円まで下がる。18回にできれば、2万5000円に軽減できると瀬古氏は見ている。





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著者プロフィール

山田 久美(やまだ・くみ)

 フリーライター。都市銀行システム開発部を経てフリーに転身。月刊誌やウェブサイトでハードウエア、ソフトウエアのレビュー、IT関連の記事を多数執筆。2005年3月に技術経営(MOT)修士取得。現在はサイエンス&テクノロジー関連、技術経営関連の記事を中心に、執筆活動を行っている。研究者の研究内容を聞くのが最もワクワクする時間。希望ある未来社会を実現するためのサイエンス&テクノロジーの追求をライフワークにしている。Twitterアカウントはこちら


このコラムについて

日本キラピカ大作戦

 日本はCO2排出量の削減や高齢化、需要不足など、大きな課題に直面している。そのため、日本全体に閉塞感が漂い、希望ある未来社会が描きづらくなっている。しかし、これらの課題はいずれ世界のすべての国が直面するものでもあり、今の日本を「課題先進国」と位置づけることもできる。
 「これは日本にとって千載一遇のチャンスである」と言う東京大学総長室顧問で三菱総合研究所理事長の小宮山宏氏のインタビューを皮切りに、日本が世界をリードできる技術の最先端や“産声”を追う。エコ、スマート、シルバー…。日本にはサステナブルな社会を実現するためのピカイチ技術がたくさんある。これを存分に生かして、キラキラと輝く未来を創り出そう。

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