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【MHP 3rd】第16回 山手線のハプルボッカ

 土曜日(12月11日)、とある仕事をこなすために都内にやってきた。この週末は家に閉じこもって『3rd』をむさぼりプレイしてやろうと思っていたが、仕事となれば仕方がない。それでも、仕事の行き帰りに電車の中で遊べるだろうと、カバンに『3rd』のUMDが入れっぱなしになっているPSPを忍び込ませた。

 そして無事、ある芸人さんたちとの収録を終えて、この日のお仕事は終了。ありがたいことに、かなり巻き(早め)で片付いた。さあ帰ろう。帰って『3rd』で遊ぼう。そうしようそうしよう。

 その現場からちょっとでも早く家に帰ろうと思ったら地下鉄を利用するのがイチバンだった。が、俺は時間的余裕から得た安心感により菩薩のような心境となり、「のんびりと山手線に乗って帰ることにしよう」とつぶやいた。たまにありませんか? こういうこと。

 しずしずと乗り込んだ山手線は、意外なほど空いていた。チラホラと立っている人もいたが、ポツポツと空いている座席もある。そんな感じの混みようだ。ふだん、その程度の空き具合ではまず席に座ることはないのだが、このときは「ちょっとでもいい環境で『3rd』をプレイしたい!」という思いが強く、ラングロトラのベロのごとき素早さでそのひとつに滑り込む。そしてすぐに、カバンからPSPを取り出そうとした。

 しかしそこで、俺の隣に座っていたかなりキレイ(強調)な女の人の動きが、視界の端から脳髄に飛び込んできた。歳のころは、20代後半くらいか。長い髪が印象的な美人である。カバンに突っ込んだ手を止めて、ついつい目の端でその人の動きを追ってしまう。何かを予感していたのかもしれない。するとその人は太ももに乗せていたCOACHのバッグから、とある物体を取り出したではないか。なんとそれはPSP。しかも、最新のハンター工学に基づいて作られたという、かの“ハンターズモデル”ではないかっ!!

!!! ハッ! ンターズモデルだ……

 思わず声が漏れそうになる俺。でも、そりゃあそうでしょう。山手線の車内で隣に座ったキレイな女の人が、コンパクトやケータイを取り出すがごとき自然な振る舞いでハンターズモデルを取り出したんだから。

 こうなったら、もう俺の視線は釘付けである。

 チラリチラリと、その女の人の動きを追い始める俺。チラリチラリと言うわりには、どんな細かな動きも見逃すまいと横目ながらギロギロと凝視する。いま思うと、明らかに気持ち悪いオヤジである(自分で言うな)。

 彼女は不気味なおっさんが凝視していることも気づかずに、慣れた手つきで電源スイッチをスライドさせる。どうやら『3rd』がスリープ状態になっていたようだ(決め付け)。パッと光を発する液晶画面。見ると彼女の分身は、ユクモ村の村長にいままさに話しかけんとしているところだった。思った通り、PSPに入っていたソフトは『3rd』だったのである。

(さあさあ、なんのクエストを受注するんだ?)

 ウキウキしながら横目凝視を続ける俺。すると彼女はなんと、村長★4のクエスト“砂上のテーブルマナー”を受注したではないかっ!! そう、かの難敵“ハプルボッカ”の討伐クエストである。

ハッ!! ……プルボッカかよオイ……

 またまた声が漏れそうになる。それほどの衝撃を受けた。

 ちょっと話が逸れますが、12月13日現在で88時間ほどプレイした俺の感覚だと、このハプルボッカというモンスターは“(現時点での)手こずる相手ベスト3”に堂々ランクインするほどの“クセモノ”だと思う。新モンスター特有の「何をされるかわからない!!」という恐怖にプラスして、四六時中砂の中に潜っていることからくる攻撃しにくさ、さらに射程の長い砂のブレスやジョーズを想起させる噛み付きなどがどれも恐ろしく、「なるべくならお付き合いしたくない!」と思わせるに十分な存在感を放っている。しかもいまだ、支給品として配られる音爆弾をどのタイミングで投げていいかわからねえし……。そんなハプルボッカに、この勇猛な女性は挑もうとしているのである。

(山手線のジャンヌ・ダルクだ!!)

 と、俺は心の中で叫んだ。

 ほどなく、彼女の分身は砂原フィールドのベースキャンプに現れた。そしてここでまたまた俺は、叫び声を上げそうになる。

!!! ガッ!!! ンランスだよこのシト……

 そう、ジャンヌさんはガンランスを背にして砂原に現れたのである! ……まあべつに驚く必要もないのだが、まさかここで我がメイン武器と同じガンランスを背負ったハンターに出会えるとは夢にも思っていなかった。えーっと、この武器は……“真ユクモノ銃槍”かな? だとしたら、かなりいい選択だ。真ユクモノ銃槍は、攻撃力、斬れ味ともに非常に優れているからね(エラそう)。

 ジャンヌさんはわき目も振らずに砂漠地帯に突入し、まもなく恐怖のハプルボッカに遭遇した。その迷いなき行軍は、ジャンヌさんがかなり手練のガンランサーであることを物語っていると言える。ワクワクが止まらない俺。さあさあ、その気高き銃槍でもってハプルボッカを焼き魚にしちゃってちょーだい!!

 ジャンヌさんは背負ったガンランスをおもむろに前に突き出し、ハプルボッカの顔面目掛けて武器出し攻撃をお見舞いしようとする。しかし。

 ガキーーーンッ!!

 は、弾かれた!! ハプルボッカの顔はかなーり堅いけど、斬れ味の緑ゲージが長い真ユクモノ銃槍だったら問題なく刺さるはず……。ってことは、ジャンヌさんが持っている武器はほとんど斬れない古ユクモノ銃槍か、ユクモノ銃槍あたりってことか!

 それでもジャンヌさんはめげず、ツンツンツンとガンランスの突き攻撃をハプルボッカ相手にくり出している。しかし、1発も砲撃を出さない。それどころか、彼女のガンランスには1発も弾が装填されていない

(ホラッ! 弾を装填してッ! 新ガンランスは砲撃がステキなんだからサッ!)

 ついつい口出ししたくなる俺。しかしジャンヌさんはひたすら突きをくり出して、砲撃するそぶりすら見せない(弾入ってないから撃てないけど)。その立ち回りは、丸っきりノーマルのランスである。

(ホラッ!! ボッカの動き止ってる! そこで突き2回やって叩きつけて、渾身のフルバーストをっ!!)

 心の中での発言ではあるが、我がことながらうるさいったらありゃしない。

 しかし、ジャンヌさんは慣れぬガンランスを持ったせいかハプルボッカにいいようにもてあそばれ、1回、2回と昇天していく。ああ……。手伝ってあげたい!! 俺がそう思った矢先に、ついに3度目の昇天をしてしまう。あああ……。残念……。自分のことのように落胆する俺。そんな俺の耳に、意外すぎる音が飛び込んできた。

「チッ!!!」

 し、舌打ちキターーーッ!! ま、まさかこんなキレイな人が舌打ちをぶっ放すとは思わず、目を剥いてしまう俺。でもまあ、これだけボロボロにやられたら、ついつい舌打ちも出ちゃうわなあ。うんうん、そうだよね。悔しいよね。わかったわかった。皆まで言うな。ここはひとつ……。

「うぉっほん!!」

 俺はじつにわざとらしい聞こえよがしの咳払いをかましたのち、大げさな手振りでカバンからPSPを取り出した。そして必要以上にPSPを前にかまえ、ジャンヌさんに画面が見えるようにする。俺もハプルボッカは苦手だけど、3オチするようなことはないかんな。ひとつお手本に、ガンランスによるハプルボッカのしばきかたを見せてやるかんな!

 俺はユクモ村の村長に話しかけ、ジャンヌさんと同じく“砂上のテーブルマナー”を受注。砂原に向かった。その瞬間、ジャンヌさんの視線を確かに感じる。いやあ、ドキドキするな……。でもここで華麗な立ち回りを見せたら間違いなく尊敬され、もしかすると「あの……。よろしかったら、ギルドカードの交換などさせていただけたりしませんでしょうか(ハート)」なんてことになるかも!! うおおおお! 燃えてきた!! 待ってろハプルボッカ!!

 プッシューーーー。

 山手線が、どこぞの駅に到着した。

 そしてジャンヌさんは何事もなかったかのように立ち上がり、俺のことなど一瞥もせずにスタコラサッサと電車を降りていった

 俺はこれ以上ないくらい赤面し、静かにPSPの電源を落とした。

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投稿者 大塚角満 : 14:16

大塚角満

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週刊ファミ通副編集長にして、ファミ通グループのニュース担当責任者。群馬県出身。現在、週刊ファミ通誌上で“大塚角満のモンハン研究所”というコラムを連載中。そこら中に書き散らした『モンハン』がらみのエッセイをまとめた単行本『本日も逆鱗日和』シリーズ(4巻)が発売中。また、そこからのスピンオフとして別の視点から『モンハン』の魅力に迫る書き下ろし作品『別冊『逆鱗日和』 角満式モンハン学』シリーズも。このブログではさまざまなゲーム関連の話題を扱うつもり。一応、そのつもり。


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