「日本キラピカ大作戦」

日本キラピカ大作戦

2010年12月14日(火)

ホントに海水からウランが取れた

「わかめ型捕集材」でブレークスルー、レアメタルも対象に

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 海水には77種類の元素が溶存しており、チタンやリチウム、コバルト、バナジウムなどレアメタルも多数存在する。中でもウランは、鉱山ウランの埋蔵量の実に1000倍に匹敵する量が存在すると推定されている。

 各国による原子力発電所の開発ラッシュが続く一方で、鉱山ウランの枯渇が危惧される中、約30年前から、海水ウランの捕集技術の研究開発に取り組んでいる機関がある。日本原子力研究開発機構(JAEA)の高崎量子応用研究所だ。

 45億トン。これは地球上のすべての海水中に溶存していると推定されるウランの量だ。今後、採掘可能と推定される鉱山ウランの埋蔵量の実に1000倍に匹敵する。ウランは原子力発電所の燃料として使われている。海水中のウランは、世界の原子力発電所で1年間に消費されているウランの約6万倍に相当する計算となる。

 ウランだけではない。海水には全元素の約7割に当たる77種類の元素が含まれており、低濃度ではあるものの、チタンやリチウム、コバルト、バナジウムなどレアメタルも多数存在する。

 ここで、希望の光が見えてくる。多くの資源を輸入に頼っており、「資源小国」と言われる日本だが、四方を海に囲まれ、世界第6位を誇る200海里という広い領海を持っている。世界各国が資源戦略を強化する中、これまで輸入に頼っていた資源を部分的にでも領海から採取できれば、海外への依存度を軽減できるのではないか――。

日本近海に年間520万トン

 実は、約30年前から、海水ウランの捕集技術の研究開発に取り組んでいる機関がある。日本原子力研究開発機構(JAEA)の高崎量子応用研究所だ。

日本原子力研究開発機構(JAEA)・高崎量子応用研究所の瀬古典明研究主幹

 同研究所の瀬古典明研究主幹は語る。「黒潮によって日本近海に運ばれてくるウランの量は年間520万トンと試算される。このうちのたった0.2%の約1万トンを捕集できれば、日本の年間需要量である8000トンをまかなうことができる。それ以上捕集することも、技術的には十分可能だ」。

 しかも、海底の岩盤表面には海水ウランの溶存量の1000倍以上が存在しており、仮に毎年海水からウランを捕集したとしても、岩盤からの浸出によって溶存濃度は一定に保たれるという。

 瀬古氏らが長年にわたり試行錯誤を続けているのが、海水ウランを安価で効率的に捕集するための捕集材と捕集システムの開発だ。

 捕集材はポリエチレンをベースに作られている。ポリエチレンとは2つの炭素と4つの水素で構成されるエチレンがチェーンのようにつながった繊維素材だ。この炭素の部分に放射線を照射すると炭素はほかの分子と結合しやすくなる。そこに、ある化学薬品を加え、海水ウランを吸着する性質を持つ「アミドキシム基」と呼ばれる“手”を付けてやるのだ。





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著者プロフィール

山田 久美(やまだ・くみ)

 フリーライター。都市銀行システム開発部を経てフリーに転身。月刊誌やウェブサイトでハードウエア、ソフトウエアのレビュー、IT関連の記事を多数執筆。2005年3月に技術経営(MOT)修士取得。現在はサイエンス&テクノロジー関連、技術経営関連の記事を中心に、執筆活動を行っている。研究者の研究内容を聞くのが最もワクワクする時間。希望ある未来社会を実現するためのサイエンス&テクノロジーの追求をライフワークにしている。Twitterアカウントはこちら


このコラムについて

日本キラピカ大作戦

 日本はCO2排出量の削減や高齢化、需要不足など、大きな課題に直面している。そのため、日本全体に閉塞感が漂い、希望ある未来社会が描きづらくなっている。しかし、これらの課題はいずれ世界のすべての国が直面するものでもあり、今の日本を「課題先進国」と位置づけることもできる。
 「これは日本にとって千載一遇のチャンスである」と言う東京大学総長室顧問で三菱総合研究所理事長の小宮山宏氏のインタビューを皮切りに、日本が世界をリードできる技術の最先端や“産声”を追う。エコ、スマート、シルバー…。日本にはサステナブルな社会を実現するためのピカイチ技術がたくさんある。これを存分に生かして、キラキラと輝く未来を創り出そう。

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