[PR]
ニュース:文化 RSS feed
漢字2字タイトル乱立 想像膨らむ ネット社会に合致 (1/2ページ)
このニュースのトピックス:文学・書籍
漢字2字だけの簡潔な題名の小説が、書店店頭で存在感を増している。数百万部のベストセラーとなり、映画もヒットした小説の『悪人』や『告白』…。文学賞受賞作の題名を縮めたり、“2字人気”にあやかった雑誌も。読者層を限定せず、物語への想像をかきたてやすいのが利点だが、乱立の背景には、不況に悩む出版業界のお家事情も透けてみえる。(海老沢類)
公募ミステリー賞の最高峰とされる江戸川乱歩賞の今年の受賞作、横関大(よこぜき・だい)さんの『再会』(講談社)は、刊行にあたり、題名を応募時の「再会のタイムカプセル」から漢字2字に変えた。8月発売で2刷5万部と、デビュー作としては順調な滑り出しだ。
23年前と現在の事件が複雑に絡み合うミステリー。タイムカプセルは読者の郷愁を誘う重要な仕掛けだが、題名からは思い切って外した。担当編集者は「余分な情報がないから読者を限定せず、想像力を刺激してくれる。改題は選考委員と著者の一致した判断」と説明する。
同名の映画化作品がカナダ・モントリオール世界映画祭で最優秀女優賞を受賞した吉田修一さんの『悪人(上下巻)』(朝日新聞出版)は、文庫だけで210万部を突破。同様に映画化された湊かなえさんの『告白』(双葉社)も文庫が同じく210万部以上を刷る異例のヒットを飛ばしている。
創刊から1年が過ぎた小学館の「ストーリー・ボックス」は、月替わりの漢字2字タイトルを表紙に大書する異色の小説誌だ。医療小説が巻頭を飾った創刊号は「誤飲」で、サスペンス小説を載せた第7号は「異境」。孤独というテーマに切り込んだ10月発売号では「無縁社会」を意識した「無縁」を掲げている。