鹿児島市でお年寄りの夫婦が殺害された事件で、強盗殺人などの罪に問われ死刑を求刑された被告に、鹿児島地方裁判所は無罪を言い渡しました。殺人事件の裁判員裁判で無罪の判断が示されたのは、初めてです。
この事件は去年6月、鹿児島市の住宅で藏ノ下忠さん(91)と妻のハツエさん(87)がスコップで頭などを殴られ、殺害されたものです。無職の白濱政廣被告(71)が強盗殺人などの罪に問われ、被告は一貫して無罪を主張しました。検察は「現場に残された指紋などが被告のものと一致し、カネ目当てに住宅に侵入して夫婦を殺害したのは明らかだ」として、裁判員裁判では初めて、無罪を主張する被告に死刑を求刑していました。判決で鹿児島地方裁判所の平島正道裁判長は、冒頭で無罪を言い渡しました。そして平島裁判長は「この事件は犯人像があいまいで、検察官が有罪の根拠としている状況証拠は慎重に判断しなければならない」と述べました。そのうえで、現場の割れた窓ガラスから被告の指紋が検出されたことについて「犯行当時についたものとは断定できないうえ、一部のガラスにしか残っていなかったのは不自然だ」と指摘して、検察の主張を退けました。殺人事件の裁判員裁判で無罪の判断が示されたのは初めてです。判決の言い渡しは裁判員の1人が交通事情で遅れてきたため、予定より40分余り遅れて始まりました。判決について、鹿児島県警察本部の笠原俊彦本部長は「亡くなられたお二人をはじめ、遺族の方々に対しては改めてお悔やみを申し上げたい。警察としては、検察庁と協議、協力のもと、犯罪の立証に向けて適正、妥当な捜査を遂げたものと考えているが、今回の判決についてはコメントを差し控えたい」としています。判決について、法務大臣を兼務する仙谷官房長官は、記者会見で「判決がどのような内容なのか聞いておらず、今の段階ではコメントを差し控えたい」と述べました。