判決“十分な捜査したか疑問”
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判決“十分な捜査したか疑問”

12月10日 17時40分 twitterでつぶやく(クリックするとNHKサイトを離れます)

鹿児島市でお年寄りの夫婦が殺害された事件で、鹿児島地方裁判所は、死刑を求刑された被告に対し、「真相解明のために十分な捜査が行われたのか疑問で、犯人とは認められない」と指摘し、無罪を言い渡しました。殺人事件の裁判員裁判で無罪が言い渡されたのは初めてです。

無罪判決を受けたのは、無職の白濱政廣さん(71)です。去年6月、鹿児島市の住宅で藏ノ下忠さん(91)と妻のハツエさん(87)がスコップで頭などを殴られ、殺害された事件で、強盗殺人などの罪に問われていました。裁判で、検察は「現場に残された指紋などが被告のものと一致しており、金目当てに住宅に侵入し、夫婦を殺害した」として、被告が無罪を主張する裁判員裁判で初めて死刑を求刑しました。これに対し、被告は「現場に行ったことがなく、被害者も知らない。指紋などはねつ造されたものだ」などとして、一貫して無罪を主張しました。判決で鹿児島地方裁判所の平島正道裁判長は、法廷に立った被告に「白濱政廣さんですね」と「さん」付けで声をかけたあと、無罪を言い渡しました。このとき、被告は、一度大きく呼吸をし、裁判長に促されて席に座ったあと、判決をじっと聞いていました。判決で、平島裁判長は「この事件では、住宅への侵入方法や犯行の目的など、検察が主張する重要な部分について疑問があり、犯人像があいまいなため、限られた証拠で慎重に検討せざるをえない」と述べました。そのうえで、窓ガラスやタンスから被告の指紋などが見つかったという検察の主張について「指紋などが一部の範囲にしか残っていなかったのは不自然で、犯行当時に付いたものとは断定できない。被告が過去に窓ガラスやタンスに触ったと認められるにすぎず、『窓ガラスを割って侵入し、夫婦を殺害した際に室内を物色した』とする検察の主張には合理的な疑いがある」と指摘しました。さらに「指紋などがねつ造されたとまでは言えないが、現場には被告以外の第三者の指紋などが存在する可能性があり、警察による現場の保存のしかたが完璧だったのか、真相解明のための捜査が十分に行われたのか疑問だ。凶器とされたスコップから被告の指紋が検出されていないなど、被告の関与を否定する事情が数多くあって犯人と認めるには遠く及ばない。『疑わしきは被告人の利益に』という刑事裁判の原則に照らして、被告を犯人とすることは許されない」と判断しました。殺人事件の裁判員裁判で無罪が言い渡されたのは初めてです。