ここから本文です
最終更新:2010年12月10日(金) 20時12分

死刑求刑に無罪判決、裁判員裁判で初

動画を他のプレイヤーで見る


 裁判長は「疑わしきは被告人の利益に」と述べて判決を締めくくりました。鹿児島市で高齢の夫婦が殺害された強盗殺人事件の裁判員裁判で、鹿児島地裁は死刑が求刑されていた被告に無罪を言い渡しました。

 「やったーと思いました。出たと思いました。自分の本心は無罪を確信していました。ずっと」(無罪判決を受けた白浜政廣さん)

 逮捕からおよそ1年半ぶりに自由の身となった白浜政廣さん(71)。

 「いま本当にこの青空と同じすがすがしい気持ちです」(白浜政廣さん)

 この事件は去年6月、鹿児島市の民家で、藏ノ下忠さん(当時91)と妻のハツエさん(当時87)が殺害されたものです。白浜さんは金品を奪う目的でこの家に侵入し2人をスコップで殺害したとして、強盗殺人などの罪に問われましたが、「夫婦と面識はなく、現場に行ったこともない」と無罪を主張。

 一方、検察側は、タンスなどから見つかった「指紋」5つと手のひらの「掌紋」6つ、そしてDNAの型が白浜さんのものと一致したことを根拠に、死刑を求刑しました。

 今週、鹿児島拘置支所でJNNの取材に応じた白浜さんは、落ち着いた表情で「無罪判決は間違いないから何とも思っていない。冷静沈着、自然体」と述べていました。

 そして10日・・・
 「無罪です。被告人は無罪です」(記者)

 平島正道裁判長は、DNAと指紋、掌紋について、弁護側が主張した「転写」などによるねつ造の可能性は否定。その上で「被告が、指紋や掌紋が付いていた場所を触った事実は動かない。しかし過去に触ったことがあると推認できるにとどまる」と述べ、さらに、「スコップから被告の痕跡が検出されていない。アリバイを裏付ける証拠はないものの、被告が犯人と推認させる事情ではない。本件の状況証拠をもって犯人と認定することは『疑わしきは被告人の利益に』という原則に照らして許されない」と述べました。

 白浜さんと一緒に住んでいた姉は、自宅で一報を待ちました。白浜さんは1年以上にわたって拘束された拘置所を後にしました。

 「私の濡れ衣を晴らすことができて誠にうれしい気持ちです」(無罪判決を受けた白浜政廣さん)

Q.今の裁判員制度はいい方向にいっていると?
 「私はいいと思います。それで無罪を早く頂けたんじゃないか」(白浜政廣さん)

 「おかえり、おかえり」(白浜さんの姉)
 「心配かけたね」(白浜政廣さん)

 一方、裁判員は記者会見で「遺族のことを思うとつらいが、中立な立場で判断した」などと話しました。死刑が求刑された裁判員裁判では初めての無罪。鹿児島地検は控訴するかどうかを含め、対応を検討するとしています。(10日17:57)

2010年12月10日(金)のニュース一覧

社会

政治