広島市が招致を検討している20年夏季五輪(ヒロシマ五輪)。招致活動と開催によって、ヒロシマには何がもたらされるのか。平和五輪の開催理念▽競技施設のあり方▽財政問題--について、各界の人に意見を聞いた。【寺岡俊】
核兵器は国防という政治問題。スポーツの祭典である五輪と一緒になれるはずがない。五輪も核廃絶も平和のためという。それだけ聞いたら理念は合致するが、根本的には相いれないものだ。五輪の新しいモデルを提案するというが、そもそも広島がする必要があるのか。
私が最も危惧するのは、広島が「世界で最初に原子爆弾が落とされた地」から、「五輪が開かれた地」に変わってしまうことだ。五輪の観戦者はスポーツを見に来る。プレーを見た感激が大きすぎて、「被爆地」という意識を忘れてしまう。ヒロシマが五輪にのみ込まれるのでは。そう思うと、黙っていられなかった。「広島オリンピックはいらない市民ネット」の設立に携わったのも、そういう懸念があるからだ。
ヒロシマの意味が変わってしまえば、秋葉忠利市長が政治生命をかけてきた平和や核廃絶運動の努力が、報われなくなってしまうのではないか。市長自ら手を下ろしてほしい。
外から見たヒロシマは、「かわいそう」「つらい」といったネガティブなイメージが強い。広島に住んでいるとそうは思わないし、私は広島が大好きだ。ヒロシマ五輪を開催することで、そのイメージをポジティブなものに変えたい。
私の両親も被爆した。母方の祖父母は被爆して亡くなった。母もヒロシマのイメージを変えたいと思い、「五輪が開催されれば、81歳になるが何か手伝いたい」と言っている。同じような思いを持つ大学生たちを中心に、今年2月から五輪招致を求める署名活動をしている。これまでに60万人を超える署名が集まった。
基本計画案は1000億円もの寄付に頼るなど、他力本願で不確定要素もある。署名活動を通じて、五輪開催に反対する人は財政面を心配していることを感じている。その不安材料を解消する努力を市はしてほしい。五輪をきっかけに、広島を訪れた人が平和の大切さを確信するような場所になってほしい。
毎日新聞 2010年12月9日 地方版