2010.12.6
■ 大卒就活をめぐる事情概観 ■
[ 大学教育の現場問題 ]
◎ 日本の若者と人生設計 ◎
【一国の活力は若者の双肩にかかっている】
本日の記述は,ここ3~4日において報道された新聞記事・特集記事を題材にとりあげ,しかも早走り的に寸評をくわえる「大学論」としたい。昨今における「日本の大学」を囲む問題状況を理解するための記述としたい。あえて,それ以上に突っこんだ分析にはしないので,その旨を諒解のうえ読んでほしい
① 就活事情:その1
『日本経済新聞』12月3日朝刊は「就活 異変(上) すれ違う学生と企業,ネット公募に限界」という特集記事を掲載している。まずこれを取捨選択しつつ適宜紹介する。
来春卒業予定の大学生の就職内定率(10月1日時点)が57%と就職氷河期だった2003年度を下回り,過去最低になった。不安に駆られる学生の就職活動は早期化・長期化し,大手企業は押し寄せる応募者の中から人材をみきわめきれない。先行き不透明な景気にくわえ,学生と企業のミスマッチも就職難に拍車をかけている。「内定よこせ」「エントリーシート燃やせ」――。勤労感謝の日の11月23日,約50人の大学生らが就活の現状への不満を叫びながら東京・新宿の繁華街をデモ行進した。呼びかけ人の1人,神奈川大学経済学部4年の本間篤さん(21歳)は約20社に応募したが,まだ内定をえていない。「どれだけ受けても落ちるのが当たり前の就職環境をしってほしい」と話す。
景気回復とともに解消した過去の就職難。今回はこれまでみられなかった現象も目立つ。すっかり定着したインターネットによる自由公募では,応募者に説明会の日時などを電子メールで通知。エントリーシートを受け付けて絞りこみを始めるのが一般的だ。1人で100社以上に応募するのも珍しくない。人気業種や有名企業には志望動機も定まらない応募者も殺到。特定の学生に内定が集中する一方で,面接に至る過程で人材をとりこぼしている可能性もある。企業と学生を橋渡しするネット公募がミスマッチを拡大させている側面がある。採用支援のレジェンダ・コーポレーションが今秋,企業の採用担当者に実施した調査では「ネット公募に頼っていては望む人材は集まらない」との答えが目立った。
リクルートの大卒求人倍率調査によると10年度の民間就職希望者数は45万5700人と1990年度比で1.5倍超。今年度の大卒求人総数は58万1900件と1990年度比で31%減少した。景気不安が就職難の大きな原因なのは間違いないが,企業もグローバル競争に備えた人材を求め,事業の選択と集中で業務の選別を進めるなど変化している。企業と学生のミスマッチを解消しなければ就職難の解決にはつながらない。
注記)『日本経済新聞』12月3日朝刊。
リクルートの大卒求人倍率調査によると10年度の民間就職希望者数は45万5700人と1990年度比で1.5倍超。今年度の大卒求人総数は58万1900件と1990年度比で31%減少した。景気不安が就職難の大きな原因なのは間違いないが,企業もグローバル競争に備えた人材を求め,事業の選択と集中で業務の選別を進めるなど変化している。企業と学生のミスマッチを解消しなければ就職難の解決にはつながらない。
注記)『日本経済新聞』12月3日朝刊。
この記事は,大卒の求職と企業側の求人とのあいだにおいて,より顕著になっている「ミスマッチ(不一致)」を問題視する。ここには「インターネットによる募集形式にも問題あり」という指摘もなされている。ともかく求人する側の企業は,グローバル化した企業経営の運営体制に適応し活躍できる人材を求めている。ところが,これに応じられる「大卒というにふさわしい基本能力」を身に付けて卒業する日本の大学生が,はたしてどのくらい,いるのか? 大学生に対する「2010年度の民間就職希望者数は45万5700人」というが,いまの大学は,企業側の期待水準にかなうような若者を,どのくらい送りだすことができているのか?
② 就活事情:その2
『日本経済新聞』2010年12月4日朝刊はつづいて「就活 異変(下) 国籍不問の採用競争 脱・内向き,学生に迫る」と分析している。
中国の新卒採用市場では,国有企業や待遇の良い欧米企業の現地法人が人気である。日本企業の存在感は薄いとされてきた。尖閣諸島/問題の影響も懸念されたが,北京大学や清華大学などのトップ校を中心に約7000人の学生が応募してきた。各大学の担当者らを驚かせた。イベント当日は筆記試験や面接を通過した約700人の学生が集った。日本語教育でしられる大連理工大学の男子学生(22歳)は「日本の本社で働くチャンスをもらえた私はラッキーだ」と目を輝かせる。中国の大学新卒者は630万人。海外志向の学生も多い。内向き志向が強まったという日本の大学新卒者は56万人だ。
一方で,産業能率大学の調査によると「海外で働きたいとは思わない」という新入社員が2010年度に49%(01年度は29%)に達した。内向き志向をどう改善するか。国内大学も知恵を絞る。上智大学は12年度から外国語学部ドイツ語学科の2年生に1年間の留学を義務付ける方針。近畿大学は本部キャンパス(大阪府東大阪市)内に日本語禁止の「英語村」を設けた。学生は外国人職員に囲まれて疑似的な留学を体験できる。
商社の業界団体,日本貿易会が会社説明会などの広報活動を始める時期を現在の大学3年生の秋から,翌年の2~3月以降に見直すよう提案した理由のひとつも留学。就職活動のために留学を断念したという学生の声が多かったためである。東京大学副学長の松本洋一郎氏は「外から日本を眺めると,それまでの常識を相対化できる」と話す。複眼的な思考力を持った人材の獲得・育成は国際競争力の向上に欠かせない。
注記)『日本経済新聞』2010年12月4日朝刊。
各国の企業経営は,国境を越え,地球規模で相互に入りみだれて事業を進出・展開させている。こうした現状のなかでこそ,たくましく活躍できる人材の調達が,どの国のどの会社でも人事・労務管理上,最重要の経営課題になっている。本ブログがこれまでなんども言及してきたように,日本の大学と産業界側の人材「需給」関係に発現している〈特殊事情〉は,将来における日本国じたいの展望にとってマイナス要因である。大学3年次から就活を始めさせるような大卒人材に対する労働市場の異様さは,このさいあらためて抜本からの改善を迫られている。
③「米国留学,日本の学生減るばかり 中国からは急増」
米国に留学する日本人学生数の減少に,歯止めがかからない。米国際教育研究所(IIE)が先月発表した米国の大学・大学院の外国人留学生数(2009~2010年)によると,日本人留学生は約2万4800人で,全体の6位。前年より15.1%減り,上位25カ国中,最大の減少率だった。米国への日本人留学生数は1994~1998年にかけては世界一だったが,1997~1998年の4万7千人をピークに減少傾向がつづく。
一方,今回インド(10万4900人)を抜いてトップになったのは,中国(12万7600人)。前年比30%増だった。世界的な不況の影響もあり留学生数が減る国や地域が多いなか,中国の大幅増により,米国への外国人留学生の総数は前年比3%増の69万1千人で過去最多だった。日本人留学生のうち最多は学部への留学で52.6%。大学院は21.7%,その他が25.7%だった。一方,中国は学部が31.3%なのに対し,大学院が52.1%。2位のインドも学部が14.5%,大学院が65.1%と,大学院への留学生の割合が高いのが特徴だ。
日本からの米国留学の大幅減について,在日米国大使館は「若者人口が減っていること,日本国内の大学数がいちじるしく増えていること,きびしい経済状況下での就職競争の激化が留学をためらわせていることなど,多様な要因が考えられる」としている。米国留学の窓口となっているフルブライト・ジャパン(日米教育委員会)のサターホワイト事務局長は「グローバル化が進む中,経済や人材育成の面で日本の国際競争力の低下が心配だ。より多くの日本の若者に米国留学をめざしてほしい」と語っている。
注記)http://www.asahi.com/national/update/1206/TKY201012060068.html
2010年12月6日11時2分 配信。
この報道を読むかぎり,日本の大学生のアメリカ大学・大学院への留学は,学生総数に照らしてみても絶対的な減少傾向が顕著である。この傾向のなかに,国際経済時代における日本の高等教育の人材育成の弱体化がみてとれる。はたしてこの傾向がこれからも継続するほかないとすれば,日本の将来に多くを期待することができなくなるかもしれない。
④「英国やイタリアの学生デモが暴徒化 学費値上げに反対」
産経新聞が「2010.11.25 19:22」に配信したニュースは,「金融危機の後遺症で欧州各国が財政に大なたをふるうなか,学費値上げに反対する学生が英国やイタリアで議会に突入を試みるなど暴徒化した」と伝えている。キャメロン英政権は財政難を背景に,イングランド地方で大学の学費を年3290ポンド(約43万円)から9千ポンドに値上げする方針で,ウェールズ,北アイルランド両地方もこれに追従する見通しだ。
英国では学生自身がローンを組んで学費を出すのが普通で,大学卒業時の借金が激増する学生らが「大学に通えなくなる」と反発。今月10日には,抗議行動で約70人が逮捕され,24日も議会などに学生数千人が集結,警察車両や財務省の窓ガラスを破壊した。警官隊との衝突で17人が負傷している。オックスフォードやケンブリッジなど少なくとも12大学に抗議活動は拡大した。連立を組む自由民主党が学費の段階的無料化を選挙公約に掲げていたことも学生の怒りを増幅させている。イタリアからの報道によると同日,教育予算削減に反対する教員,大学生らのデモ隊数十人が「(ジェルミニ教育相は)辞めろ」と連呼,発炎筒や石,卵を投げながら伊上院に突入。学生2人が拘束された。中部フィレンツェでもデモ,集会がおこなわれ,中部ピサでは橋が占拠され,交通機関が一時マヒした。
注記)http://sankei.jp.msn.com/world/europe/101125/erp1011251923002-n1.htm
もっとも,このイギリスやイタリアの学生が示した行動に関して「イタリアにご滞在中の方,およびイタリアへご旅行をご予定の方は,ご注意ください」「また,くれぐれも興味本位で,抗議集会やデモ活動をおこなっている場所へ立ち入らぬよう,お願いいたします」と注意するほど大規模な行動なのかどうか,日本にいてはよく分からない。
注記)http://www.otoa.com/news_detail.php?id=18908 参照。
日本にいるわれわれにはその騒動の真相は分かりにくいけれども,学費を3290ポンド(約43万円)から9千ポンド(約118万円)に値上げする「案」は,べらぼうな値上げ幅である。学生だけでなく,彼らの親たちまでも騒いで当然ではないか。だが,いまから40年もまえ日本の大学では,一般学生まで巻きこんだ「学費値上げ闘争」が起こっていた。日本には,前段のニュースの報道する以上の大規模な騒動が,毎日起こされてきた歴史がある。しかしながら,いまの日本の大学生が「大学に通う若者」としてその後は,すっかり「学費値上げ」とは無縁の若者集団になっている。それよりもなによりも就活大事というわけである。
⑤ 元気のない日本の若者
『日本経済新聞』11月28日(電子版 2010/11/28 4:00 配信より引用)は,論説副委員長脇 祐三が執筆した「消えるグローバル人材 語らぬトップ,内向く若者 ニッポンこの20年 第3部(1)」という記事を掲載している。若干省略しつつ引用する。
世界の中での日本の存在感はこの20年で著しく低下してしまった。中国をはじめとした新興国が台頭しているせいもあるが,それだけではない。世界に積極的にかかわろうとしない内向きな姿勢がニッポンの影を薄くしている。第3部「薄れた存在感」では,グローバル人材の枯渇や経済統合の流れへの乗り遅れなど様々な事例を追いながら,影響力を高めていくための道を探る。
20年前,世界の課題は冷戦終結後の新世界秩序の構築だった。そのころ日本もバブル景気の熱気を残し,株価がピークを越えたのちの1990年末でも,東京証券取引所の時価総額はなお世界1位だった。多くの国際会議に参加してきた行天豊雄・国際通貨研究所理事長は「当時の世界には日本の経済や金融の力,強い競争力をもった製造業への戦略的な関心があった」と述懐している。
だが日本への関心は徐々に薄れた。バブル崩壊後,不良債権問題が新たな関心事になったのに,大手邦銀のトップが自ら国際会議で日本の金融の状況を語ることはほとんどなかった。その間に中国が台頭し,情報発信を格段に強化した。その影響もあり,日本への関心は相対的にさらに低下したと,行天氏は言う。
2008年冬のダボス会議での「日本・忘れられた大国?」と題する分科会は象徴的だった。同年夏の洞爺湖サミットを控え,議長国に焦点を当てる狙いだったが,パネリスト全員と聴衆の大多数は日本人。司会の竹中平蔵・慶大教授が英語で始めると「日本語で」という声が上がり,日本語での議論に終始した。内容も世界のなかでの日本の役割ではなく,国内問題ばかり。出席した黒川清・政策研究大学院大学教授は「日本はグローバル社会から身を引きたいのか」とブログに記した。
海外経験評価せず。--ビジネスでも層の薄さは深刻だ。日本経済の輸出依存度は90年代よりも高く,成長の中心は新興国に移っている。だが新興市場で,日本企業は韓国勢に後れをとる例が多い。「日本企業は自分たちがつくってきたモノを売ろうとし,韓国企業は売れるモノを自分たちがつくろうとする」。東レ経営研究所のリポートはこう指摘している。
産業能率大学の今年の新入社員意識調査で「海外では働きたくない」比率は49%に達する。米ハーバード大の日本人留学生は今や中国の5分の1以下,韓国の3分の1以下で,人口約500万人のシンガポールよりも少ない。内向き意識が強まる一因は「海外で勉強した人や活躍した人をちゃんと評価し,処遇してこなかった日本企業の風土にある」(佐々木常夫・東レ経営研究所特別顧問)。
ようやく日本企業もグローバル人材の育成強化に乗り出した。日立製作所は11年度の採用から文系の100%,技術系の50%をグローバル要員と位置づけ,20代のうちにアジアを中心とする海外事業の現場に送り込むという。菅原明彦・人財開発部長は「世界の産業と市場の構造変化に合わせ,意識して人のあり方も変える」と説明する。
日本の1人あたり国内総生産(GDP)は近年,シンガポールを下回りがち。ひと昔前までインドからの留学生数で日本は中国よりも上だったのに,今や中国には日本の10倍のインド人留学生がいる。中国が招致を強めた結果だ。斉藤 惇・東京証券取引所社長は「日本はアジアで一番という思いこみを,まずなくせ」という。オピニオン発信力の強化,グローバル人材育成への投資と意識改革が,日本の次の10年を左右する。
注記)『日本経済新聞』2010年11月28日朝刊。
20年前,世界の課題は冷戦終結後の新世界秩序の構築だった。そのころ日本もバブル景気の熱気を残し,株価がピークを越えたのちの1990年末でも,東京証券取引所の時価総額はなお世界1位だった。多くの国際会議に参加してきた行天豊雄・国際通貨研究所理事長は「当時の世界には日本の経済や金融の力,強い競争力をもった製造業への戦略的な関心があった」と述懐している。
だが日本への関心は徐々に薄れた。バブル崩壊後,不良債権問題が新たな関心事になったのに,大手邦銀のトップが自ら国際会議で日本の金融の状況を語ることはほとんどなかった。その間に中国が台頭し,情報発信を格段に強化した。その影響もあり,日本への関心は相対的にさらに低下したと,行天氏は言う。
2008年冬のダボス会議での「日本・忘れられた大国?」と題する分科会は象徴的だった。同年夏の洞爺湖サミットを控え,議長国に焦点を当てる狙いだったが,パネリスト全員と聴衆の大多数は日本人。司会の竹中平蔵・慶大教授が英語で始めると「日本語で」という声が上がり,日本語での議論に終始した。内容も世界のなかでの日本の役割ではなく,国内問題ばかり。出席した黒川清・政策研究大学院大学教授は「日本はグローバル社会から身を引きたいのか」とブログに記した。
産業能率大学の今年の新入社員意識調査で「海外では働きたくない」比率は49%に達する。米ハーバード大の日本人留学生は今や中国の5分の1以下,韓国の3分の1以下で,人口約500万人のシンガポールよりも少ない。内向き意識が強まる一因は「海外で勉強した人や活躍した人をちゃんと評価し,処遇してこなかった日本企業の風土にある」(佐々木常夫・東レ経営研究所特別顧問)。
ようやく日本企業もグローバル人材の育成強化に乗り出した。日立製作所は11年度の採用から文系の100%,技術系の50%をグローバル要員と位置づけ,20代のうちにアジアを中心とする海外事業の現場に送り込むという。菅原明彦・人財開発部長は「世界の産業と市場の構造変化に合わせ,意識して人のあり方も変える」と説明する。
日本の1人あたり国内総生産(GDP)は近年,シンガポールを下回りがち。ひと昔前までインドからの留学生数で日本は中国よりも上だったのに,今や中国には日本の10倍のインド人留学生がいる。中国が招致を強めた結果だ。斉藤 惇・東京証券取引所社長は「日本はアジアで一番という思いこみを,まずなくせ」という。オピニオン発信力の強化,グローバル人材育成への投資と意識改革が,日本の次の10年を左右する。
注記)『日本経済新聞』2010年11月28日朝刊。
かつて経済大国の名実ともに担い手であったこの日本が,最近は元気ない。とくに若者層の元気のなさは,日本の経済・産業・企業がこのさき,はたして世界的基盤において活発に行動できるかさえ懸念させかねない「内向き意識」を反映させている。21世紀において「井の中の蛙」的な日本になりたくないのであれば,若者の教育を制度基本的に方向転換させねばならない。このことは当然の要請である。
「日本・忘れられた大国?」になってもいいのか? それとも,ブータンみたいに「国民総幸福量(Gross National Happiness)」をめざせる国になればいいじゃないか,と開きなおれるのか。その種の覚悟も展望もないとすれば,日本国内の企業経営も,そして大学「経営」も,人材育成や教育政策の理念や方法においては,最低限「身の丈に合った未来戦略」を樹立していかねばならない。
⑥「〈大機小機〉競争社会をとりもどす必要」はあるのか?
政治は農業の保護を最重要課題としてきたが,その保護も老齢化の前には無力である。保護の名目でいくら予算を積んでも,予算が農作業をするわけでない。農業のありかたを抜本的に見直し,魅力ある産業に育て上げ,民間資本の参入を促さないかぎり,農業に明るい未来はない。日本企業の競争力も劣化している。「世界の」という形容詞を冠せられる企業が何社あるのか。投資家は企業に投票し,株価を決定する。現実の日本は,株価低迷が長期間つづき,世界の時価総額ランキングから脱落する企業が相次いでいる。その一方,危機感のない上場企業が目立つ。株主のみならず従業員さえ幸福にできず,それでいて地位に執着する経営者が多すぎる。
上場企業から上場資格をとり上げるのはむずかしい。では,時価総額や企業業績の劣る企業を東証第1部から第2部へと,もっと積極的に指定替えできないのか。狙いは第1部を日本代表だけの市場とすることにある。そうすれば,企業は指定変えされないように努力し,競争するから,株価指数も自然と上昇する。もっとも重要なのは,教育である。大学入学が難しく,卒業は簡単といういまの制度は完全に間違っている。楽しい大学では,世界のレベルにとり残されて当然であり,グローバルな競争に完敗してしまう。
そこで,一定の学力があると認定されれば,どの大学にでも入学できるようにする一方,入学後には毎年きびしい進級要件を設けるべきである。卒業できない学生が大量発生する。だからこそ学生は必死に勉強する。残念ながら,教育は長期投資だから,いますぐ実行しても手遅れかもしれないが,グローバルな時代を生き残るためには,競争を恐れないことである。競争を避ければ,日本全体が地盤沈下していくのは必定だ。
注記)『日本経済新聞』2010年12月4日朝刊。
出所)図表は『日本経済新聞』2010年11月28日朝刊。
この〈大機小機〉のとなえる「競争」が,いったいどのようなものであるのか,もうひとつ明快ではない論及である。それにしても,現状における日本の大学に対して「毎年きびしい進級要件を設けるべきである」といっても,これはほとんど空念仏である。誰がどのようにしたら「学生は必死に勉強する」大学にできるのか? 就活で半年どころか,1年半も時間を浪費させるような「日本の大学制度」のなかでの「就活模様」がある。これを根本から解消させえないで,そのような制度いじりを勧奨しても,なにも動かせないし,もちろんかわりもしない。
『朝日新聞』2010年12月4日朝刊「オピニオン〈耕論〉早すぎる就活」は,「遅らせてみたら多様な人材」(臼居 裕:キヤノンマーケティングジャパン取締役人事本部長),「企業や学生は横並び脱却を」(岡崎仁美:リクルート社「リクナビ」編集長),「学んだ学生を卒業後に採れ」(中嶋嶺雄:国際教養大学理事長・学長)などの意見を紹介している。いずれも,日本の大学生が「学生としてまともに勉学に励む」ための〈勧め〉であるけれども,現状のようにもつれた事態は,このような正論=一筋縄では解決のみとおしすらつかかない。
⑦「働く15~19歳,非正規雇用が4割 学生バイトは除く」
2010年12月3日の asahi.com の記事は,内閣府『子ども・若者白書』(2010年版)に触れている。
仕事をしている15~19歳のうち,非正規雇用の割合が2007年で40.2%に上っていることが12月3日,内閣府の「子ども・若者白書」(2010年版)で明らかになった。学生アルバイトを除いた「非正規労働者」の割合で,20~24歳も32.5%。内閣府は「高校や大学を卒業しても正社員になれない雇用環境の厳しさを反映している」とみる。学生アルバイトを除く2007年の非正規労働者は,15~19歳が18万4500人。20~24歳が128万8300人。
内閣府はこれまで,高校生や大学生のアルバイトも含めた非正規雇用の割合を公表。2007年は15~19歳が71.8%,20~24歳が43.2%となっていた。ただ,若者の就労実態を正確に把握するためには学生アルバイトを除外した数値が必要だとして,今回の集計を実施した。その結果,正社員としての就職が難しい実態が浮き彫りになった。15~24歳の人口は2007年で1358万人。学生アルバイト,正社員,非正規労働者すべてを含む就業者数は,このうち563万人となっている。
注記)『朝日新聞』2010年12月3日夕刊
http://www.asahi.com/job/news/TKY201012030143.html
内閣府はこれまで,高校生や大学生のアルバイトも含めた非正規雇用の割合を公表。2007年は15~19歳が71.8%,20~24歳が43.2%となっていた。ただ,若者の就労実態を正確に把握するためには学生アルバイトを除外した数値が必要だとして,今回の集計を実施した。その結果,正社員としての就職が難しい実態が浮き彫りになった。15~24歳の人口は2007年で1358万人。学生アルバイト,正社員,非正規労働者すべてを含む就業者数は,このうち563万人となっている。
注記)『朝日新聞』2010年12月3日夕刊
http://www.asahi.com/job/news/TKY201012030143.html
こういう若者の労働実態を踏まえてか,『朝日新聞』2010年12月5日朝刊「社説」は「ジョブカード-仕分けを機に再生の道へ」と主張している。
ジョブカードとは「自分の仕事歴を客観的に評価してもらい,履歴書に蓄積していって再就職に役立てる。企業で働くことで能力を高め,正社員への道を開く」「狙いで,雇用保険を財源に運営されている」ものである。正式スタートは2008年4月。フリーターの若者らを念頭に雇用対策の一環として制度設計された。モデルになったのはイギリスで定着している「NVQ」という能力評価制度だ。日本の雇用システムでは企業内教育が主流なので,正社員にならないと働く能力を向上させる機会がえにくく,評価基準もばらばらだ。
このためジョブカードでは,雇用保険の支援を受けて企業で一定期間の研修を重ね,成果をその企業やコンサルタントが評価し,履歴カードに蓄積する。能力を「見える化」することで,求人企業側とのミスマッチを避け,正社員採用へとつなぐ仕組みだ。これまでに,ハローワークや民間の事業者を通じて約33万人がカードを取得。うち10万人強が訓練を受け,7割以上が再就職にこぎ着けた。政府の成長戦略でも,今後10年間で300万人にカードを普及させる目標だ。編成中の2011年度予算には118億円が要求されている。企業はつぶれても,働き手の能力は失われず,新たな仕事に転じられる。ジョブカードで,そうした労働市場への改革を促したい。
以上の「ジョブカード」に関する議論については,本ブログが「2010.10.10」「■長期間就活の弊害■」でも触れた問題点であるが,「2010.10.8」「■大学生の就活用の就職予備校■」が「経済教室,有賀 健〔京都大学教授〕『新卒採用の偏重解消へ「在職権」制度の導入検討を-適正見極め後,転職も 若年労働市場を流動化』」(『日本経済新聞』2010年10月7日朝刊)を詳細に紹介していた。この論稿の目玉は,日本の雇用制度を少しでも改善するために《在職権》を提言していた。その提案の核心は,日本企業の雇用制度,具体的にはそれを反映する a) 人材養成や昇進のしくみ,b) 新卒中心の採用策の間との親和性にある。あるいは一口でいえば,採用にあたっての人材の「質」の重視,「経験」や「実績」の相対的な軽視を踏まえている。
⑧「大学国際化 中断させるな グローバル30,政府仕分けで「一旦廃止」 留学生獲得 妨げる懸念」
(東京大学副学長 田中明彦)
大学の国際化を促進する文部科学省の「国際化拠点整備事業」(グローバル30)が,行政刷新会議の再仕分けで「一旦廃止し,組み立て直す」と判断された。東京大学の田中明彦副学長は,事業廃止は「平成の鎖国令」ともいえ,大学の国際化を中断させてはならないと訴える。
この2年間で状況はがらりとかわりつつある。日本の有力大学が,重い腰をあげ,授業の英語化によって留学生を呼び込む方向に舵をきりつつある。きっかけは,2009年度に始まった文部科学省のグローバル30だった。国際化にとり組む大学に対し一定の財政支援をするという国の施策に呼応し名乗りを上げた大学のなかから,東北大,筑波大,東京大,慶応義塾大,上智大,明治大,早稲田大,名古屋大,京都大,同志社大,立命館大,大阪大,九州大の13大学が拠点に採択され,英語のみで学位のとれるプログラムを学部と大学院の双方で開設してきた。
すでに,学部12,大学院で73のプログラムが発足し,2013年度までには,学部33,大学院で124のプログラムが発足する予定である。筆者は,東京大学の本構想責任者として学内整備に関与してきたが,学内での国際化の必要性の認識は格段に高まり,いよいよ日本の大学も本格的にグローバル・キャンパスを築き得るという手応えを感じるまでになってきた。 --中略--
その結果,13大学に学ぶ留学生総数は,2008年度の1万6153人から,2009年度末には,2万729人へと4千人以上も増え,グローバル30は,日本の大学の国際化のシンボルであり,日本政府の国際公約ともみなされるようになった。ところが,大変残念なことに,昨年度の行政刷新会議での事業仕分けでは,予算は「縮減」され,本年度も再び事業仕分けにかけられ,その結果は「一旦廃止し,組み立て直す」というものであった。
その仕分けのコメントでは,「大学の国際化,留学生の受け入れは大学教育にきわめて重要」との指摘や「目的の重要性は理解できる」という発言もあったが,コストが高いとか,このままの体制では目的が達成できそうもないとの発言もあった。いうまでもなく,真の意味で大学を国際化していくため,全体の事業を「組み立て直す」ことに反対する理由はない。無駄なコストは削減して当然である。それでも,「一旦廃止」という仕分けの評価は,日本政府の方針について誤ったメッセージとなりかねない。 --中略--
現政権が大学の国際化を停滞させていいと思っているわけはないと思う。留学生を増加させることで世界に友人をつくり,留学生と切磋琢磨させることで日本人学生をグローバル人材に転換させる。このような大学国際化の必要性が否定されることはないと信じている。しかし,もし政府部内の検討の結果,グローバル30事業が本当に「廃止」ないし「中断」あるいは予算の大幅削減などということになれば,それは大学国際化の否定であり,「平成の鎖国令」であると判断せざるをえない。こんな懸念は,杞憂に終わってほしい。
注記)『日本経済新聞』2010年12月7日朝刊。
出所)図表は『日本経済新聞』2010年11月28日朝刊。
東京大学副学長のこのような意見陳述をとおしてうかがえるのは,日本政府の文教政策,高等教育に対する基本理念や政策的な運営と,大学側当事者の危機感とのあいだには,その時代認識において大きなズレがあることである。ここまで論じてきたような「日本の大学・大学院の実情」をかこむ深刻な問題は,現在の執権党である民主党幹部たちにおいては,まだその概略さえ理解されていない。
ところが,大学側も大学である。今日〔12月7日〕『朝日新聞』朝刊「教育」欄には「大学の実態 ガラス張り-入学者数・就職者数・授業計画・・-」という見出しの特集記事が出ている。この記事は,大学の情報公開をとりあげているが,「大学の実態があきらかになれば,大学の格差が広がる」との指摘もあり,開示の方法や範囲に頭を悩ませる大学も多いと,冒頭で説明している。
昨今の大学は,自学の宣伝に相当の予算を組んで実行しているものの,大学に都合の悪い要因は隠したまま,厚化粧に仕上げた広告がまかり通ってもいる。実態を明らかにしないで,なにを明らかにするというのか? 水商売の玄関・入り口みたいなけばけばしい表情=虚飾ばかり高校生にみせつけて,それで「大学という〈本当の商売?〉=事業の目的」にかなっている,といえるのか?
Comments: (2)
2010.12.6 23:40:03 | HAL909 : 勉強になりました。ブログにて紹介させていただきました。 |
2010.12.12 16:09:52 | やまだ : 極論をいうと就活をするということは 私に毎月お金を払ってください と会社に申し込むことだとおもいます。当然払う側はきびしく選考するし、若い方がいいし、仕事できそうな子がいいのです。例は悪いのですが、極論をいうとあの市橋容疑者ですらしらない土地で住み込み・常勤で仕事をしていました。保証人なし、自動車免許なし、偽名の犯罪逃亡人ですら、死に物狂いの人間ならちゃんと職にありつけて食っていけるという証明です。40代以下なら仕事はあります。40代以下は仕事のえり好みなどせず、とにかく働くことが大事です。新聞配達、パチンコ従業員、農林水産業など慢性人不足の業界で、知らない土地で心機一転働くつもりなら実は働けます。40代以下で派遣村に行くような人は「自分らしくいられ、今のライフスタイルを維持でき、やりたい仕事でかつ正社員にしろ」と要求するので結果的に就職できないのです。 |
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