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[24887] 【習作】鏡合わせの多重世界《多重クロス 仮面ライダー龍騎 魔法少女リリカルなのは プリズマ☆イリヤ Fate/Extra Fate/stay night カンピオーネ! いぬかみっ! 仮面ライダーW etc》
Name: ryuki555◆740bdb90 ID:5faabe4b
Date: 2010/12/13 10:51
気が付くと、そこは見知らぬ多重クロスの世界だった。ファング・テスタロッサとなった彼は仮面ライダーナイトのカードデッキとデバイス・バルディシュツヴァイを手に様々な厄介事に巻き込まれていく。


にじファンに投稿しているモノをこちらにも投稿を始めました。


現在クロスしている主な原作は以下の内容です。

仮面ライダー龍騎 魔法少女リリカルなのは プリズマ☆イリヤ Fate/Extra Fate/stay night カンピオーネ! いぬかみっ! 仮面ライダーW




[24887] 第一話『Stat up,Alive A Life』
Name: ryuki555◆740bdb90 ID:5faabe4b
Date: 2010/12/13 20:49
……ここはどこだ?


「ようやく起動したか、――いや、ここは目覚めたと言った方がいいな。どうやら○○○○女史の調整は完璧らしい。お前の誕生を祝福しよう茨姫の騎士、そしてこの多重投影された世界の焦点となる存在」


意識がはっきりしない。自分が何で目の前の男が何なのか、何を言っているのかまるで理解が出来なかった。


「これからお前は様々な人物に会い、様々な出来事に遭遇し、数多の危機に晒されるだろう。だが安心しろ。抗う術は最初から用意されている」


男は、懐から黒い小さなケースの様な物を取りだす。


「かつて俺の代理人であるオーディンに勝利し、戦いの勝者となった男が使っていた物だ。それと……」


男はケースと共に、逆三角の形をした金のペンダントを渡してきた。


「女史からの餞別だ。超多機能型デバイス、バルディッシュⅡ(ツヴァイ)。使いこなせれば必ずお前の役に立つ」


デバイス、バルディッシュなどと、どこかで聞いた事のある単語が耳を通り抜けていったが、未だに意識は朦朧としており深く考える事ができずに終わる。


「では、始まりとしよう。簡単な事だ。戦って生き残ればいい。今回はバトルロワイヤルというわけでもないからな」


アンタは誰……なんだ?


「俺の名は神埼士朗。別に覚えないくていい、――ただの亡霊だ」


そこでまた、俺の意識は完全に途絶えた。
――――――――――――――――――――――――、、



「これで準備は完了したか。そちらの調子はどうだ」


神埼士朗と名乗った男は何も存在しない空間の中で確かにそう呟いた。


「私の方は万端よ。アレも貴方があの子と一緒に送りだしてくれたし。ソッチこそ、あなたの妹さんを守る手段は整っているの?」


何もなかったソコに一人の女性が突然現れる。だが神埼は当たり前のように会話を続けた。


「問題ない。優衣の護りは幾重にも張り巡らされている。それにもしも時の為に貴様にアレが託してあるからな」


「分かったわ。――それにしても私達が舞台裏に隠れている必要が本当にあるのかしら? 私としてはあの子と一緒に……」


「駄目だ。いつ嗅ぎつけられるか分からない。貴様の話に出てきた管理局というのものが無能という訳ではないだろう。万が一、この世界が管理局の様な外部の存在に発見されたとしてもカラクリさえ分からなければ問題はない。しかしこの世界の違和感と私達の存在が露呈してはバレる可能性が出てくる」


「……分かったわ。あの子の存在をアレとあなたの妹に任せるのは甚だ不本意だけれど。いざとなれば貴方がくれた奥の手があるから大丈夫でしょう」


「では改めて始めよう。この世界を……」


神埼士朗は宣言すると、まるで蜃気楼のようにその場から姿を消した。



鏡合わせの多重世界 第一話『Stat up,Alive A Life』



……3か月後

おっすオラ、ファング・テスタロッサ11歳(とかいうアリシア・テスタロッサの兄貴に憑依した一般ピーポー)。自分自身のエピソード記憶が一切思い出せないうえ、何故かバルデッシュ・ツヴァイとかいうデバイスと仮面ライダーナイトのデッキケースの本物が手元にあってオラ、ワクワクしてきたぞ、体も震えてるぞ。←明らかに恐怖からくる震えです。本当にありがとうございました。


3か月前、目が覚めるとファング・テスタロッサと言う名の存在になっていたあげく、妹がアリシア・テスタロッサで俺と彼女の保護者は神埼優衣。最初は誰?と思ったが、手元にあったナイトのカートデッキ(最初はおもちゃかと思ったが2カ月前にミラーモンスターと対峙し、本物だという事を充分に思い知った一品)と見比べた後、仮面ライダー龍騎に出てきた黒幕の妹だという事に気がついた。というかどうなってるのこの世界と調べてみると……カオス。俺達、兄妹の両親は他界しており、その折に遠縁だった神埼優衣さんに引き取られたという事になってる。ここで既に突っ込みどころ満載だが、事実なので良しとする。

だが、旅行代理店のパンフに冬木とか風都とかあるのはどうよ。ウインドスケールというブランドが大流行してるとかテレビの特集やってたし。バルディッシュ使って裏の情報まで収集してみれば犬神使い、カンピオ―ネ、ガイアメモリ、魔法使い、魔術師なんて単語が出てきて……。これなんて多重クロスというレベルである。


だいたい、何でアリシアが生きてるの? 何でアリシアの兄貴なんているの? なんで保護者が神埼優衣なの? それにカードデッキとデバイスから考えて、居るんだろ神埼士朗とプレシア・テスタロッサが。 なんで姿を現さない? とにかく疑問が尽きないが分かる事は一つだけある。現状の自分の状況では……。


「戦わなければ生き残れない……ってか。本当に冗談きついっての」


現在、ファングはミラーモンスターから逃走していた。ここ一カ月の経験から分かった事はミラーモンスターがファングを優先的に狙ってくるという有り難くない事実。ファングとしてもさっさと戦闘に移行したかったが人混みが酷く、このままでは変身できない。そこで人気のない所までミラーモンスターを誘導している最中という所であった。


『マスター、前方20メートルに存在する公園は現在無人です』

「よっしゃ、分かった」

ツヴァイのアナウンスに従い、公園に入るとファングはナイトのカードデッキを取りだし公園内の池の前ですぐさまかざす。すると湖面に映った自分の姿にVバックルが投影され、現実の自分にも反映された。ファングはVバックルにデッキを差し込むとお約束と言わんばかりに叫んだ。


「変身!!」


虚像の鎧に身を包み、ファングは吸い込まれるように池の中に消えた。


「よっと、鏡面世界に到着。いつ見ても左右逆ってのは不思議な感じだな。ツヴァイ、敵の位置は?」


確かに此方を追いかけてきたミラーモンスターが視界の内にいないのを確認した後、ファングはツヴァイに敵の位置を尋ねた。


『サーチ……、敵の位置は直上、約100メートルです』


「おおっと! 上か!!」


顔を上に向けると、遥か上空に蜂の様なミラーモンスターが確かに存在した。

ファングはバックルには填ったデッキケースからカードを一枚取り出すと、召喚機、翼召剣ダークバイザーの翼の形をしたバイザー部を展開し柄の部分にカードを挿入する。


『アドベント』


バルディッシュ・ツヴァイとはまた違う無機質な声がダークバイザーより発せられ、その声に呼ばれたかのようにどこからともなく巨大でコウモリの様な異形が姿を現わす。


「来い、ダークウィング。合体だ!! なーんつって」


闇の翼ダークウィングをアドベントカードで呼ぶと、ファングは合体を要請し、ナイトは飛行可能状態になった。

今のファングはどちらかといえば戦いを楽しんでいた。確かにミラーモンスターが毎日のように襲ってきているが苦戦する様なモンスターは現れず、他のライダーも出現しない為、最初はおっかなびっくりで戦っていたファングも次第にノリノリで戦うようになったのだ。

自分がファング・テスタロッサなんて人間じゃなかったという事や自分が今いる世界が自分の居た世界でない事が分かっても自分自身が何者であったかはごっそりと欠落していたが、それでもファングの中の人は仮面ライダーが好きな事をおぼろげながら覚えているようで本人的には超絶リアル(というか現実)な仮面ライダーごっこができて満足等と言う事を考えていた。ただし毎日、ミラーモンスターに付け狙われてストレスが溜まってきているのも事実ではあるが。


「来いよデカブツ、俺はここだぞ」


ファングは上空へと飛翔すると、ミラーモンスターは当然の如くファングに向かってきた。だがファングは臆することなくバイザーにカードをベントインする。


『トリックベント』


シャドーイリュージョンの発動により、ナイトは無数に分身した。ミラーモンスターはどれが本体か分からないらしく、手あたりしだにナイトの分身に攻撃していく。しかし闇雲な攻撃では本体に攻撃が当たる事はなく、ミラーモンスターはファングの目論見通り翻弄される。そして……


「本物は上だよ。――だけどもう遅い。残念ながら俺は仮面ライダー兼魔導師なんでな! バルディッシュ、パイルバインド発動!!」


『了解、パイルバインド発動』


ミラーモンスターの遥か上空に移動していたファングの片腕には本来仮面ライダーナイトが持ちえない物が存在していた。黒鉄のボディを輝かせ、所々に金のラインが通ったそれは超大型回転式拳銃、S&W、M500のハンター・マグナムリボルバーに酷似している。

バルディッシュモードハンター。多機能型デバイスであるツヴァイに用意された変形形態の一つで、遠距離中距離での高速戦闘に適した形態である。リボルバー部にはカートリッジシステムとしても機能する他、術式込めた弾丸を発射する事で詠唱なしで魔法を発動することもできるのだ


ファングは拳銃状態のツヴァイからパイルバインドを発動。矢のような形をした金のエネルギー弾は真下にいたミラーモンスターに貫通し、そのまま地面に縫い止め、拘束する。そして動けなくなったところでファングはトドメの一撃を決め
に入った。


『ファイナルベント』


ツヴァイを待機状態に戻し、ダークバイザーを腰にマウントすると虚空より出現したウィングランサーを両手で掴み、下向きに構える。ランサーを中心として背中のマントが螺旋状に形を変え、そのまま地面に縫いつけられたミラーモンスターに上空から突貫した。


「ダッシャぁぁぁあああ!!」


文字通りの必殺の一撃が蜂型のミラーモンスターを容易く貫き、爆散に至らしめた。散って行ったモンスターの欠片は吸い寄せらる様に契約モンスターに吸収されていく。


「これで50体目、それなりに使いこなせてきたか?」


『いいえ、現在のマスターはナイトの力の6割程度しか引き出していません。ですがチュートリアルはこの程度で良いと判断、第二段階への移行を決定……移行開始』


チュートリアル? 第二段階? 何の事だ?

そうこう混乱している内にツヴァイから俺に情報が流れ込んでくる。

《カードデッキシステムとデバイス、バルディッシュ・ツヴァイに関して。カードシステムはライダーバトル時のモノから改良がなされており。ミラーワールドでの活動可能時間の大幅延長、現実世界での活動も装着者の魔力で補う事により数十分間可能、ただし変身は特定空間、条件下を除き従来通り鏡面が存在する所でしか不可能。ミラーワールドとの出入りに関しては鏡がある場所ならば入口が出口が別でも可能。また現在の状態ではサバイブは不可能だが、仮面ライダーナイトに変身した状態でバルディシュの使用や魔法障壁の展開に魔道力によるダークウィングなしの飛翔も可能。さらにetc,etc》


(何だよこの情報は! つまりツヴァイは最初からライダーシステムと連動での使用が考えられているってことか!! つまり黒幕はやっぱり神埼士朗とプレシア・テスタロッサで二人がグルって可能性が大な訳だ。しかも頭に流れてきた情報が正しいなら今まで襲ってきたミラーモンスターは俺の訓練用に送られてきたものでそれ以外はミラーワールドにモンスターもライダーもいないってどうよ。しかもダークウイングの餌は契約者の魔力で代替可能とか一体どうなってんだ!?)


『これからのマスターへの指令は、ライダーシステムとは別にミラーワールドに似た鏡面世界で活動可能な冬木のカレイドライナー達のサーヴァントカード回収活動の監視、及びイレギャラーが発生した場合の排除です』


「何それ冬木にカレイドライナーって! それに指令って? 一体どこからよ?」


『現状では私に回答する権利は与えられません』


「……あぁ、そう。で、どうやって冬木まで移動するの? 今住んでるの関東あたりで新幹線でも2.3時間かかるんだが? 転移魔法? まさかライトシュータ―じゃないだろうな」


『いいえ、移動面に関しては問題ありません。自宅に帰れば分かります』


「何だよ、ソレ?」





――帰宅後



「えっ! アリシア、お兄ちゃんちょっと耳がおかしくなったみたい。もう一度言ってくれない。ワンモアプリーズ、ワンモア」


「だぁーかーらぁ、引越しするんだって。優衣おねーちゃんが言うには今住んでるマンションは三人暮らしするには狭いから、優衣おねーちゃんの死んだおにーさんが住んでた冬木の家に引っ越すんだって」


引越しする! 重要な事なので二回言われました。つーか小1なのに活絶よすぎなこの方は我が妹、アリシア・テスタロッサ。事故で両親を俺と同じく亡くしたが、事故に巻き込めれた時のショックで両親に関する記憶を失い、あまり実感がわかない少女……という設定になっている。

……何というか俺自身の事や保護者の優衣さんの事を合わせるといろいろ作為的すぎる。今ある記憶(中の人のでなく、ファング・テスタロッサの中にあったモノ)は十中八九、与えれた偽りの記憶なのだろう。そしてアリシアや優衣さんの記憶も。それにしても神埼士朗が住んでた冬木の家とか、誰がどう聞いてもご都合主義のトンデモ設定だろ……。


「……どうしたのそんな難しい顔して?」


首を傾げるアリシアに俺は誤魔化しを入れると聞いておくべき事を聞いた。


「いや、何でもないって。それより引っ越していつ?」


「1週間後だよ。だからお兄ちゃんも荷造り手伝って」


俺は肯くと、アリシアを手伝って衣装ケースの中に必要ない服を畳んでいった。ちなみ現在、保護者の優衣さんは仕事中で夜の七時ぐらいまでは兄と妹だけです。マンションだからそれほど危なくないけど一戸建てではどうするんだろう?





……さらに一週間後。




「この度、隣に引っ越してきた神埼優衣です。この子達はファング・テスタロッサ君にアリシア。テスタロッサちゃん。三か月ほど前に私の家族になった大切な子達です。これ、つまらないモノですがどうぞみんなで食べてください」

「――ありがとうございます。私はこの家で使用人をしているセラと申します。隣は同じく使用人のリーゼリット。現在この家の持ち主であるアイルスフィール様と切嗣様は所要で海外に出張している為、お会いにはなる事はできませんが連絡の着き次第、報告させて頂きます」

「あ、どうぞよろしくお願いします」

カオス……!!。声には出せないがファングは恐ろしく混乱していた。何で引越し先がアイツベルン家なのかという困惑とプリズマイリヤの主人公であるイリヤや並行世界だろうと天然多重フラグメーカーの衛宮士朗の住むドリームハウスが目の前にある事の興奮が洗濯機の中身のように頭の中でグルグル回転していた。

「どうしたのセラ、リズ。お客さん?」

混乱の最中、タッタッっと軽快なリズムでフローリングを歩み音が聞こえた。それ以前にその高く通った声は……。

「お、お、お……」

「アレ? セラ、家の隣に止まってるトラックって引越しの車。という事はこの人たちは引越してきた……って。あの~キミ、なんで私の事を指さしてるのかな? それに『おっ』て……」

「欧米かぁあああああああああああ~~~」

混乱の極致から暴発したファング・テスタロッサは自分でもこの時何といったのか分からなかった。







「~~でねそのファングって子、私をことを指差していきなり『欧米かぁぁぁあああ~~』とか叫んで倒れちゃったの。変でしょお兄ちゃん。私だってハーフだけど、ファングって子もバリバリパツキンの外国人っぽい子なのに」


アイツベルン家リビング、そこでは夕食で使った食器を洗う衛宮士朗と椅子に座ってテーブルに手を預けたイリヤは先程の新しい隣人について言葉を交わしていた。本来の夕食後の家事当番はセラであったが、隣の引越しを手伝う為、甚だ不本意であったが士朗に交替を頼んだのだ。二人は知らないがセラとリーゼリットが引越しの手伝いを申し出たのは決して親切心からではなく、新たな隣人が危険ではないかという事を調べる事を目的としていた。


「さっきセラとあの神埼優衣さんって人が話してるのを聞いたけど、そのファングって子とアリシアちゃんって妹は両親はどちらも外国人だけど本人達は日本生まれの日本育ちらしい。それにそんな素振り全然見せなかったけどあの兄妹、3か月前に両親を亡くして神埼さんに引き取られたらそうだから俺達の理解が及ばないモノを抱えてるかもしれない。次会うときは気を遣って接してあげるんだぞイリヤ」

「分かった、頑張ってみる」


本人の及ばぬ所で気を遣われるファングであった……。一方その頃。


「――ふぅ、あれ程有意義な労働は久しぶりでした。家ではメイドして家事の一切を任されたこの私をさしおいてシロウが勝手やってしまいますからね。それにしてもあの家族……、訳ありのようでしたがそれでも調べてみた所、特に問題がないようです」


セラとりーゼリットはお隣の引越しを終え、帰還する最中ではあり、セラは久しぶりにメイドとして充分な仕事をこなすことができ満足しており、リーゼリットは珍しく難しい顔をしている。


「どうしたのですか、リズ? そんな顔をして」


「勘違いかもしれないけど……、あのファングって子、――私達と同じに臭いがした。というよりアイリやイリヤの方に近かったかも」

「っ!! どういう事ですか」

セラは驚きで顔を歪める。

「それだけじゃない。分かんないだけどあのアリシアって子やユイって人にも違和感を感じた」

「魔術的な面から調査しましたが何も引っ掛からなかったんですよ!」

「うん、だから勘違いかもしれないって言った。でも注意した方がいいかも」

「……分かりました念の為、警戒を怠らないようにしましょう」


そう言うと二人はアインツベルン家の中へと戻っていった。







…………………………………………………………………………………………………



Side神埼士朗

「ようやく第二段階か、それにしてもこんなものが歪みとして現れるとは因果だな」


神埼の眼に映る鏡面世界には蜃気楼の用に揺らめく黒い人型達があった。神埼の予想通りならこれらが力を取り戻し満足に活動を始めるのはちょうどカレイドライナー達の交代時のタイミングと重なる事になるだろう。


「今のアイツでは少し荷が重いか。しかし鏡の中のライダーバトル、奇しくもその再現が起きるとは全く本当に因果なモノだ」


神埼の瞳に映る者。それは仮面ライダーと呼ばれ、自らの欲望の為に命がけのバトルファイトを行ったモノの残滓であった。





[24887] 第二話『stay knight』
Name: ryuki555◆740bdb90 ID:5faabe4b
Date: 2010/12/12 09:45
『冬木市周辺に散布したサーチャーの数基から、上空で戦闘行動行っているターゲットを発見。その後、ルビー1とサイファア1はその場から契約者を置いて移動中。どうやら新たな契約者を探している模様です』


(『了解だ、ツヴァイ。引き続き監視を頼む』)


『了解しました』


冬木市の穂群原学園初等部のイリヤと同じクラスに転入して数週間後(アリシア初等部一年)。俺はツヴァイを使い、冬木全域の監視を始めていた。既にランサーとアーチャーのカードは封印指定の執行者、バゼット・フラガ・マクレミッツが回収を終え、役割は魔道元帥ゼルレッチの指示で時計塔所属の魔術師、遠坂凛とルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトに引き継がれた。

そして……

(世代交代のイベントまで来たか、でも指令にあるイレギュラーってのはそれらしいには未だに一つもないが。こっから起こりそうな気配がスゲーするな……)


「ちょっとお兄ちゃん! ちゃんと聞いてる」


ツヴァイに念話で指令を伝えた後、これからどう事態が動くか考えていた所、突然声を掛けられてファングの思考は途切れた。


「あ、アリシアか」

「アリシアか、じゃないよ! 優衣さんが忙しいから代わりに宿題の朗読を聞いてって言ったのにお兄ちゃん全然聞いてくれてない!!」


プンスカ!! という様な擬音が聞こえてきそうな様子でアリシアは怒っているが、怖くはなくむしろアリシアは怒っても可愛いな等と馬鹿な事を俺は考えていた。


「分かった。ちゃんと聞くから怒るのを止めれくれ」

そういって何とかアリシアをなだめる事に成功した俺は黙ってアリシアの朗読に聞き入った。



十数分後……



「……ところでアリシア、学校の方はどうだ」

朗読を聞き終えた後、俺はアリシアに初等部での生活を聞いてみた。


「……みんな優しいよ。でも、ちょっと気を遣われている感じがする。――お父さんとお母さんが居なくなちゃったせいだと思うけど、自分ではまだ全然実感が湧かないから」

さっきまで元気な様子から変わって、少し自嘲ぎみに笑うアリシアに俺は肩に手をやった。

「大丈夫だ。それは俺も同じだ」

数ヶ月前の事故により俺とアリシアは両親を亡くした、俺達自身は奇跡的に無傷で生還。ただ事故のショックにより両親との記憶を失ったということになっている。

しかし、俺はこの世界に目覚めたのはたった3ヶ月前と認識しており己自身が何者であったか覚えていない。少なくともファング・テスタロッサでなかったことハズなのだ。故に元の世界での知識から考えて、この世界はひどく歪に思えてくる。

アリシア・テスタロッサ、神埼優衣、最初に目覚めた時には所持していたバルデッシュ・ツヴァイというデバイスと仮面ライダーナイトのカードデッキ、俺に指令を送って何かをさせようとしている人物。

恐らく、黒幕にはプレシア・テスタロッサと神埼士朗、またはそれに近しい人物が居ると予想している。

『俺の名は○○○○。別に覚えないくていい、――ただの亡霊だ』

一瞬、覚えのない映像が頭を過ぎった。

もしかしたら俺はもう既に黒幕と接触しているのか……?


「あのね、お兄ちゃん。ずっと聞いてほしい思ってた事があるの」

その言葉に俺は意識を切り替えた。

「聞いてほしい事?」

「うん。最近ね、ずっと夢を見るの。夢とは思えないくらいリアル夢で……、私そっくりの女の子がお母さんじゃない母さんの言いつけで青い宝石を探してるの。その女の子はまるで魔法少女みたいなんだけど全然楽しいそうじゃなくて、むしろつらそうだった。お母さんに褒めてもらいたい一心で宝石を捜すんだけど、全然褒めてもらえなくて……むしろ怒らてとてもとても悲しいくて苦しいそうで。でも、それでもお母さんに昔みたいに笑って欲しくて、必死でもう一人の白い魔法少女の女の子と宝石を取りあってる……そんな不思議な夢を毎晩見てるの」

「それって……」

モロに魔法少女リリカルなのはのフェイトと事じゃねーかと心の中で呟いた。だが、これで目の前にいるアリシア・テスタロッサはフェイトやプレシアに関連があるという確証が強まった。しかし何故にそんな夢を? 何かとリンクしてるとでもいうのか? 

「やっぱり私、事故で変になっちゃったのかな?」

暗い表情でそんな事を言うアリシアに俺は軽く額にデコピンを放った。

「あう」

「いろいろネガティブに考え過ぎたつーの。確かに両親は死んじまった。しかも兄妹揃って事故の後遺症で両親の事はほとんど覚えてねぇ。けどなそれでも俺達は生きてるしこれからも生きていかなきゃならない。だったら泣いているより笑っていた方が人生楽しく生きていけるだろ。それに持ち前の明るさでみんな元気を振りまいていく姿のが方がお前らしくて俺は好きだぞ」

俺は軽くアリシアを抱き寄せる。

「えっ、ちょっとお兄ちゃん.!///」


歯の浮くような台詞で知った様な口を叩いた挙句にリア充しかできないような行動を自然と実行に移せたが、後悔は全くなかった。それに今の自分。ファング・テスタロッサはイケメンなので許してほしい。

「後、お前の見る夢ってのもちゃんと意味があると思う」

「えっ!」

「アリシアの見る夢はどこかで実際に起きてる出来事だと俺は思う。なんつーか、極めて近く限りなく遠い世界とでも言えばいいのか……、とにかくお前が夢に出てくる女の子はどこか別の世界で今も必死に戦ってるんだよ。だからお前も元気出して頑張れ、その女の子みたいに」

「ファングお兄ちゃん……」

「まぁ、頑張ってもつらい時はつらいから。そういう時は俺を頼りにしてくれ、一応これでもお前の兄貴だからな。――って、今笑っただろ。これでも真面目に話してるだが……」


クスリというアリシアの笑いに、自分の発言したクサイ台詞が若干恥かしくなったが、そんな事は次のアリシアの言葉でどうでもよくなった。


「ごめんね、お兄ちゃん。ついでにもう一つ謝ると、私……お兄ちゃんの事あんまりお兄ちゃんだと思えなかったの。お父さんとお母さんもだけど、お兄ちゃんの事も事故で記憶が曖昧になっちゃったせいかずっと違和感があって。でも今分かったよ。ファングお兄ちゃんはちゃんと私のお兄ちゃんなんだね」


アリシアは俺の背中に手を回すとギュッと力を入れて、俺を抱きしめた。

こうかはばつぐんだ、ふぁんぐはこんらんした。

「ありがとうお兄ちゃん。おかげで何か胸のモヤモヤしたものがなくなったよ。――今日、お兄ちゃんの部屋で一緒に寝てもいい?」

「ふへら?」

ついげきのいちげき。だめーじはさらにかそくする。

……結局、混乱した俺からアリシアはなし崩しに許可を取ると、就寝時間に俺の部屋に枕を持って現れた。

アリシアと手を繋いで寝た夜、俺もアリシアと同じ夢を見ることなる。何というか表現するならば劇場版NANOHA MOVIE THE FIRST、ver超リアル3Dフェイト視点みたいな感じで。

けれど起きた時、夢の中であまりにも意識がはっきりしていたせいか全然疲れが取れてなかったのがつらい。しかしそれとは逆にアリシアは朝起きて凄く元気そうだった。




鏡合わせの多重世界 第二話『stay knight』




sideイリヤ

「ふぁぁぁあああ~~」

「どうしたのファング君? そんな深い欠伸なんてして」

「いや、疲れが取れなくて。なんというか夢のせいとでも言えばいいのか」

学校に登校して1時間目の授業が始まる前の時間、私はそんな言葉からファング君との会話を始めた。

ファング・テスタロッサ。数週間前に隣に引っ越してきた不思議な同級生はいつもどこか飄々としている。

不思議と言って最初の『欧米かぁぁぁ』の台詞から予想していた電波系というか情緒不安定系でなく、なんというか得体の知れなさや、掴みどころなさが彼をそう感じさせるのだ。具体的言えばわずか数日で私がお兄ちゃんの事を好きだという事を看破したとことか。

「夢って怖い夢でもみたの?」

「違う、違う。見たのはどちらかと娯楽系の夢。けどさ、何というかあまりにもリアルな3D映画をオールナイトで見た様な感じになちゃって。おかげでしっかり寝たハズなのに寝不足状態ってわけ」


「……ごめん、なんというか想像できない」


なんでこんなにも独特な感じを漂わせる事ができるのか、何というか同年代と話してる気がまるでしない。


「それよりイリヤの方も寝不足そうだけど大丈夫なのか?」

「……うん、昨日いろいろあって。多分大丈夫だよ」


一瞬、返答に困ったが曖昧な言葉を返して誤魔化した。昨日の事はいろいろと形容しがたい。今も所持しているルビーとかいう名のパチモノイロモノ臭がする魔法少女ステッキ(自称)、魔術師を名乗る遠坂凛という人物。その二人?に散々引っ掻きまわさせたのだ。おかげで昨日、セラをなだめるのにどれだけの苦労要したことか……、それに色々考えこんだせいで夜も眠れなかったし。


「――そういえば、この学園の高等部から倫敦に留学していた遠坂凛って人が冬木に戻ってきてるらしいな」


前の席に座っているファング君は窓の方に顔を向けると、唐突に脈略のない話題を振ってき……って遠坂凛!!? なんでファング君があの人の事知ってるの? というかこの学校出身だったのか!!


「どうしてそんな事知ってるの? どこで聞いた?」


「何だ。その様子じゃ知ってるみたいだな。だけどこの噂は聞いたか? 出所は高等部からだが『遠坂凛が無理を言って倫敦から戻ってきたのは想い人である衛宮士朗に会う為だっ……』って。イリヤ、いくら驚いたからって少女漫画の驚愕した表情みたいな顔で机と椅子を揺らすのは止めた方がいいと思うぞ」


……暫く間、……具体的に言うと昼のチャイムがなるまでの間、私の記憶は遠い彼方に吹き飛んできた。

――どうやらあの遠坂凛という人とはいろいろ面でオハナシが必要らしい。






昼休み 初等部屋上

『どうしてあのように不用意な発言をしたのですか? あれではカレイドライナーであるイリヤスフィールのメンタルに多大な影響与えるだけでなく、彼女の司令塔である遠坂凛との間に亀裂を発生させかねない』

「別にいいだろ。どうせ遅かれ早かれ知る事になるだろうし。それにどういう反応するか気になったんだ」


正直な話、ファングは最初の方はイリヤに『遠坂凛と衛宮士朗の関係』を教えるつもりはなかったが、なんとなしにイリヤがそうれを聞いたら、どんな反応するかが気になったのだ。まぁ、要するに魔がさしたということである。


『その様な言い訳……』

「だいたい、ツヴァイの説明が正しいならこの世界は様々な世界が重なりあった世界なんだろ。だったらいろいろ元の本筋とは違う展開となるのも想定の範囲内だろ」

『ですが……、――マスター、新たな指令が入りました。今夜の鏡面世界での戦闘の際――――――――』

「はぁ? 何でそんな……。けどツヴァイ、どうやら俺の命令している奴はイレギュラーな展開の方がお好みらしいな」

『…………………』


ファングはそれ見たことかツヴァイに指摘すると、ツヴァイはそれから行動開始時間の前までずっと押し黙ってしまった。

それ見てファングはデバイスの癖に人間みたいな奴だと口には出さずに思った。







放課後 初等部一階

「駄目だ。お兄ちゃんと遠坂さんの関係が気になって結局午後の授業も集中できなかった。ねぇ、ルビーって遠坂さんの事どれくらい知ってるの」

授業という苦行が終わり解放された生徒達が晴れやかな顔で廊下を駆ける中、イリヤだけはどんよりした顔で下駄箱に向かっていた。

「やっと退屈なカバンの中から解放されたと思ったらその話題ですか。――生憎私は数日しか契約してなかったのでそれほど詳しい訳ではありませんが知ってる範囲でお教え致しましょう。まずプライドは滅茶苦茶高いです。ですが高慢な人間と言うわけではなく性格はかなりお人好しですね。後、金持ちの優等生の皮を被っているすが正体は守銭奴でおっちょこちょいのあかいあくまといった所でしょうか……ってイリヤさん!! なんでそんなに驚いてるのですか?」

「いや、何というかもっとこう……、おもしろおかしく遠坂さんの事を語るかと思ったら予想したより真面目で……」

「いつもの私ならそうした所ですが、一つ気になることがあって」

「気になる事……」


なんとなく神妙な雰囲気を漂わせるルビーにイリヤはゴクリと喉を鳴らした。


「あの朝に会話していたファングとかいう同級生、何者ですか?」

「何者ってただの同級生男の子で最近引っ越してきたお隣さんだよ。何もおかしいとこなんて……あっ!」

まさか、私が魔法少女(一日前から)な様にファング君も何かしら不思議な力を持っているのかもしれない。魔法少女のシュチュから考えると登場してくるライバルや敵が身近にいることなど日常茶飯事だ。むしろ、それならばあの不自然なタイミングの転入や不思議系の性格にも納得できる。ということはファング君と争ったり時に共闘しながら魔法少女としてカードやら宝石やら集めることになるのか。……何というかそういう正統派魔法少女的な展開を想像してみたところ正直胸がワクワクしてきた。


「やはりイリヤさんも心当りがありましたか。彼からは不思議な力を感じます」

「やっぱりそうなのね」

「はいそうです。――イリヤさんの魔法少女力を5とするとファング君の魔法少女力はオーバーナインサウザント。つまりゴミですね、誰とは言いませんが」

「へっ?」

イリヤは何もない所で足を取られかけバランスを崩す。今このステッキは何と言ったのだ?

「ねぇ、ちょっと混乱してて言ってる意味がヨクワカラナインデスガ?」

「ぶっちゃけ現段階ではイリヤさんよりあのファングというかたの方が魔法少女としての素養があるということですね。しかし安心してください、私の勘が正しいならイリヤさんは魔法少女としてのパワーアップを後三回は残しています。頑張ってエース級魔法少女、ストライカー級魔法少女。そして魔法戦鬼級と進化をとげれば力関係は完全に逆転することでしょう。……って聞いてるんですか?」

「えぇぇえぇ~~!! だってファング君は男の子なんだよ!! それなのになんで魔法少女の資質があるの、しかも私より」

「男の娘、おおいに結構という言葉を知りませんか? もしくはこんな可愛い子が女の子の訳がない!!――とか。イリヤさんはご存じないかもしれませんが今大きなお友達の間では男の娘は萌の最先端をいっているのです。それに萌の古典ともいえる魔法少女というジャンルがかけ合わさる事によって最強に見える。メイン盾の騎士も同じ様な事を言っていたので間違いありません」

この時のイリヤはルビーの言う事が全く理解できなかったが、少なくとも全てが間違っていることだけは分かった。

「……もう、放課後になってたった数分でどんと疲れちゃった。今日は魔法の練習止めようかな?」

「それはいけません!! 魔法少女は一日してならず――ですよ」


そんな会話続けながら下駄箱に到着したイリヤは、自分の靴箱に入っていた手紙を見て割と味のある表情をすることになる。

今夜0時 高等部の
校庭まで来るべし
来なかったら殺す
      帰ります

まさかラブレターより先に、定規で筆跡を偽装した脅迫状をもらうことなるとは……、しかも殺すって文字線引いてあるけど消えてないし。イリヤとルビーは誰か出したかというのも何いうか直感的に分かってしまった。

「帰りましょうかイリヤさん……」

「ソウダネ……」

「何事も前向きに……ですよー」

「ソウダネ……」









深夜零時頃 穂群学園高等部校庭


「――だから衛宮君とはこの穂群学園高等部で同じ学年に在籍していた時からの友人よ……今の所はね」

「何ですか今の所は……って!! お兄ちゃんとの関係にこれ以上の進展があるとでも言いたいんですか!?」

「ええい、|サーヴァント《奴隷》の分際で!! だいたいあんたは衛宮君の何だっていうのよ!」

「だから、い・も・う・と・です。 血の繋がらない義理の・い・も・う・と!!」

「何よその少女漫画とかギャルゲで使い古された設定は!! 今時はやらないのよ!!」

 深夜だというのに遠慮のない大声で二人の人物が言葉を交わしていた。ひとりは遠坂凛でもう一人はイリヤスフィール・フォン・アインツベルン。……予定調和というべきか当然の帰結というか、とにかくツヴァイの危惧の通りに論争を繰り広げることとなった。ルビーはご近所迷惑にならないように音が高等部敷地内から漏れないように防音結界を展開しつつ、二人の様子を楽しいそうに見つめていた。


「いやぁ、いつの世も一人の男を廻って争う女性達というのは見ていて飽きませんね。いいぞ~、もっとやれ~」


そんな当事者同士以外は割とどうでもいい争いは新たな乱入者により唐突に終わりを続ける事となる。


「オーッ、ホッホッホッ。無様、実に無様ですね遠坂凛」

「…………………………」

「その高笑いは……っ、ルヴィア!!」

「誰?」


凛とイリヤは視線を声の方向、屋上に向ける。するとそこには蒼いドレスを纏った金髪ロール髪のベルサイユ系お嬢様な女性とイリヤとは違う魔法少女の格好をした同年代くらい少女が居た。


「行きますわよ、美遊」

「はい」

そういうと二人は屋上から校庭へと飛び降りる。

「え、ちょっと飛び降りっ!!」

「安心しなさいアレも私達の同類、魔術師よ」

凛の指摘通り、ルヴィアは地面に衝突する寸前で一旦静止しふわりと着地。魔法少女おぼしき方はなんとそのまま着地したというのに何ともない様子であった。

「最初は貴方達が鏡面世界に入った後を追い。英霊の注意を引いてる内に漁夫の利を頂こうと思っていましたが、どうやらその様子では戦う以前の問題の様ですね」

「……言ってくれるじゃない。ソッチだってその様子じゃステッキには見限られたみたいだけど」

「そのセリフ、そっくりそのままお返ししますわ。それにステッキの所有者が変わった所で私のチカラは変わりません。美遊、鏡面回廊への接界を開始なさい。ソチラのお二人も見学できる様に連れて行って差し上げて」

「了解しました。サファイア、半径10メートルで反射路形成。鏡面回廊一部反転します」

「分かりました」

「えっ、地面がひかっ」

イリヤが言い終える間もなく、美遊が展開した魔法陣により4人は鏡面界に転送された。


『予定通りカレイドライナー達は鏡面界に到達。これより現在位置であるミラーワールド内穂群学園高等部校庭に鏡面界内穂群学園高等部校庭の様子を完全投影します』

と、ツヴァイが術式を発動すると半透明の人物が5人がミラーワールドに姿を現した。とは言ってもツヴァイの言う通りミラーワールド内穂群学園高等部校庭に鏡面界内穂群学園高等部校庭の様子をツヴァイを使って投影しているだけである。ミラーワールドと鏡面界は位相が近い為ここからアチラへは瞬時に転送できるらしく、現界しているサーヴァントが隙を見せたら瞬時に移動して隙を突けばいい。

「ツヴァイ、モードランサーだ。それと魔力刃を最高密度で設定してくれ」

『了解しました。いつでも転送いけます』

「ではお手並み拝見といきますか」

既に仮面ライダーナイトなっているファングはツヴァイを静かに構えると投影される光景に視線を映した。




一方、鏡面界内では凄まじい爆音と煙が上がっていた。

「Zeichen《サイン》――――!!」

「散射《ブラスト》」

凄まじい速度で速度で校庭を疾駆する人型の異形、サーヴァントライダーに対して、ルヴィアと美遊は距離を取りつつ攻撃を加えていた。

縦横無尽に移動するライダ―に対して、魔力の散弾を放ち続ける二人。散弾といってもそれほど範囲を広めている訳でもなく苛烈な攻撃がライダーを襲い続けていた。

校庭全体に煙が立つ中、遠巻きから凛とイリヤはその様子を見舞っている。

「すごい、あの魔法少女っぽい子」

「今は衛宮君の話題は置いとくとして。イリヤ、こうなったら漁夫の利よ。あのサーヴァントが弱ったと思ったら参戦して全力で魔力弾をお見舞いしきなさい」

「凛さんはどうするんですか?」

「今回はパス。あの様子じゃルヴィアの攻撃も全然効いてないしね。宝石の無駄使いはするつもりはないもの。それにしてもルヴィアの奴、効いてもないのにあんなバカみたいに砂煙を立てて何がやりたいのかしら………………まさかっ!」




「――チックメイトですわ」

砂煙が晴れると……そこには鏡面界の端に追い込まれたライダーの姿があった。鏡面界とはクラスカードによって造られた世界であり空間の広さは魔力の歪みに比例しその区間は限定されいる。よってフィールドには必ず格闘技のリングなどと同じくコーナーが必然的に存在する。

ルヴィアと美遊はライダーをそこに誘導していたのだ。

ライダーは追い込まれたのに気付いたのか動くを止める。だがそれは必ずしも諦観の念から来るものとは限らない。

『ベルレ《騎英の》……』

ライダーの前面に鮮血の如き赤い魔法陣が展開する。周囲の大気は震え、禍々しい魔力が辺りを覆った。

「どうやら宝具を使う様ですね。美遊。一気に決めてお仕舞いなさい」

「まずいわ。イリヤ、さっさと攻撃に……」

「この距離じゃ間に合いませんよ!」



「サファイヤ。クラスカード『ランサー』、限定展開《インクルード》。ゲイ《刺し穿つ》……えっ!!」



美遊の口から真名の解放、その続きが紡がれることなくインクルードは解除される。何故なら……。


「ご苦労、おかげで簡単に仕留めらた」


光り輝く刃がライダーの腹部を貫通させ、消滅に至らしめたのだから……。


サーヴァントが消滅した後、――そこには漆黒の槍を携えた騎士が居た。


「何者です。名を名乗りなさい!!」


あっけにとられていた4人の内、いち早く我を取り戻したルヴィアは騎士に名を問う。


「名前か、問われたならこう答えるのが適切でだろうな。……私は仮面ライダー、――仮面ライダーナイトだ」


どこか愉快そうな口調で黒き騎士はそう答えた。



[24887] 第三話『cross over the night』
Name: ryuki555◆740bdb90 ID:5faabe4b
Date: 2010/12/12 09:47
ミラーワールドから鏡面界に瞬時に移動したファングは、宝具を発動しようとしているライダーの隙を突き背中からランサーモードのツヴァイを突き立てる。宝具発動の為に前面に魔力を集中していた為か槍は容易にライダーを貫いた。ファングは人の体を貫く嫌悪感に一瞬躊躇を覚えたがそのままツヴァイを貫通させライダーを消滅に至らしめる。

そしてライダーの核となっていたクラスカードを手にするとファングはすぐさまツヴァイの中に格納した。


(これで指令の一は達成だな。お次は……)

「何者です。名を名乗りなさい!!」


いきなりの怒声に、身がすくみそうになったがファングはなんとか持ち直し気取ったような仕草をとった。


「名前か、問われたならこう答えるのが適切でだろうな。……私は仮面ライダー、――仮面ライダーナイトだ」


どこか芝居がかった口調でファングはカレイドライナー達に返答する。

現在の姿は当然仮面ライダーナイトの準拠している為、子供ではなく、声もツヴァイにより欺瞞されオリジナルのライダー秋山蓮とモノとなっていた。イリヤも正体がファングだとは夢にも思わないだろう。

相手に正体を気付かれぬようファングは仮面ライダーナイトを演じ始めた。


「何が仮面ライダーナイトですか、ふざけるのも大概にしなさい! 私は貴方がどこの所属で誰の指示でどうしてこの場にいるのかと聞いているのです!!」

「私もルヴィアに同感ね。それに自称ナイト様は一体どこからこの鏡面界にどうやって入ってきたのかしら? すごく興味があるのだけど」


ルヴィアに加え、遠坂凛も此方の会話に加わってくる。当然の反応だろう鏡面界に侵入できるのはあのデタラメステッキであるルビーかサファイアの力を借りるか、それなりの準備をして万華鏡《カレイドスコープ》の異名を持つ魔道元帥ゼルレッチに教えられた通り魔術を行使して鏡面界の回廊を作らなければならない。とにかく現状で鏡面界に介入できるのは時計塔に所属する魔術関係者のみのハズなのだ。


(『マスター、鏡面界内の歪みが再度増大、恐らくイレギュラーが出現します』)


「君達の疑問に応えたい所だがどうやら私の本命が来るらしい。鏡面界が未だに崩壊していないのがその証拠だ」


「はっ、そういえばそうですわ!! それに本命とは……」

「本命って一体何が現れるっていうのよ」

「――みなさん、鏡面界の歪みが再び増大しています。サーヴァント消滅の際の飛散した魔力が収束して……何かが現れますよ!!」

「こちらも同様の事象を観測、校庭中央部に出現します」


ルビーとサファイヤの指摘通り、校庭のちょうど中心部の空間が歪んでいた。黒いナニカが渦巻き、次第に形を現わしていく。

そして……

「何ですのアレは……?」

其処には異形が立っていた。異形は人形をしており、纏う鎧は鈍い金属光沢を放つ橙色のモノで兜や片腕の鋏などからはどこか蟹の意匠を感じさせる。ただ異形は決してサーヴァントとでもヒトではないとカレイドライナー達は感じていた。


――何故なら異形は所々が欠損していたから。


「何よアレ、なんで欠けてるの!!」

「――何というか、まるでバグって3Dテクスチャーがおかしくなったゲームのキャラクターみたい」

「おぉ、非常に分かりやすい表現ですねイリヤさん」


凛の言葉に、イリヤは現代ッ子らしい切り口で捕捉入れたがルビー以外はイリヤの言ったことがよく理解できない様子であった。


さらに……目の前に異形には決定的な特徴がある、突如として出現し仮面ライダーナイトと名乗った男と同じ特徴が……!


「一つ自称ナイト様に質問していいかしら、あの怪物貴方と同じ様なベルトをしているのだけど……貴方のご同類?」

「いやはアレはかつて仮面ライダーだったものだ。今はそう――唯の残骸だ」

と、仮面ライダーナイトは凛とルヴィアに小さなケースの様なものをそれぞれ投げ渡した。

「何これって…………ほんとにナニこれ!?」

「情報が頭に流れ込んできますわ!」

「使い方は理解しただろ、ならばさっさとソレを使え。目には目を歯には歯をだ」



「……………こうならヤケよ、――変身」

「ならばわたくしも、――変身ですわ!」

それぞれ思い思いのポーズを取ると声高かにそう叫んだ二人。

二人に言葉に呼応するかの現れたベルトにカードデッキを差し込むと鏡の像が結ばれ一つになるように虚像の鎧が二人を包んむ


「新たなライダーの誕生だな。……では始めようか――仮面ライダー同士の戦いを」


ナイトは凛とルヴィア、いや仮面ライダーライアと仮面ライダータイガにそう告げた。






鏡合わせの多重世界 第三話『cross over the night』



「ルビー、ありのまま起こった事を話すね。私は魔法少女な世界に足を踏み入れていた思っていたら、いつの間にか特撮チックな世界になってた、訳が分からないと思うけど私も訳が分からない」

「大丈夫ですよイリヤさん。魔法少女系統と特撮ヒーロー系統は日曜朝八時半と言う境界を共有しながら共存している仲ですからうっかり柵越えしちゃう人がいてもおかしくありません。……凛さんとルヴィアさんは魔法少女から特撮ヒーローにクラスチェンジしちゃいましたが」

「あなたを特撮ヒーローです」

若干混乱&悪乗りをしているイリヤ、ルビー、サファイヤであったが、美遊一人だけは冷静に状況を分析していた。

「どうやら事態が思わぬ方向に推移したようですがやはり私達は援護に向かった方がいいのでしょうか、あなたはどう思います?」

「えっ、私! ……やっぱり援護に行った方がいいのかな? でもいろんな意味で別次元だよあそこ」


鏡面界の端にいる二人とステッキ×2、その内のイリヤは中央で行われている熾烈な戦いを指差した。




――鉄の音が響く。鉄がぶつかり、擦れ、また衝突する鈍い音。それが絶えず響いている。

『SWORDVENT《ソードベント》』

『SWINGVENT《スイングベント》』

『STRIKEVENT《ストライクベント》』


仮面ライダーナイト、ライア、タイガはカードをそれぞれベントインしてウィングランサー、エビルウィップ、デストクローを呼び出し装備すると、かつて仮面ライダーシザースと呼ばれた異形に再度攻撃にかかる。


「あいつはかつてシザースと呼ばれていた仮面ライダーだ。能力は仮面ライダーの中でも平均能力は下だが防御力はトップクラス。正面からいかずガードの薄い所を狙え!」

「分かってますわ」

「そんな事、カードデッキを受け取った時から理解してるわよ。それと本当に魔力を使った攻撃は効かないの?」

「試してみるか? ツヴァイモードハンター、3バースト」


ナイトはツヴァイは拳銃状の形態に変化させると魔力弾三連射をシザースにお見舞いする。だがシザースに着弾した魔力弾はダメ―ジを与える所か逆に取り込まれ、僅かだが欠損した部分が修復された。


「この通り、奴らにとって魔力は餌に過ぎない。だが魔力不足で完全体になれていない分着け入る隙があるはずだ」

「不完全体であのデタラメさですか。それにしても銃になったり槍になったり何なんですのソレ? 召喚機ではなさそうですが」

「便利な魔術礼装とでも思ってくれればいい」

「そんなモノを魔術礼装だと魔術師が認める頃には表じゃ空飛ぶ車が走ってるでしょうね。それにこの出鱈目なベルトとカードデッキもね!」

ルヴィアの問いにファングははぐらかす様に答えると、間髪入れずに凛が突っ込みを入れる。

ファングは心の中で言い当て妙だなと思いつつ、アニメ三期じゃミッドはまだ自動車は道路を走っていたな等と思い出した。

「そんな事よりも今は目の前の敵だ。――ハァッ!」

両腕でウィングランサーを振りかぶるとシザースの横合いに思い切り叩きつける。けれど鈍い音と手に鈍い感触が響くだけでシザースは微動だにせず、逆に万力の如き力でウィングランサーを掴まれてしまう。

「しまった! だが……」

「ガラ空きよ」「ガラ空きですわ」

ライア(凛)が両腕が塞がったシザースをエビルウィップを振るいその体に巻きつけ絡め捕った。

「今よ、ルヴィア」

「言われくとも、喰らいなさい!!」

両腕に装備された巨大な小手と鉤爪が一体化した武器デストクロー、タイガ(ルヴィア)はそれを使いシザースのカードデッキに強烈な一撃をお見舞いする。


「#%@*&$%~~~~~~~~~~~~!!」


シザースは理解の及ばぬ禍々しい咆哮を上げると容易くエビルウィップを引き千切り、カードデッキ刺さった方のデストクローをがむしゃらに振り払う。

一旦、距離を取り態勢を立て直すナイト、ライア、タイガ。シザースはどうやらカードデッキに亀裂が入った事により苦しんでる様だった。
 

「どうやら弱点だったようだな。今がチャンスだ!!」

「分かりましたわ、タイミングを合わせましょう」

「OK、じゃ行くわよ」

一斉にカードをデッキから引き抜きベントインする。

『FINALVENT《ファイナルベント》』

『FINALVENT《ファイナルベント》』

『FINALVENT《ファイナルベント》』

虚空より鏡面界に三体の獣が現れた。

仮面ライダータイガの二足歩行の白虎型契約モンスター、デストワイルダーが苦痛に悶えるシザースを掴むと空高く投的する。

そして既に空中には上からウィングランサーを中心にマントとなったダークウィングを螺旋状に絡ませ突貫するナイトの飛翔斬とエイ型の契約モンスター、エビルダイバーに乗り相手に突撃するライアのハイドベノンによる一撃が待ち構えていた。


けれど……


『|G%R@DVEN+《ガ%A&ベン>》』


破損した電子音の様なモノが響くと、シザースの前に何処からともなく蟹を象った盾が出現しそれ掴む。そして先行してに突貫したナイトを盾を使い突撃してくるライアの方向に弾くという荒業をやってのけた。


「クソっ!」

「えっ! ちょっと」


弾かれたナイトと激突しそうなったライアは加速を止めて横に逸れた。つまりこれで二発のファイナルベントが不発に終わるが……。


「私の事をお忘れになって?」


地上より跳躍したタイガが再びシザースの不意を突く、しかしシザースは強固な盾であるシェルディフェンスはこれすら防ぎきる。しかしタイガ(ルヴィア)に取ってはソレすら織り込み済みだった。


「これで逃げれませんわよ」


タイガはデストクローをパージすると空中でシザースを掴み、そのまま組み掛り巧みに体勢を入れ替えた、


「沈みなさい!!」


タイガはパイルドライバーを掛けた状態で落下し凄まじい勢いでシザースを地面に叩きつける。さらに止めとばかりに地面に突き刺さったシザースのベルトバックル部に地上で待ち構えていたデストワイルダーが痛烈な一撃を加えた。


「~~~~~~~!!」


呻き声を上げる事さえ許されず、体を僅かに揺らすとシザースは黒い霧の様となり消滅した。


「どうやら終わったようだな」

「決め技がパイルドライバーとはルヴィアらしいわ」


激突後に何とか持ち直したナイト、ライア。そして遠くから傍観していたカレイドライナー達も近づいてくる。

凛とルヴィアは変身を解くとナイトの方に向き直った。そのままルビーが魔法陣を展開し鏡面界いた全員が元の世界の校庭へ帰還する。


「さてと。じゃ、あなたについていろいろと話してもらおうかしら。ねぇ、ルヴィア?」

「えぇ、珍しく気が合いますね。私も頭に入ってきた知識を含めて詳しく聞きたいですわ。それにあなたが手に入れたクラスカードをどうするかも?」


ルヴィアに指摘に「あっ!」と声を上げる凛。どうやらいつものうっかりが発動していたらしい。

凛とルヴィアの後ろの位置にイリヤ、美遊、ルビー、サファイヤが着く。どうやら役者は揃ったようだ。


「いいだろう。――では始めにかつてミラーワールドで行われた仮面ライダー同士のバトルロアイアルについて語ろう」


そう言ってナイトは口を開いた。それぞれ欲望を叶えるの目的に行われたライダーバトルを語る為に……。








sideファング


俺は指令である介入行動に大方は成功したといっていいだろう。まず第一にライダーを倒しサンプルとしてクラスカードを入手すること(そして後日返却する事も)。その2、イレギャラーである仮面ライダーが出現した際、遠坂凛とルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトにそれぞれカードを渡しに協力してイレギュラーを倒す事。そして最後に若干の嘘を入れた説明をカレイドライナーに語る事。

そして現在、用意された話(仮面ライダー龍騎の内容を人名と結末《リセット》をぼかしたようなもの) を指令の通り彼女達に伝えた。


「何よ! そんなふざけた事がホントに行われたっていうの?」

「それもそうですが、その終わった筈のバトルファイトが今回のクラスカード事件とどんな関係があるというのですか?」

「確かにライダー同士のバトルロワイヤルは一人の勝者を残して終結した。だが散っていったライダーの残滓がミラーワールドと位相の近いこの世界に集まっているのを観測し、調べて見ればクラスカードのなるモノの回収を時計塔所属の魔術師によって行われていると確認した。さらに詳しく調査するとサーヴァントの鏡面界への現界がミラーワールドの異常事態の原因だということを掴み。何事もなければと静観していたのだが仮面ライダーの出現が濃厚になった為に介入に移った訳だ」


さも真実かの様に話しているが、指令の通りに説明しているだけであって今の自分にはイレギュラーの出現の真相が本当にこの説明の通りなのかは正直分からなかった。


「貴方の説明通りならば、私達があのサーヴァアントを倒した後に現れても良かったのではないですか? いいえ、正直に申しましょう。貴方はクラスカードを奪取する為にあのタイミングで現れたのですね」

「そうだ。だが私も今回のクラスカード事件があのライダーもどきの出現に関わってるのは分かっていてもクラスカードがどう作用してもどきの出現に至ったのかまでは理解していない。なのでこのカードの調査が必要だと考えたのだ。安心しろ後日には必ず君達に返却すると約束しよう」

「そんな口約束が信用できると本気で思ってるの? それにそのカードは時計塔が解析を試みて殆ど出来なかったシロモノなのよ」

「それは君達、時計塔の魔術師がという事だろ」

その言葉に一瞬、場の空気が張り詰める。

「……やはり、貴方は時計塔の魔術師ではないのですね。とすれば賢人会議、それともカンピオーネの庇護を受ける魔術結社。あの槍や銃に形を変える魔術礼装で考えるならアトラス院という線もありますわ。それともミスカトニック大学とでもいうのかしら?」

「何なに、何の話?」

「あの特撮ヒーローさんがどこの所属かという話ですよイリヤさん。賢人会議、カンピオーネの庇護を受ける魔術結社というのは同じ様な類です。アトラス院というのはエジプトを拠点とする錬金術師の集団。ミスカトニック大学は多少毛色が違いますが凛さんやルヴィアさんが所属している時計塔のアメリカ版とでもいいましょうか。ちなみにカンピオーネというのは人間でありながら神を殺し、その神様の力を手に入れた超絶出鱈目超人の事を言います。まぁ、魔術師の間で王様扱いされてる方達の事と思ってくれればいいですよ」

「ごめん、あんまり理解できないや」


目の前のクロスオーバー全開の台詞に多少心が揺れ動いたが構わず俺は話を続けた。

「いや、今の所はそのどこにも所属はしていない」

「分かりました参考になりましたわ。で、クラスカードをあなたが持っていく件はまだ私は納得していないのですが」

「私も同じく、よ。だいたい魔術師にそんな要求をするなら相応の対価が必要になるわ」

「対価なら既に渡してある。代わりにタイガとライアのカードデッキを君達に貸し出そう」

「えっ!」 「はっ!」

どうやら驚いた様子である。

「勘違いしてもらっては困るが、私は君達と協力関係を気付きたいと思っている。魔道元帥を敵に回す気もない。君達が私にカードをしばらくの間、貸してくれるのなら代わりにそのカードデッキを貸し出そう。ちなみ安心したまえ契約モンスターの維持に必要な魔力は此方で用意しよう。それにそのカードデッキはレプリカみたいなモノなのでね」

この台詞も指令通りに言ってるだけなので、どうやって契約モンスターの維持魔力を肩代わりするのか不明だ。

「レプリカ?」

「残念ながらオリジナルのカードデッキは少数でね。なのでオリジナルの元に造り直したモノなのだよ。そのライアとタイガのカードデッキは鏡面界での戦闘を主目的としていてオリジナル備わっていたミラーワールド内への移動はオミットされている。まぁ、それでも君達には興味深い代物だと思うが?」

「……ちょっとルヴィアと話をさせてくれない?」

俺が承諾すると凛とルヴィアは校庭の端でヒソヒソ話をし始め、数分後に了解だと結論を述べた。

その後も凛とルヴィア達の質問は続き、俺は可能なかぎりソレに答えていった。



――――――――――――――――――――――――――――――、、、



「最後の質問よ? アンタは何者なの。アンタの話が本当ならライダーバトルには唯一人生き残りが居るそうだけど、あんたは一言もそれがアンタだとは言わなかった。できればカードデッキを外して姿を見せて欲しいわ」

「そうですね、協力関係を望むならそれが筋というものでしょう」

「残念ながらそれはできない。都合上あまり顔を知られるわけにはいかないからな。代わりといってはなんだがこれを渡しておこう」

そう言うとメモ用紙サイズの紙を数枚リンとルヴィアの両方に渡した。

「これは……」

「何ですの?」

「残りのサーヴァントの特徴、能力、及び真名、宝具が書いてある。今日ライダーを倒したから後はキャスター、セイバー、アサシン、バーサーカーだ。これを見て対策を練っておくといい」

「っ!! どうしてアンタがそんな事知ってんのよ」

「最期の質問はもうしただろ。ではまた後日合おう。なに、鏡面界で戦闘が起こればこちらもすぐ気付く。必ず助太刀に向かう事を誓おう。ただしこちらの敵であるアレが現れた時は助力を頼む」

そう言うと俺は校舎の窓ガラスの中からミラーワールドへ消えて行った。








穂群学園高等部


side凛


「本当に鏡の中に入っていくなんて、ほんと何処の何者よ」


あまりにも、あまりも現実感のない夜だったと実感する。仮面ライダーナイト、目的は本人が言うには鏡面界に出現するライダーだったモノ(曰く残骸)を倒す事。少なくとも魔術方面の事情に精通し、時計塔内部にも情報網を持っている人物で見た事のない様な魔術礼装や訳の分らない変身ベルトを使ってる。さらに鏡の中に存在するというミラーワールドを自由に移動し単独で鏡面界に来ることすらできる……だめだ、正体がどんな人物なのか見当もつかない。


「ルヴィア、今日はあなたの家に泊まらせてもらうわ。いろいろと話合わなくちゃいけないだろうし時計塔にも色々、早期の報告が必要ね」

「えぇ、不本意などと言ってる場合ではありません。それで時計塔への報告の件ですが」

「分かってる」


私達は通じ合わせるように顔を合わせた。


「「ステッキのマスターが変わったことは何としてでも誤魔化しましょう」」


グッと片腕をクロスさせて合意の意を示す私とルヴィア。その後ろでは呆れ顔になりながら、こちらを見つめる魔法少女二人が居た。






――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――、、、







「どうやら戦いに感応して順調に稼働し始めたらしい。だがこの多重世界を安定化せるには圧倒的に足りていない。やはり仮想空間《プロレマ》を用意ずにアレをアンテナ代わりしてアルコーンシステムを稼働させるには現状では少し無理があったか。だがそれもすぐに解決するだろう。この世界の戦いはまだ序章に過ぎないのだから」


男、神埼士朗は目の前の異様なモニュメントに視線を向けた。そこにはかつてデミウルゴスシステムと呼ばれ人の精神を糧に稼働する運命改変装置の姿があった。







[24887] 第四話『Extra:Fate』
Name: ryuki555◆740bdb90 ID:5faabe4b
Date: 2010/12/12 09:49
私/俺はどこかを漂っていた。既に依り代なきこの魂はすでに消失している筈なのに……。


「奏者よ/旦那様」


傍らからは最も信頼すべき者の声が聞こえる。

私/俺は無意識に手を伸ばし愛しい紅衣の少女/狐耳の良妻の手を掴んだ。


「もう頼まれたって絶対に、離さんぞ/離しません」


その声が頭に響いた時、何も見えなかった筈の視界に光明が映る。

私/俺は繋いだ手とは逆の手を光へと伸ばしていく。

私/俺はセイバー/キャスターを連れだって光の方へと向かっていった。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――、、、



「起きて、お兄ちゃん。起きっててば! ファングお兄ちゃん!!」


ゆさゆさと揺らされ次第に意識が覚醒する。俺……ファング・テスタロッサは眠気を覚ます為、手を大きく伸ばし欠伸をした。


「ふあぁ、もう朝かアリシア?」


「もう朝か、じゃないよお兄ちゃん。朝食出来てるから早く来てね」


アリシアはバタバタと一階に降りて行った。

――それにしても夢を見ていた気がするが、内容が思い出せない。何か途轍もないものと繋がっていたような気がするが……。


「まぁ、思い出せないなら重要な事じゃないだろう。さぁ、今日の朝食は何かなっと」


部屋のカーテンを開き、セミロングの髪をゴムでポニーに縛ると俺は階段を下っていく。その時には夢の事など奇麗さっぱり頭の隅に追いやっていた。








「美遊・エーデルフェルトです」

「はーい、みんな仲良くしてあげてね」


美遊の声とは対照的に担当教師である藤村大河先生の声がクラスへ大きく響いてくる。――分かっていたが割とベタな展開だなどと俺は考えつつ後ろのイリヤの席をチラリと見た。

イリヤも同じくやっぱりか言いたげな顔で転校性を見つめている。

「イリヤ、あの転校生知り合いか?」

「え、なんで分かったの!」


勘だ、勘と適当に答えつつ視線を転校性である美遊に戻す。美遊はタイガー先生の指示通りイリヤの後ろの席に向かい。


「今日から学校の方でもよろしくお願いしますイリヤ」


いきなり原作と逸脱した。まぁ、すでに俺と言う存在でかなり逸脱しているが、どうやらこの二人は既にこの時点でそれなりに仲がいいようだ。

しかしながら美遊の奇襲攻撃によりクラスの好奇の母は美遊からイリヤとへと結局授業が終わると質問はイリヤと美遊に集中し、イリヤは美遊を連れて教室から逃げて行った。






「――以上が今回のクラスカード事件の詳細な説明になります。本当はイリヤさんが昨日のサーヴァントととの戦闘を行ってから話す予定でしたが、予想外の事態になりましたので」


一先ず屋上に移動したイリヤ、美遊とルビー、サファイヤはクラスカード事件の事とサーヴァントやクラスカードの使用法などの説明を受けていた。イリヤは詳しい説明を受けてない上、凛と言い争いをしていたわけで今回の説明でかなり詳しい詳細を知ったいっていいだろう。まぁ、本人は頭がパンクしそうになっていたが。


「それにしてもやはりあの仮面の方は誰なのでしょうか? かなりコチラの情報に精通しているのは昨日のメモを見ても明らかでなのですが」


サファイヤは仮面の男、仮面ライダーナイトについて疑問を提起する。


「あのメモの信憑性はかなりのものですね。あの特撮ヒーローさんは残りのサーヴァントの情報といいつつランサーのサーヴァントについても詳しく書いてあって、真名や宝具もドンピシャですから。クー・フーリンとゲイボルグといえば有名と言えば有名ですが」

「じゃ、美遊が持っているランサーのクラスカードにはそのクー・フーリンってサーヴァントの力が宿ってるんだ。そんなに有名なの?」

「クー・フーリンはケルト神話の半人半神の英雄で槍だけではなく剣やルーン魔術師も精通していた言われ、日本ではそれほど有名ではありませんが欧州では絶大な知名度を誇っています。私が昨日限定展開しようとしたのが彼の宝具であるゲイボルグでありその力は先程ルビーが説明していたクラスカードの使用方で話した通りです」


美遊の捕捉にイリヤが納得しているとルビーは話題を元の方向へと転換した。


「あの特撮ヒーローさんが使っていた槍や銃になる武器についてですが、もしかしたらあれ自体が私やサファイヤちゃんの様に意志を持ってるのかもしれません」

「え、どうしてそんな事が分かるのルビー?」

「一度だけあの特撮ヒーローさんは『ツヴァイモードハンター・3バースト』って言ったんですよ。その時は特撮ヒーローチックな見た目と相まって違和感がなかったですけど、よくよく考えるとあの武器を使った時にしか技名っぽいのを喋ってんですよ。それでもしかしたら技名ではなくあの武器に指令を送って、武器が意志を持って答えてると考えたわけです。そう考えるとあの武器は私達と同じ様な魔法少女のステッキみたいなものなのでしょうか?」

「なるほど……」

「私からもいいですか?」


サファイヤはそう言って自分の意見を述べる。


「あのナイトという方は何となく何処となしにですが、役を演じ得てるようなフシがあるように私には思えます」

「確かにどこか芝居がかった口調で話しますね。あの特撮ヒーローさんは」

「すいません、一つよろしいでしょうか?」


美優は今まで黙っていた疑問を皆にぶつけた。


「特撮ヒーローとか魔法少女って一体なんですか? 良く分からないのですが」

「「えっ!」」


その言葉にルビーとイリヤは驚愕する。


「美遊って魔法少女ってほんとの知らない。アニメは、アニメは見る?」


「全く見ないですし知りません」

「……これは重症ですね。イリヤさんが飛べて、美遊さんが飛べないのはこれ差が原因かもしれません。それなら美優さんは今日明日あたりイリヤさんの家で魔法少女について勉強する必要がありですね、主にDVDで」


昨日の夜、鏡面界から帰還後にナイトから渡されたサーヴァント対策メモに対キャスター戦には飛行能力が必要と書いてあり。凛とルヴィアが駄目元でイリヤと美遊を試した所、イリヤだけは見事飛行に成功。曰く『魔法少女って飛ぶものでしょ』との事で凛とルヴィアを驚愕させ、それとは逆に美遊は『人は……飛べません』という少女としてはあまりにも夢のない台詞をいい、別の意味でルヴィアを驚愕させた。

「もう授業を始まっちゃう。行こう美遊」

「あっ」


強引に美遊の手を取るとイリヤは教室に引っ張っていく。美遊は不思議と嫌な気がしなかった。










日本の某所で日本人らしからぬ少女が資料を読みふけっている。金の髪を靡かせ、蒼い瞳を持つ少女は名をエリカ・ブランデッリと言った。


「極東の国って事であまり関心を持っていなかったけれど、調べみるとかなりとんでもないのが居るみたいね。この国は」


エリカは魔術結社、赤銅黒十字の所属であり、その中でも大騎士の位階と『赤い悪魔《ディアボロ・ロッソ》』の異名まで取る実力を持つ。そんな彼女はつい最近にとある事情から本部のあるイタリアからこの日本に拠点を移す事なったのだが調べてみれば見るほどこの国の異常性が垣間見えた。


「風都でのガイアメモリ事件。この国の怠慢か、それともどこかの組織が情報を秘匿し続けいたか知らないけど、ガイアメモリをばら撒いていたミュージアムとかいうマフィア紛いが壊滅する寸前まで正史編纂委員会もほとんど何も掴んでなかったいうのはどうなのかしら。まぁ、それは置いとくとしてガイヤメモリの効果は『地球で起こった現象、事象をプログラムで再現し、それを人体に注入することで絶大な力を発揮する』か、――本当にデタラメな代物ね」


表現するならば現代の技術で作られた凄まじい力を持つ呪具。それをあんな小型サイズするとは造った人間はもっとデタラメだったのだろうとエリカは思う。


「けれど代償に精神を蝕まれるというの戴けないわ。まるで麻薬、ドーパントとは良く言ったものね。――だけど例外も存在する」


別の資料に目をやるエリカ。添付された写真には左右それぞれの半身を緑、黒とした赤い眼を持つ異端の人型と赤の鎧に蒼いバイザーから複眼の覗かせる同様の存在が映っていた。


「次世代型ガイアドライバーと対応した新型メモリ。そしてそれを使う仮面ライダーか」


その力はカンピオーネとまではいかないが並の魔術師の遥か上いくと資料には書かれていた。状況においてメモリを変えて状況に対応するという仮面ライダーWの戦い方は何となく護堂のカンピオーネとしての権能をエリカに彷彿とさせた。


「もう一つの資料を読み終えたら護堂の家に遊びに行こうかしら、それから護堂のおじい様の話の続きを護堂や護堂の妹の前で聞くのも面白いわね」


護堂が聞けば頑なに拒むだろう行動をどうしたら実現させる事が出来るかなどと悪魔的な考えを描きつつ、エリカは次に資料を見る。


「これは現在進行形の事件で……!!、時計塔の魔道元帥直々の回収任務。詳しい事は探れてないけど場所は冬木市、日本の重要霊地の一つで起きている。これは犬神使いの川平家同様、一度足を運んでみる価値がありそうね」


エリカの勘が冬木で起きている事件に関わる事が何かしら自分の利に繋がると告げていた。だが無暗に時計塔を刺激するには良くない。あそこにはカンピオーネをも超越する化物、魔道元帥ゼルレッチが居るのだから。川平家の方は順調にここ日本で築いた人脈を使い、もう少し接触まで持っていけそうな所まで来ている。まつろわぬ神と同等の力を持つとされる『代償を求める神々』。その神々を犬神使いの川平家が倒した事は数ヶ月前に賢人議会が観測し、すでに欧州の魔道結社に伝播している。その後、川平家からカンピオーネは出なかったがそれでも神殺しとなりえる力を有してる事は事実であり。日本でコネクションを築く相手としては申し分ないとエリカは考えていた。


「何とか魔道元帥の不興を買わずに、冬木に居る時計塔の魔術師に接触する方法はないかしら? 何か大義名分があればいいのだけれど」


そこでエリカは任務に当たっている魔術師の片割れの名前に目を付けた。


「ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト。ルヴィアが来てたの。使えるわね、お互い名門の出で知らない仲ではないし。なら……」


何やら良からぬ事を考え付いたエリカは資料を机に置くとまずは護堂の家に向かう事にした。勿論、やっかいな問題を抱えながら。










sideファング


現在深夜零時十数分、俺はミラーワールド内の冬木大橋のふもとにある公園に待機していた。。


『どうやらもう少しでキャスター撃破に至る様です。対策法を教えた事がすで効果を表していますね』


既にナイトとなっている俺はツヴァイの意見に頷く、原作では何の対策もなしに突っ込んでキャスターに突っ込んで撃退されたカレイドライナーだが、見事な連携により既にキャスターは地面に追いやられている。


(えぐいな)


身も蓋もなくそう思う。凛とルヴィアは既にライアとタイガに変身し、ライアのアドベントで呼び出したエビルダイバーに乗って魔法少女達と共にキャスターのいる上空に上昇し、地上と空を遮るように展開していたキャスターの魔力指向制御面(要するに魔力反射バリア)を逆手に取り、イリヤと美遊の魔力散弾による弾幕の展開。そしてライアとタイガが直接キャスターを掴み、地面へと叩き落とす。一連の動きは流れるように迷いなく実行されていた。


「終わりか」


限定展開《インクルード》されたゲイボルグがキャスターの心臓を確実に捉える。魔力により構成されていた体は消滅し、そこにはキャスターのクラスカードだけが残った。


『鏡面界にて歪みが発生、魔力の収束を検知。目標の発生を確認しました』

「了解、転送を開始してくれ」

『Yes,sir』

俺はミラーワールドから鏡面界に移動した。歪みの元凶である仮面ライダーを倒す為に……。







鏡面界内 冬木大橋


「御苦労、どうやら渡したメモ用紙は役に立った様だな」

「ええ、役に立ちました。答えの分かったテストほど簡単なモノはないといいますが、今回はその典型ですわ」

「前もだけど、唐突かつタイミングよく現れるわね。ミラーワールドとやらからこちらの様子を窺っていたのかしら?」


ライアとタイガの状態の二人がファングに対してそれぞれの言葉を掛ける。だがファングは急ぐように二人の話を遮った。


「話は後だ。魔法少女達を下がらせろ、またライダーが出てくる」


その言葉通り、冬木大橋に魔力が収束していき黒い影が形をとる。形が明確になった所でファングは声を荒げる。


「あれは……ゾルダか!!」

所々欠損しているが微妙に角ばったフォルム、触覚の様なアンテナ部などからいって間違いなくそうだろう。離れた位置から相手の出方を窺うファング達。だがそれは重大な誤りである事をすぐに理解することとなる。

ゾルダはカードデッキからおもむろにカードを一枚取り出すと、一瞬ファング達に見せつけるようにかざす。


「なっ!」

「えっ!!」

「しまった!! 最初から奴は!!」


ゾルダは機喚銃マグナバイザーに――カードを滑り込ませる。


『FIN@LVENT《ファイ#ルベント》』


ゾルダの前面に現れた契約モンスターにマグナギガにマグナバイザーを連結するとゾルダは躊躇なく引き金を引く。ゾルダの眷属たる鋼の巨人の装甲が開き数多のミサイル弾頭と発射口が露出し全弾放出された。終わる世界《エンドオブザワールド》、その過剰ともいえる飽和攻撃がファング達の眼前に迫っていた。



「サファイア、全員を巻き込める規模の反射路形成を!!」

「だめです、ルビィア様達と離れすぎていて最大規模でも巻き込めません。現状で帰還可能なのは美遊さんとイリヤさんのみです」


ライダーとの戦闘では美遊達は足手まといである為、下がるように指示されたのが裏目に出た。イリヤとルビーも横で美遊達と同じ様な会話を横でするが出た結論は変わらない。三人の前に立って防御壁を張ろうにもやはり距離が遠すぎた。


万事休す……だが、


「ツヴァイ起動! プロテクション及びカートリッジロード!!」


ナイトが片腕を前方に突き出すと、逆三角状の金のペンダントは斧の様な、杖の様な形に姿を変えて片腕に収まる。同時に前方に展開せれる巨大な魔法陣。金色の魔力で織り込まれたソレは杖の前方部にあるシリンダー部から薬莢が排出されると共に急激に強固なモノへ変貌した。


ミサイル、銃撃、砲撃。現代兵器を模した超常たる暴力。それらは容赦なくナイト達に降り注ぐが、その全ては魔導障壁が阻んだ。


本体から離れたミサイルや弾頭まで魔力吸収特性を持つかは聞いていなかったファングだが、どうやら賭けには勝ったようだ。ただ敵の攻撃を阻むたび展開せれる障壁には綻びが生じるが、そんなモノ補填してしまえばいい。


「カートリッジロード」

(『Yes,sir』)


再び急速上昇する魔力により再度魔法障壁を強化。一極集中的な攻撃ではなく面制圧的な波状攻撃であった為かカードリッジを全弾消費する事でゾルダの攻撃を何とか防ぐ事が出来た。


「クッ、全弾持ってかれたか」

「――何よ、今の!! その杖、あんな巨大な魔法陣をどうやったら一瞬で展開できるの」

「槍や銃になると思えば杖にもなるのですね。戦いが終わった後に色々と聞きたいですわ、是非に」


ゾルダのファイナルベントからプロテクションよる全弾防御の間、ずっと呆気に取られていた凛とルビィアだったが攻撃が止むとすぐに展開された魔法障壁《プロテクション》について質問する。前回の魔力弾はガントと大して変わらぬ見た目だった為に差異は気付かれなかった今回は違う。そもそも魔導師であるファングは魔術師とは電気を使う炊飯器と火を使う飯炊き釜ほどの違いがある為、特異に見えて当然なのだ。


「前回も言っただろう、話は全て終わった後だ。第二波が来るぞ」


飛来する一撃を躱す三人、遠方の橋の上にはギガキャノン、ギガランチャーを装備したゾルダの姿があった。


「気をつけろ一撃、一撃の威力がとんでもない。躱して距離を詰めるぞ」

「言われくとも!」

「ですわ!」


攻撃を回避し、ゾルダに向かい疾走をライアとタイガ。ナイトも合わせ様に行動を開始する。


『TRICKVENT《トリックベント》、ADVENT《アドベント》』


三体に分身し大地をかけるナイトは出現したダークウイングを背中に装備して飛翔する。これでゾルダの三門の火砲に対し、こちらは動く目標が五。案の定、判断に迷いが生じたのか相手の射撃の精度が落ちた。


(距離も大分詰まった。止めといくか)


ナイトは一枚のカードをベントインする。


『COPYVENT《コピーベント》』


本来はライアの使用していたカードではあるが、現在のナイトのカードデッキには大抵のカードが揃っていた。コピーベントのカードによりゾルダが背中に装備している二門の火砲、ギガキャノンを複製しダークウイングのさらに上に装備した。空中での動きが鈍くなったが代わりに絶大な火力を得たナイト。三体に分身しているナイトは三方向からギガキャノンを発射することでゾルダの動くを止める。


「ライヤもコピーベントが使える筈だ。それでギガランチャーを複製してゾルダを撃て!!」

「分かったわ!」


ライアは動きを止めると、カードをエビルバイザーにカードを入れた。


『COPYVENT《コピーベント》』


その効果により、ゾルダが両手で扱っている身の丈よりも長い火砲、ギガランチャーがライアの前に現れる。ライヤはそれを手にすると……、


「はぁあああ!」


叫びをあげて発射した。本来のゾルダはファイナルベントよりもこの火砲で多く敵を屠ってきた。皮肉にもその一撃がゾルダを貫く。

ナイトのギガキャノンによる攻撃も相まって、ゾルダの体は粉々に砕け散り、完全に鏡面界から消滅した。


しかしナイト、いやファングは警戒を解かず、鏡面界内の空に注目する。


(やはり崩壊が起こらないか。原作ではキャスター戦の時点で一回撤退してから日を改めて再戦しているから撃破後にセイバーが現れたかと思ったが、どうやら少なくともこちらじゃ関係なく現れるみたいだな)


「空間の崩壊が遅い。もしかしたらサーヴァントもう一騎居るのかもしれん、警戒を怠るな!」


視線を戻し警戒を促す。凛とルヴィア、イリヤと美遊ははっとした様子で辺りを見回した。そして、


「あ、居た!! でも、え……?」

「何故……どういう」


イリヤと美遊の戸惑う声に反応した俺達はイリヤ達の目線の先に目を向け……


「嘘!」

「そんな!」

「なん…だと…!」


そこには二体の黒騎士が居た。一方はセイバーのサーヴァント、そしてもう一方は、


「仮面ライダーリュウガっ!」


まさかの仮面ライダーとサーヴァントの同時出現、そんな事態、誰が予想したであろう。


「現状で、あの二体を相手をするのは危険だ。イリヤと美遊をこちらまで後退させろ!!」

「だめ、間に合わない!」

(『鏡面内の歪みはかつてないほど増大、……これはイレギュラ―ではありません!! 何か別のモノが来ます』)

(「なに! 別の者って!」)


龍の騎士とも言える二体は容赦なくイリヤと美遊に襲いかかろうとする。だが、振り降ろさせる凶刃は予期せぬ者達の襲来により阻まれる。


「光を辿り、外に出て見れば……目の前には見知らぬサーヴァント。かといってムーンセルの中という訳でもない。まぁ、良い。どこに居ても余のやることは変わらん。余はサーヴァントとして奏者に仇なすものを打ち倒すのみだ」


突然現れた紅い騎士は黒いセイバーの一撃を紅い剣で受け止め、弾き返し後ろに後退させる。


「どこの誰とは存じませんが同感ですね。目の前の真っ黒クロスケさん達には文字通り話が通用しないようですし。とりあえず旦那様に危害を加えそうな輩は抹☆殺が基本です」


きつめ耳を生やした着物の女性は呪術によりリュウガに攻撃した。本来吸収される筈のその攻撃はその威力の凄まじさからかリュウガは完全に吸収するできずに吹き飛んでしまう。


ファング達がイリヤ達の方に駆け寄るとそこには4人の異邦人が居た。二人は紅い騎士と狐耳の呪術師、そして残りの二人は同じ学校の制服だと思われるものを着た男女であった。


こちらが駆け寄ってきたのを確認すると紅い騎士と狐耳の呪術師は同時に口を開く。


「問おう」「質問ですが」

「「ここはどこで」」

「そなた達は一体何者だ?」「あなた達は一体誰ですか?」

「やはり……」


他の人間には聞こえぬほどの声でそう呟く。その声とその姿にファングは見覚えがあった。

フェイト/エクストラ、その登場人物たるセイバー、キャスターのサーヴァントと主人公となる男女。本来は同時に存在しない二つの主従が今この鏡面界に姿を現したのだ。






鏡合わせの多重世界 第四話『Extra:Fate』




[24887] 第五話『Vs.Dragon Knights』
Name: ryuki555◆740bdb90 ID:5faabe4b
Date: 2010/12/13 10:51
倫敦、大英博物館……あるいは魔術協会総本部、通称時計塔にて


「――です。これが遠坂凛及びルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトの緊急合同報告書に書かれていた内容ですがいかがいたしましょう」

時計塔講師、ロード・エルメロイ二世は冬木のクラスカード事件の責任者であるキシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグに報告の内容を伝える。

急な報告の内容はエルメロイが全く予想だにしないモノでだった。

『仮面ライダーナイト』と名乗る存在が鏡面界に侵入して戦闘に介入しクラスカードを一枚奪取。その後、右曲左折を経て条件付きで協力関係に至り、クラスカード一枚をあちら借り受ける代わりに両名一ずつ『仮面ライダー』に変身するデッキケースを借り受けたという内容はさすがのエルメロイもどこをどう突っ込んでいいのか分からない。


「ナイト名乗る人物の言動からある程度こちらの事情に精通した人間であるのは明らかなので現在そこから正体の洗い出しを行っている最中です。また、貸与されたカードデッキについてですが魔術的な解析を行った所両名では全く解析不能との事で、解析魔術のエキスパートを現地に召集する事を要請していますが、どうし『どこの誰だか知らぬがやってくれるのう』……はい?」


普段は話に口などいちいち挟まないゼルレッチが珍しくエルメロイの言葉を遮った。――いや報告の途中からすでにエルメロイなど意識の内に入っていなかったというのが正しい表現だろう。


「人が少しの間、異世界に行って帰って来てみればこうまで世界を改変するとは相手は何者じゃ。どちらにしろ並行世界を無理やり束ねて一つの世界にするなど並の力量ではあるまい。しかしどうやって安定化を図っている? 何かカラクリがあるはずだが……。 ――まぁ、良い。規模はデタラメだが抑止力が作用するほどのモノではないし、何よりこれほど面白そうになった世界じゃからのう。儂も一つ噛ませてもらおうか」


エルメロイなど意もかえさず、何かを一人でブツブツと呟くとなにやら納得した様子で指示を下した。


「エルメロイ、確か解析魔術のエキスパートが必要と言ったかのう?」


「あっ……はい」


「ならば今回のクラスカード事件、追加で儂の弟子達を派遣しよう」


「はっ!? 何をおしゃってるのですか現在あなたには弟子は居ない筈では!!」


「この世界にはいないのう。じゃから呼ぶ事にした。異世界の時計塔に居る、――儂の不肖の弟子どもを」


その言葉にエルメロイは絶句する。それとは対照的にゼルレッチは愉快そうな顔で指示を続けていった。


(並行世界に居るあ奴等なら、この多重世界の違和感にも当然気付くだろうな。さてどう動くかのう――弟子共も、黒幕も)



並行世界の倫敦にて……

「「「はっくしゅん!!」」」

「「「へっくしゅん!!」」」


「大丈夫ですか先輩? やっぱり姉さんに真冬のテムズ川に落とされたのが後に引いてるのでしょうか?」

「ちょっと桜!! 一か月も前の事を蒸し返さないでちょうだい。それにしても6人同時に、しかもサーヴァント三人もくしゃみなんて何だか嫌な予感がするのは気のせい?」

「いえ、気のせいではないと思います、リン。この感覚は生前は私がお姉様達の思いつきの生贄になる前に感じていたものと酷似しています」

「姉貴達って事はギリシャ神話のゴルゴン3姉妹のステンノ、エウリュアレって事か。 なぁ、一度聞いてみたかったんだがお前の姉って一体どんな性格を……って、おいライダー? なんでそんなにガクガク震えているんだよ」

「ランサー!! ライダーにも一つや二つ聞かれたくない事もあるのが分からぬか! ……それよりシロウ。今日も冷えるようですから今夜は鍋にしましょう」

「分かった分かった。ちょうどルヴィアの所で仕事してきたら執事のオーギュストさんからいいお肉を分けてもらったから今夜はすき焼きにしよう」


並行世界にて賑やかそうに話をする魔術師とサーヴァント。この時はまだ自分達の運命がどう転ぶのか何も知らなかった。




鏡合わせの多重世界 第五話『Vs.Dragon Knights』




「問おう」「質問ですが」

「「ここはどこで」」

「そなた達は一体何者だ」「あなた達は一体誰ですか?」


「……何者って、アンタ達こそ何者?、どこからここに入ってきたのよ!?」

「そうですわ。そちらこそ名を名乗りなさい!!」


突如現れたエクストラ勢に質問を返す凛とルヴィア。ファングは予想外の事態に困惑するが今は戦闘が先なので話を進める為、意を決して会話の中に入っていく。


「会話なら後にしろ、今は奴等を叩くのが先決だ!!」

ファングはEXセイバーとEXキャスターのマスターの男女に顔を向ける。するとマスター達はお互い驚いた様子で見つめ合っていた。

「急いでいるので簡潔に言わせてもらうが――手の甲にある令呪、お前達がこのサーヴァント達のマスターでいいんだな」


ファングはEXセイバーとEXキャスターの方に指を指す。


「「「「「「「「「「っ!!!」」」」」」」」」」


その言葉にファングを除く全員が驚愕するが、ファングは構わず話を続けた。


「サーヴァントとマスター、おそらくお前達は二組ともどこか別の世界からこちらに転移してきたようだな。取り合えず簡潔に説明するがここは鏡面世界といって現実世界と鏡合わせで存在する世界だ。それで黒騎士達は悪玉で私達はそれを退治する為にこの世界に現実世界から侵入している善玉。理解したか? ちなみに質問は戦闘後しか受け付けん」
 
「ちょっと、令呪って何? サーヴァントのマスター? 別の世界? アンタ何知ってんのよ?」

「別の世界とはつまり第二魔法ということですか?」

「ほぅ、どうやらあの銀と黒の騎士は事象通らしい。それにしても酷い説明だ。だが簡潔で分かりやすい。奏者よ、余はこの者達に加勢するが良いか?」


その言葉に令呪を持つ少女が頷くと紅い騎士――いや暴君ネロは剣を構え直す。


「ならばこちらも歩調を合わせましょう。黒銀の騎士様に後で話しがあるのは勿論ですがそこの紅い騎士さんにも何で貴方のマスターが旦那様と同じ所に同じ形の令呪を持っているか話してもらいますよ」


おどけた様子で話す狐の半獣――玉藻の前だがその言葉には何とも言えない凄味が潜んでいた。

「抜かせ、それはこちらのセリフだ。何ゆえお前のマスターが月海学園の男子生徒の制服を着ているのかも含めて話してもらうぞ」

「何度も言うが戦闘中だ。鉄仮面の方――リュウガは私達三人が相手をするからお前達四人は其処の魔法少女二人と連携して、もう一人の方を頼む」

「余は命令されるのが嫌いなのだが」

「命令じゃないお願いだ」


ネロセイバーに対してファングがそう返すと『ならばよい』と呟き。今度は美遊とイリヤの方を見て言った。


「青い方の少女は戦えるだろう。しかしもう片方は黒騎士共の殺気に当てられて暫く動けぬと思うぞ」


確かにイリヤは怯えた容姿で体を震わしている。ステッキのルビーや美遊が声を掛けても全く反応していない様子だ。


「分かった。なら魔法少女抜きで頼む。ちなみにお前達が相手をするのはセイバーのサーヴァントで正体は円卓の騎士達の王、アーサー・ペンドラゴンだ。もっともアレは人格を持たない紛いモノだがな」


真名はアルトリア・ペンドラゴンだが、話せばさらにややこしくなると思い、ファングはアーサーという事で話を通した。

するとエクストラ組4人は驚いた顔をし、ネロセイバーとキャスターは同時に口を開く。


「あの愚か者のガウェインの王か!!」「あの忠義馬鹿さんの主様でしたか!!」


お互いの言葉にぎょっとネロと玉藻は見合わせ。


「何でお前がガウェインの事を知っておる?」「どうしてガウェインさんの事を知ってるのですか?」


敵を目の前にして問答を始めようとする二人であったが敵である|黒騎士《セイバー》はそんな事を許容する訳もなく横合いを一閃するが二人は当然が如く回避。すぐさま剣技と呪術によって応酬した。


「話は後にしよう、今は……」

「そうですね、今は……」

「「目の前の相手が先だ/です!!」」








ファングは召喚したウイングランサーを構えてリュウガと相対した。後ろにはライアとタイガも控えているがこちらも仕掛けてはいない。いや正確に言えば手を出せんないと言った方がいいかも知れない。

三人はリュウガから発せられるオーラに圧されていた。近くに居るだけで圧迫されるような強い存在感、鎧越しにこちらの肌を焼くような殺気がリュウガからは滲み出て三人は動けない。

だがそんな事は関係ないと言わんばかりにリュウガは動き出す。


『SWORDVENT《ソードベント》』


龍騎のソードベント、ドラグセイバーと色違いであるソレを召喚すると一息の間もなく切り掛ってきた。神速い斬撃にかろうじて反応したファングはウイングランサーでドラグセイバーを防ぐがあまりの力に壁まで吹き飛ばされ衝突する。


「ちっ!!…………」


かなりのダメージを受けたファング。しかし、大振りの斬撃というリュウガの隙の大きい動きを、控えていた二人は見逃しはしない。

ライアは既に召喚していたエビルウィップにてドラグセイバーを保持している方の腕を拘束し、タイガは召喚機である斧、デストバイザーを両手でリュウガのカードデッキに向かって振りおろす。

だが……


「なっ!!」


驚愕するルヴィア、なんとリュウガは片手でデストバイザーを掴んでいたのだ。尋常ならぬ力に両手であるタイガはデストバイザーを動かせなくなってしまう。

リュウガはそのままデストバイザーを片手で思い切り引き寄せると、タイガの腹部に躊躇なく蹴りをお見舞いする。


「――かはっ!!」


吹き飛ぶタイガ、そして合わせるようにリュウガは片腕に絡みついたエビルウィップを怪力によりライアを手繰り寄せた、ちょうどタイガと激突するように――。


「え! ちょっと――!!」


凄まじい力で引っ張られるライアと凄まじい勢いで吹き飛ぶタイガ。そして必然的に凄まじい勢いで衝突した二人はそのまま地面に転がった。


ダメージにより立ち上がる事もままならない二人にリュウガはさらなる追撃を加える為、腕の装着された召喚機、ブラックドラグバイザーにカードをベントインする。


『STRIKEVENT《ストライクベント》』


契約モンスターである暗黒龍ドラグブラッカー、その頭部を模したドラグクローを片手に装備するとリュウガは体を構え、未だに立ちあがれぬ二人のライダーを見据える。

ドラグクローから放たれる獄炎にて二体のライダーを葬り去ろうとするリュウガ……。


『FINALVENT《ファイナルベント》』

「私の事を忘れてしまっては困るな」


リュウガの頭上へと上昇したファングがウイングランサーに全重量を乗せ、飛翔斬で刺し貫こうと突貫する。

しかしリュウガは回避する様子もなく向かってくるナイトにドラグファイヤーを放った。

マントで全身を覆っているナイトには大した効果はない。ただ目くらましぐらいにはなる。


「なにっ!!」


視界を覆った炎が消えた時、リュウガの手にはシールドベント、ドラグシールドが存在した。激突する槍と盾、ウイングランサーは鉄を削るような音をたて、ドラグシールドはへこみ、ひしゃげ、破断する音をあげて壊れた。

盾とは本来、相手の攻撃を無効化するのではなく、相手の攻撃をどれだけ無力化できるかに真価が問われる。中世の盾は主に木と皮で作られ弱い作りになっているが、矢の攻撃は穴が開こうともそれによって威力を減衰させれば刺さらないし、相手の剣が刺さって食い込んだなら抜けなくなって相手の剣は使えなくなるのだ。つまり盾というものは壊れてこそ真価を発揮する。

ドラグシールドが破損した事によりナイトの飛翔斬の威力は減衰する。そして威力を失ったナイトの飛翔斬をリュウガはマントを掴んで止めてしまった。

リュウガはそのまま捕まえたナイトを蹴り上げ、空高く飛ばす。


『ADVENT《アドベント》』


間髪入れずに響いた声は黒き龍騎士の眷属たる暗黒龍を呼び出し、暗黒龍はただ主の敵たるナイトに火球を放った。。


ファングは無理に回避して隙を作るよりも、マントで防御ことを選んだ。だが直に間違いだった思い知らされる。


『駄目ですマスター!!』


ツヴァイの声が頭に響いたが、既に遅くファングは火球を食らってしまい、体の一部が石化した。忘れていたドラグブラッカーの火球は命中したモノを石化する効果があったのだ。しまったと思った時に体を動かす事も出来ず地面に落下する。


『FINALVENT《ファイナルベント》』


落下した後、かろうじて動かせる顔を上げ空を見る。そこには暗黒龍を纏わりつかせ浮遊するリュウガの姿が見えた。

左足のとび蹴りが迫る、迫る、迫る。本能が告げる。あれを食らえば終わりだ。何もかもが無に還る。

嫌だ、嫌だ、嫌だ。ファングは心の中で叫んだ。

自分はまだ何もなしていない。自分が何者かも理解していない。ただ状況に流されて来ただけだ。こんな事を終わるわけにはいかない。


(いや否だ。こんな所で終わる訳がない。だって自分は■■■…………)


『TIMEVENT《タイムベント》』


何かを思い出しかけた時、何処からそう声が聞こえた。








同じころ、別の場所で紅と黒の騎士が剣を交えていた。両者の動きはまるで舞踏の様で、正確には華麗な動きで敵に切り込むネロセイバーに黒騎士《セイバー》が追従した結果、まるで踊ってるか様に見えているのだ。


「……しかし近くで見れば、同じ衣装を纏ったなら見分けがつかぬほど余に似ているな。故に惜しい。あの愚か者のガウェインの仕えた高潔な騎士王なれば女としての騎飾りなど一度たりともした事がないのだろう。――だが同時に今の貴様がどれだけ麗しかろうとも美しくはない。真の芸術品には職人の魂が籠っているものだ。魂なき形骸はただ醜いいだけ、故に余が散らしてくれようぞ!」


ネロは一旦、距離を置くと剣を構え直し黒騎士へと再び接近する。ネロから繰り出される無数の剣戟。その剣戟は劇場に響く喝采がごとく黒騎士の体を震わせた。


「もう一つおまけにこれはいかがですか?」


機会を窺っていた玉藻は隙を突いて数発の呪法を黒騎士に叩きこむ。


「うむ、やったか?」

「それはやってないフラグですよ!」


ネロの言葉に突っ込む玉藻。そして指摘通り呪術の連発によって発生した煙の中ら人影が見えた。

纏っていた鎧は姿を消していたがその両手に握られた聖剣に魔力が収束ている。


「どうやら宝具を使うらしい。勝利すべき黄金の剣《エクスカリバー》か、流転する太陽の剣《ガラティーン》の姉妹剣であるからに威力は同格かそれ以上。食らうとまずいな。キャスター何とかならぬか?」

「それはこちらの台詞ですよ。あんなヤバめな必殺技、まともに食らうとお陀仏ですね。ガウェインさんの時は何とか持ちましたけど、獣の本能があの時よりヤバいと囁いてます」

「こうなったら余の……」

『――我が骨子は捻り狂う』


ネロが言い終える前にネロと玉藻の間を一本の矢が凄まじい速度で通過する。


「「なっ!」」


『壊れた幻想《ブロークンファンタズム》』


黒騎士に着弾した同時に矢は爆発する。そのことにより魔力の収束が止み、宝具が不発に終わった。

間髪入れずに矢を入れた本人が白と黒の双剣にて黒騎士へ斬りかかる。


「そなたは/あなたは!!」


ネロと玉藻の視線の先。そこには黒の軽装の上に赤のコートを着た――イリヤスフィールの姿があった。




時間を少し遡る。


イリヤスフィールは眼前で行われている黒い騎士と紅い騎士、それに青い着物を着た女性の戦いを茫然と見つめていた。


『■■■さん、■■をしてください。■■■さん。■こえているんですか?』

『■■■! ■■■! お■い■■をして!!』


誰か自分を呼んでる気がしたがイリヤの意識はすでにここにあってないようなモノとなっていた。

あの黒騎士を見てからイリヤの中で覚えのない既知感に溢れていた。


――知っている。識っている。視っている。


早く呼び出さないと死んじゃうよ。■ちゃん。/ヤっちゃえ、■ー■ー■ー/私はシ■ウを信じているから……。


知りもしないはずの記憶がイリヤを駆け抜ける。


(あの黒騎士の正体はシ■ウのサーヴァントのセイバーだ。それにあの姿はアン■マ■に汚染された)


そうだ、汚染されたセイバーと戦ってバー■ー■ーは……。


あれは敵だ。私に仇なす敵。障害は排除しなければならない。ではどうやって? ――手段ならすでにある。クラスカードを使えばいい。あの弓兵《アーチャー》、いや正義の味方《エ■ヤシ■ウ》ならばあの敵を打倒する事ができる。


『えっ、■■■?』

『どうしたんですか■■■?』


周り《ソト》から何か聞こえるが関係ない。


『――忘れるなイメージするのは常に最強の自分だ。外敵など要らぬ。■■■にとって戦う相手とは、自身のイメージに他ならない』


そうだ、自身の戦いは外敵とのものではなく、封印された自身《イリヤスフィール》とのせめぎ合いなのだ。


「夢幻召喚《インストール》」


私に何かが入り込むのが分かる。経験が流れ込んでくる。


「So as I pray,unlimited blade works.『そう、きっと――――体は剣で出来ていた。』」


そう呟いた時、私の中の枷は完全に外れていた。



……………………………………………………………………………………………………………………………



イリヤスフィールは投影した干将、莫耶にてセイバーを肉薄していく。


ネロと玉藻は茫然と見つめている。イリヤが圧されていたならば二人も援護に回っただろうが違うのだ。

イリヤは圧していた。ネロでさえ手こずった黒騎士をまるで相手の太刀筋が分かってかの如く相手を追い詰めている。

ネロは剣を使う者としてあの太刀筋をどう表現したらいいのか分からなかった。

決して綺麗な太刀筋ではない。むしろあの太刀筋は才能のないモノが何度挫けようと諦めずに鍛錬した結果身につけたものだろう。泥臭くあるが洗練されている。


「美しい……」

「っ!!」


思わず口から洩れた台詞に、パスで繋がったネロのマスターも驚いた様子でイリヤの方をしっかりと見つめ直す。


(カラクリが読めたぞ。あの少女、英霊の力を借り受けているな。あの武器からいって中華の英霊か?)


そう思った時に信じられない事が起こった。


イリヤが双剣を黒騎士《セイバー》に向けて投擲したのだ。


(馬鹿なわざわざ獲物を放棄するとは、一体に何も考えておる?)


「壊れた幻想《ブロークンファンタズム》」


「なっ!!」

投擲した剣が爆発した最初の矢のように。……そしてさらに予想を上回る出来事が起こったのだ。


「約束された《エクス》っ!」


イリヤスフィールの両手に黒騎士と同じ剣が現れ、イリヤはそれに自身の莫大な魔力を込める。


「勝利の剣《カリバー》!!!」


黒騎士も同じく宝具にて応戦しようとするが間に合わず、凄まじい閃光に包まれた。


光が消えた後、其処に黒騎士の姿はなくセイバーのクラスカードだけが残され、イリヤスフィールはカレイドライナーに変身する前の私服に戻って倒れる。


「一体何がどうなってるんでしょうか?」

「分からぬ。余に分かるのは消滅した筈の余と奏者が再びここに存在して、また厄介事に巻き込まれた事だけだ」


玉藻の問いにネロはそう答える。

玉藻が「同感ですね」と返すと二つの主従は美遊達と同じく倒れているイリヤに駆け寄っていった。









「随分、苦戦している様じゃない。元々はアリシアを守る為に作ったというのに不甲斐ないわね、やはり|あの子《フェイト》に手を加えて造ってもこの程度が限界だったのかしら。」


何もかもが止まった空間で俺と目の前の存在だけ動いていた。


「アンタは……」

「黙りなさい、あなたとお喋りしている暇はないの。……神崎もこれほどの事態は予想してなかったけれど、三体目にして完全に顕現しているとは――しかたないわね」


金の羽がはためくと目の前に一枚のカードが現れた。


「サバイブしなさい。そうすればあの異物《リュウガ》を圧倒できる。――ただし時間をかけ過ぎれば命に関わるから」

「…………」


俺は目の前の存在、仮面ライダーオーディンとサバイブ:疾風のカードの出現にただただ困惑した。


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