中国地方の地場銀行が広域の営業展開を強めている。山口フィナンシャルグループ(山口FG、下関市)は北九州市で新銀行設立を目指し、中国銀行(岡山市北区)は兵庫県で新店舗を計画する。一方、広島銀行(広島市中区)は地盤を固める。景気低迷で資金需要が伸び悩む中、競争が従来のエリアを超えて激化している。
来年10月に北九州市に「北九州銀行(仮称)」を開業する山口FG。目指すのは山口銀行(下関市)、もみじ銀行(広島市中区)と合わせた3行体制による地域別のブランド展開だ。広島、山口、北九州でそれぞれ地元密着の銀行を掲げ、個人や企業向けの貸し出しの強化を狙う。
北九州銀は山口銀の九州の23店を引き継ぐ。3年間で10店程度を新設し、人員も100人程度増やす方針。「北九州の地元化を加速度的に深化させ、初年度から黒字を目指す」という。
広島県では山口銀の店舗の一部統合を検討する。山口銀の店舗を同県で広げた時期もあったが、小口向けはもみじ銀を前面に出す。福田浩一社長は「各地域で3行の個性を発揮したい」と強調する。
中国銀は、岡山を挟む「両翼」の広島、兵庫県で取引先の開拓に力を入れる。来年6月、兵庫県明石市に明石支店を開く。同県には既に4支店あるが「法人を中心に顧客開拓の余地がある」とみる。今年4月には広島市に住宅ローンセンターを開き、個人向け営業を強めている。
各行が広域展開を強めるのは、少子高齢化などで地元経済の規模縮小が見込まれるためだ。資金需要は低迷しており、中国地方の地場9行の今年3月末の貸出金残高は前年同期比で0・4%増にとどまる。
山陰合同銀行(松江市)は、山陰地方と山陽、関西地方の企業のビジネスマッチングに力を入れる。手数料収入の確保と合わせ、消費規模の大きい都市圏の資金を山陰へ循環させる狙いだ。7月には広島銀などと共に財団法人日本宇宙フォーラムと連携協力協定を結ぶなど、広域のネットワークも築いている。
一方、広島銀は「地盤固め」に注力する。中心となる広島県での競争激化を見通すためだ。4月には渉外担当者を同行全体で約100人増やし約500人とした。うち約420人はエリア担当として特定地域を重点的に回る。
角広勲頭取は「見逃していた取引先に目を向け、リテール(小口取引)開拓を進める」と強調する。エリア担当制は地元と位置付ける山口、岡山、愛媛県にも広げており、各地でシェア向上を図る。
また11月に近畿大阪銀行(大阪市)などと合同の商談会を大阪市で開くなど、他行との連携も図っている。
中国地方では今月6日、福岡銀行(福岡市)が宇部支店(宇部市)を復活させており、エリアを超えた競争は一段と激しくなりそうだ。
【写真説明】北九州銀行の本店となる予定の山口銀行北九州支店(北九州市)
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