二十歳の恋/アントワーヌとコレット
出演:ジャン=ピエール・レオー/マリー・フランス・ピジェ
さて、これは、13歳だったアントワーヌが、20歳になった、という設定のお話。5ヶ国のオムニバス映画で、日本編はかの東京都知事石原慎太郎も出てたらしい。らしい、というのは、どうも日本編だけフィルムが行方不明なのだそうだ。なんてこったい。慎太郎が政治団体に圧力かけて世に出さないようにしてるという説あり(ねーよ、そんな説!)。
無駄話はさておき、これも、トリュフォーの実際にあった初恋(?)話が元ネタ。シネマクラブに通いつめてたトリュフォーが、ある日、一人の女子学生に恋をした。いつも彼女のことばかり考えて、とうとう、彼女の家の近所に移り住んだという。でもトリュフォー曰く「彼女は僕をちょっとうるさいイトコぐらいにしか思ってくれなかった」そうで、思いつめた彼は手首を切って自殺未遂を図ったらしい。バカである。しかしただでは起きないのが、トリュフォーのいいところ。彼は、かつて、仲間の一人が失恋をしたときにこう言ったそうだ。
「失恋したら、その話を映画にして撮れば、痛手なんて吹っ飛ぶさ!」(そう言われたピエール・グランブラが一念発起して撮った映画が、ゲンスブールとバーキンを結ぶキッカケとなった『スローガン』である)
映画人トリュフォーらしい考え方である。人生これ、みな映画のネタ。ネタ。ネタ。そういうことらしい。
当然、トリュフォーは、このエピソードをちょいとアレンジし、アントワーヌの二十歳の青春を撮りあげた。あ、ちなみに、アントワーヌの部屋に貼ってある『大人は判ってくれない』のポスターは、日本公開時に野口久光が描いたものをトリュフォーが気に入って使ったのだそうだ。
しっかし、好きな女の子の家の向かいに引っ越したりして。かなり今でいうストーキング体質。しかも、どうも彼女の方は素っ気無いのだ。彼女の両親とはとっても仲良くなったのに・・・。
アントワーヌの物語は、この後、『夜霧の恋人たち』『家庭』『逃げ去る恋』へと続いていくのだけれど、同じ役者が、一つのキャラを永年に渡って撮り続ける、というのは、とても稀なことらしい。『北の国から』のじゅんとほたるもびっくりでしょう。
一番最初の『大人は判ってくれない』から比べると、徐々に、アントワーヌのキャラが軌道修正された模様が見て取れると思う。どんどんバカ&ダメ男になっていくのよね・・・。でもそこが憎めないの。最初はトリュフォーの子供時代、といった感じだったけど、だんだん、ジャン=ピエール・レオーという役者との共同製作品のような、二人がミックスされたキャラになっていったのね。そこがまた、アントワーヌ、という役の魅力でもあるんだけど・・・。
愛すべき存在、アントワーヌ。二十歳の恋は苦かったけど、でもでも、きっとけっして無駄じゃないぞ!そう励ましたくなるのだ。頑張れ!アントワーヌ!だって君の物語はまだまだ続くんだから。