池田信夫 blog

Part 2

けさの朝日新聞で紹介されている東大の「日本人の情報行動」調査によると、10代の若者のインターネット利用率が減って、ケータイが主なメディアになっている。他方でテレビはあまり減っておらず、固定インターネットが「負け組」だ。FTTHが普及しないのは、料金が高いからではない。

これを「若者のネット・リテラシーが落ちている」とか「ガラパゴス化」などと嘆くのは間違っている。若者はケータイでウェブにアクセスしており、テレビからインターネットへという流れは変わらない。問題はさらに「固定インターネットから無線インターネットへ」という変化が起きていることだ。20代でも固定インターネットの利用率が横ばいになっているように、この流れは一時的なものではない。

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東京都の青少年健全育成条例の改正案が、来週の都議会で可決される情勢になってきた。この問題についての石原都知事の発言は、あまりにもナンセンスで論じる価値もない。かつて「太陽族」などの新風俗の元祖となり、「価値の紊乱者」を自称していた石原氏が、エロ漫画の撲滅に熱中する姿は哀れをもよおす。

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アゴラブックスはアゴラi文庫から2作品、アゴラ学術書籍から1作品の計3作品を電子書籍としてリリースいたしました。

『世代間格差ってなんだ』 城繁幸/小黒一正/高橋亮平著
『7割は課長にさえなれません』 城繁幸著
『好意・善意のディスコミュニケーション』 尾見康博著

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2010年12月10日 00:37
経済

日本の法人税率は高いか

法人税率の引き下げをめぐる論争が大詰めを迎えた。財務省は租税特別措置の削減を交換条件にしようとしているが、日本経団連は強く抵抗している。他方、赤旗は「日本の法人税率は高くない」と、次のような調査結果を示している。どれが正しいのだろうか?


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2010年12月08日 22:12
IT

MacroWikinomics

Macrowikinomics: Rebooting Business and the Worldウィキノミクスの続編。前著では企業レベルのイノベーションを紹介していたが、本書では経済全体の変化を扱う、と書いてあるが、中身は続編という感じだ。ウェブを通じたコラボレーションが新たな価値を生む例をいろいろあげたもので、「ネットベンチャー・カタログ」としては便利だが、それ以上深いことが書いてあるわけではない。サポート用ウェブサイトもある。

企業やNPOやメディアをソーシャルメディアに組み込むことでアクセスが増え、その活動の質も上がるというのは確かだが、問題は本書の最後に書いてあるように、それがビジネスとして成り立つのかということだ。残念ながら、本書にも確たる見通しはない。明らかなのは既存メディアが没落することだけで、ソーシャルメディアが既存メディアを上回る産業規模になることは考えにくい。

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2010年12月07日 08:30
経済

専業主婦という浪費

毎年、税制改正のたびにもめている所得税の配偶者控除の縮小が、また見送りになるようだ。これは年収103万円以下の配偶者のいる世帯主の所得を控除する専業主婦優遇策であり、労働人口が急速に減少する日本で、貴重な労働力である女性の就労をさまたげる逆インセンティブになっている。

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麻生元首相が「今こそ公共事業を」とぶち上げたそうだ。神戸新聞によれば、「マスコミが世論を誘導し、公共工事は悪というイメージを作り上げた。今こそ公共事業をどんどんやるべきだ。金を借りているのは国民ではなく国。満期になったら、政府の権限で金を刷って返せばいい。企業と国の借金は性質が違う」という。

これが「国債の価格と金利は絶対に反比例する」という上念某や「インフレになったら労働者の給料は上がって若者が就職できる」という三橋某の話なら笑い話ですむが、元首相が公然と財政インフレを主張するのは困ったものだ。

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今週のJBpressの記事に、専門家からコメントをいただいたので、細かい話だが少し補足しておく。
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図はワイルの教科書のウェブサイトから借りたものだが、日本の高度成長が「戦前からのトレンドを延長したものに近い」というのは単純化しすぎだった。よく見ると、破線を引いたように戦前からのトレンドには1960年ごろに追いついており、そこからさらに成長して英米なみの成長率になって落ち着いている。これは新古典派成長理論でいう定常状態(steady state)に近い。資本/労働比率が一定になり、生産性上昇率≒成長率になっている。成長率が高かったのは、戦争でGDPが半減したためだ。

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このごろ新聞は失言や野次など政治家の下らない話ばかりで、週刊誌やワイドショーは海老蔵たたき一色だ。私は歌舞伎はまったく知らないが、海老蔵が批判されなければならないのは顔見世興行に穴をあけたことだけで、傷害事件については彼が被害者なのに、まるで加害者のようなバッシングは尋常ではない。

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山崎正弘:「エンジン(内燃機関)の時代は終焉を迎えたのか?」

今回の起業塾では、ル・マン24時間レースに参戦したスポーツカーにエンジンを供給する山形発技術ベンチャー、株式会社ワイ・ジー・ケーの創業者 山崎正弘氏をゲストにお迎えします。

環境負荷低減の意識が高まる中、自動車産業の分野ではハイブリッドから電気自動車への動力の転換が急速に進んでいます。ワイ・ジー・ケー社では、レーシングカーに搭載された実績をもつ高性能ながら静音性にも優れたオリジナルガソリンエンジンを開発してきた歴史に加えて、ガソリンエンジン時代の黄昏といわれるこの流れの中、従来よりも環境への負荷を抑えた新しいエンジン技術を日本のベンチャーとして独自に開発されました。2008年からは大手ガス機器会社の家庭用発電機(マイクロコジェネ用効率エンジン)にも採用され、スマートグリッド分野への貢献が期待されています。

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2010年12月01日 23:18
メディア

旧メディアは死なない

きのうのBLOGOSシンポジウムで田原総一朗さんもいっていたが、日本のメディアをめぐる状況で驚くべきなのは旧メディアが没落することではなく、それが意外に没落しないことだ。



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当ブログでは2年以上前から取り上げてきた700MHz帯が、国際周波数に合わせて再編されることが決まったようだ。いったん「ガラパゴス周波数」で決まった方針をくつがえしたのは、孫正義氏を先頭とするツイッターの力である。また周波数オークションも初めて導入される方針で、私が10年以上言い続けてきたことがようやく実現したのは喜ばしい。

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2010年11月28日 11:16
科学/文化

衰退先進国イタリア

きのうの記事に、ツイッターで「イタリアに似てきた」というコメントがついたので、おもしろ半分にChikirinの日記の記事を紹介したら、大反響だった。たしかに
  • (政治)ぐちゃぐちゃ。こんな奴が首相でいいのか?と言いたくなるレベル
  • (首都)世界の人が憧れる大都市。ユニークに熟れた都市文化が存在
  • (教育)この国の教育レベルが高い、などという人は世界にいない
  • (食事)世界トップレベルの美味しさ。 世界中でブームが定着
といった特徴は、日本とよく似ている。しかし最大の違いは、イタリア人はそういう現状に満足しているのに、日本人は悲観しているという点だ。自殺率を比較すると、日本は10万人あたり24.4人で主要国でトップなのに比べて、イタリアは6.3人で最低。これはカトリックなので自殺の禁忌が強く、自殺を事故として申告するバイアスもあるが、なんといってもベルルスコーニ首相に代表される脳天気な国民性が大きい。

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2010年11月27日 09:29
経済
IT

退却戦の戦い方

きのうNHKの「ニュースウォッチ9」で、ルワンダがITインフラを整備しているという話が出ていた。こういうのは途上国にはよくある話で、日本で明治維新のころに官営工場をつくったのと同じだ。それを孫正義氏がほめていたので、私がツイッターで、「日本は途上国じゃない」とコメントしたら、山のようなRTがついた。

孫氏が自分を坂本龍馬と重ね合わせて「富国強兵」をめざす気持ちはわからなくもないが、日本はルワンダとは逆の衰退国なのだ。図は先週のEconomist誌のものだが、日本の生産年齢人口は1995年の8700万人をピークにして毎年0.5%ずつ減っている。これは資本蓄積をほぼ相殺するので、今後の日本の潜在成長率は生産性上昇率とほぼ等しくなるが、その労働生産性上昇率が主要国で最低だから、今後はゼロ成長に近い状態が続くだろう。

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人口減少時代の大都市経済 ―価値転換への選択戦後日本の高度成長は「奇蹟」ともいわれるほどめざましいものだったが、いま起こっているのは、その逆に世界でも例をみない逆高度成長である。高度成長の要因を産業政策や「日本型企業システム」などに求める議論もあったが、実証研究の結果はもっと平凡なものだ。それは人口の急増によって低賃金の若年労働者が増え、彼らが農村から都市に大量に移動したという要因でほとんど説明できる。

そして今、この高度成長を支えた人口動態が逆回転し始めている。高齢者が急増し、若年労働者が減るのだ。その結果として本書が予想するのは、意外な現象だ。すなわち、都市の急速な高齢化が起こるのである。東京圏では2035年までに65歳以上の人口は75.7%も増え、人口の32.2%を占めるという。これは現在の島根県より高齢化率が高い。

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けさの朝日新聞の朝刊に、竹信三恵子編集委員の「『派遣社員は派遣禁止に反対』なのか」という記事が出ている。さすが朝日新聞、独自の調査をして派遣社員は派遣禁止に賛成しているという結果が出たのか、と思って読むと、出てくるのは「派遣ユニオン書記長」なる人物が、東大の社会科学研究所の調査の調査方法に個人的に文句をつけているだけで、何のデータも示されていない。

ところが竹信記者は明らかにこの書記長の立場に立って、調査を行なった東大の佐藤博樹氏に質問している:
(竹信)今回の改正案は不安定な登録型派遣を禁止し安定的な常用型派遣へ誘導する狙いといわれます。調査で「派遣の禁止」への賛否を聞いたのは、全面禁止との誤解を誘導したとの反発もあります。
(佐藤)改正案は製造業派遣の原則禁止。禁止について聞くことで問題はない。
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2010年11月23日 22:31
法/政治

心情倫理と責任倫理

職業としての政治 (岩波文庫)北朝鮮が韓国を砲撃した。今のところ局地戦にとどまるようだが、政権移行にともなう不安定な状況は予断を許さない。まさに国家が暴力装置に他ならないことを示す事件である。思い出して、学生時代以来ひさしぶりにウェーバーを読み返してみた。問題の記述は、岩波文庫版では次のようになっている:
国家とは、ある一定の領域の内部で正当な物理的暴力行使の独占を(実効的に)要求する人間共同体である。国家以外のすべての団体や個人に対しては、国家の側で許容した範囲でしか物理的暴力行使の権利が認められない[・・・](p.9 強調は原文)
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2010年11月22日 19:50
法/政治

暴力と社会秩序

Violence and Social Orders: A Conceptual Framework for Interpreting Recorded Human History柳田法相が辞任したと思ったら、今度は仙谷官房長官の「暴力装置」発言で、自民党は辞任を要求するそうだ。それなら「破綻国家においてどうしてテロは起こるのかというと、警察と軍隊という暴力装置を独占していないのであんなことが起こるのだ」と述べた石破政調会長も更迭しなければならないだろう。

もちろん正しいのは、石破氏である。国家が暴力を合法的に独占できないと、テロやヤクザやマフィアのような私的暴力が発生する。本書は、こうした暴力の管理を社会秩序のコアにあるメカニズムだと考え、新しい社会科学のモデルを構築しようとするものだ。

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クルーグマンがブログで、珍しくバーナンキの講演を高く評価している。
Monetary policy is working in support of both economic recovery and price stability, but there are limits to what can be achieved by the central bank alone. [...] a fiscal program that combines near-term measures to enhance growth with strong, confidence-inducing steps to reduce longer-term structural deficits would be an important complement to the policies of the Federal Reserve.
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2010年11月20日 00:41
経済

日本症候群


きのうのニコニコ生放送でも紹介したが、今週のEconomist誌の特集は、日本経済。その表紙が、日本の直面している問題を実に鮮やかに表現している。

日本は歴史上に例のない高度成長を遂げたあと、これから史上空前のスピードで高齢化し、労働人口は急速に減少する。それが「デフレ」といわれる状況の根本原因であり、その負担を若者だけに背負わせることが、世代間格差と経済の停滞を生んでいる。内容は当ブログで述べてきたことと重複しているが、問題をこのように的確に分析するのが、先日のNYタイムズやEconomistのような海外メディアだけというのが情けないところだ。

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